『ニッサンNP35』F1参戦も視野に。 ニッサンが生んだ悲運の新規定Cカー【忘れがたき銘車たち】

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2022年09月28日 09:51  AUTOSPORT web

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1992年、MINEサーキットで行われた全日本スポーツプロトタイプカー選手権最終戦を戦った『ニッサンNP35』。鈴木利男とジェフ・クロスノフがステアリングを握った。
モータースポーツの「歴史」に焦点を当てる老舗レース雑誌『Racing on』と、モータースポーツの「今」を切り取るオートスポーツwebがコラボしてお届けするweb版『Racing on』では、記憶に残る数々の名レーシングカー、ドライバーなどを紹介していきます。今回のテーマは、『ニッサンNP35』です。

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 今からちょうど40年前となる1982年。この年、後に一時代を築いたプロトタイプカーのカテゴリーであるグループCがスタートした。

 このグループCは1982年から1990年代前半まで続いたカテゴリーだが、そのなかでも大きくふたつの時代にわけることができる。

 まず、1982年から1990年頃まで続いた“旧規定”とも呼ばれる第1期。この時代は使用できる燃料の総量がレースによって定められていたものの、その他の車両の基本的な寸法を除いては自由な部分が多く、ターボや大排気量のNAなどバリエーション豊富なグループCカーたちが多数出走した隆盛の時代であった。

 それに対して1991年より本格的にスタートしたのが第2期の新規定時代。この時代はグループCの魅力のひとつであった燃料総量規制を撤廃し、エンジンもF1との共通化を計る狙いで、3.5リッターNAエンジンのみとした。

 このこともあって、1991年の新規定初年度こそ世界選手権にはジャガー、メルセデス、プジョーが参戦したものの、1年限りでジャガーとメルセデスは撤退する。グループC自体も一気に衰退の一途を辿ることになってしまうのだった。

 そんな新規定時代には、旧規定時代よりグループCに力を入れていた日本の自動車メーカーであるトヨタ、ニッサン、マツダも新グループC向けの車両を開発し、実戦へと投入していった。

 その日本車のなかで、もっとも後発に登場し、レースに投入されたのがニッサンの新規定対応グループCカー、『ニッサンNP35』であった。

 この『NP35』は、R90CPシリーズに搭載された3.5リッターV8ターボエンジンの名機、VRH35Zの生みの親である林義正が、新規定向けのエンジンのみならずシャシーコンストラクターの選定などにも携わり開発は進められていった。

 まず要となる3.5リッターのNAエンジンはさまざまなシミュレーションの結果、やはり12気筒でなくてはいけないという林の考えからV型12気筒とすることに決定。このエンジンはV(V型)、R(Race)、T(Twelve)の頭文字からVRT35と名付けられた。

 そのエンジンを搭載するシャシーについては将来のF1参戦も視野に入れ、林がF1へと共に参戦できるコンストラクターをという思惑から渡英し選定。一時はウイリアムズとのタッグを組む案もあったが、資金繰りなどの社内事情もあって、結局アメリカのNPTI(ニッサン・パフォーマンス・テクノロジー)へと依頼することになった。

 このNPTIが作り出した車両はP35と名付けられて、アメリカでのテストをスタートしたが、シャシーがアルミとカーボンを組み合わせて作られていたことなど不満点も多かった。

 そこで日本ではP35の図面をもとにモノコックをフルカーボンとし、ホイールベースを大幅に短縮したモデルを開発した。それが『NP35』だったのだ。

 こうして生み出された『NP35』が実戦デビューを果たしたのは1992年の全日本スポーツプロトタイプカー選手権(JSPC)の最終戦、MINEサーキットラウンドでのことだった。

 この一戦は結果的に全日本選手権としては最後のグループCカーによるレースとなったラウンド。1990年末より開発がスタートし、ようやく実戦デビューを果たした『NP35』だったが、すでに悲しき道を辿ることが決まってしまっていたのである。

 『NP35』は、このレースを最下位ながら完走。それでも林に「もう少し手を加えれば勝てる」と思わせる仕上がりを見せていた。しかし、『NP35』はこれ以上実戦を戦うことなく、表舞台から姿を消してしまうことになる。

 それでも搭載されるVRT35をF1へという夢を諦めず、技術者たちはエンジンを育て続け、1993年には『NP35』を使ってテストもしているが、それも叶うことはなかった。『NP35』とVRT35の夢と希望は、ここで絶たれてしまうのだった。

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