地球を味わうワクワクを一緒に分かち合いましょう! ―昆虫食・ジビエレストラン「アントシカダ」篠原祐太代表に聞く

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2022年09月28日 12:20  OVO [オーヴォ]

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コオロギラーメン

 東京都中央区日本橋馬喰町のとあるビル。小さな看板が出ていて、その前の扉を開けると、こぢんまりとしているが、落ち着いた雰囲気の隠れ家的スペースが現れる。そこが、知る人ぞ知る昆虫食・ジビエレストラン「アントシカダ」だ。

 2020年6月にオープンした「アントシカダ」。代表を務めているのは篠原祐太(しのはら・ゆうた)さん。もう一つの肩書きは「地球少年」。28才。若いといっても昆虫歴は長い。

 昆虫食歴は23〜24年になる。「原っぱにいるバッタとかを捕ったり、食べたりするのが楽しかった。本格的狩猟本能でしょうか。おいしいもの食べるだけなら、スーパーに並んでいる」と篠原さんはいう。篠原さんは東京でも自然豊かな高尾山の近くで育った。

 そんな昆虫好きな篠原さんだが、それを人には言えなかったという。それが変わるきっかけは、2013年に国連食糧農業機関(FAO)が発表した報告書「食用昆虫類:未来の食糧と飼料への展望」だった。育てるのに必要なエサや水が少なくて済み、温室効果ガスの排出も少なく、栄養にも富む昆虫を将来有望な食材として推奨する内容だった。

 「FAOのレポートがきっかけで、昆虫食が好きだとカミングアウトできた。人生で初めて人に好きなことをさらけ出せた。一番うれしい瞬間だったし、人生で一番大きなターニングポイント。(国連がそう言ってくれたことで)初めて仲間を得た」と篠原さん。

 だが、篠原さんは昆虫食をPRするときにSDGs(持続可能な開発目標)的なアプローチは取らないという。「それ(SDGs)を大義名分にするとズレが生じる。昆虫食に興味を持つ中で(SDGsを)意識する方が長続きするのではないか。まずは、目の前の生きものを体感することが第一歩として大切だと思います」と語る。

 篠原さんは大学を卒業するタイミングで、本腰を入れてやっていこうと決意したという。そして色々なジャンルの人たちとコラボしてきたという。例えば、看板商品ともいえる「コオロギラーメン」は「ラーメン凪」との共作である。

 昆虫食というとまだまだ偏見があり、「ゲテモノ」扱いする見方もあるのは事実だ。「ハードルはそれなり以上に高い」と篠原さんも認める。「地道な広がりが大切だと思う。口コミで広がるものを届けたい。そしてポジティブな反応を感じた時に、今までのイメージとのギャップに心動かされるー大切にしているテーマです」。

 篠原さんは「一般の人たちに興味を持ってもらうには、面白くて、おいしい、そうでないとゲテモノ扱いされてしまう」という。ただ、昔は41の都道府県で55種類の虫が食べられてきたという記録があると篠原さん。「自然が豊かで、それだけ虫が身近にいるということ」で、そういう国民性を考えるとやりやすい面もあるのでは、という。

 「アントシカダ」では多くの昆虫食、ジビエ料理を味わえる。まずは「コオロギラーメン」。出汁(だし)を、穀物で育てた穏やかな煮干しのような味のフタホシコオロギと魚粉で育てたパンチのあるスルメのような味わいのヨーロッパコオロギの2種類からとり、味付けはコオロギと米こうじと塩を発酵させて作るコオロギしょうゆ。麺にもコオロギが練り込まれている。コオロギはビールやスナックなどにも使われ、汎用性に富む。

 タガメも興味深い食材。オスがメスを誘う時に出すフェロモンが洋梨のようなフルーティな香りで、それを活かしたジントニックやハイボールが味わえる。タイなどでもタガメは食されるが、香りが高いオスは値段が高く、メスはその形を活かした炒め物など「見た目勝負」の観光客用料理に使われている、というようなうんちくも篠原さんから聞ける。

 蚕を使った「蚕沙(さんしゃ)どぶろく」、「蚕沙茶」といったメニューもある。古くは漢方薬とされてきた蚕のふんを使っている。要するに蚕が食べた桑の葉の未消化物である。

 最初はギョッとしてしまうかもしれないアルコールには、ゴキブリの卵を使い、大学とのコラボで出来た「ゴキブリ卵鞘(らんしょう)酒」や、桜につく毛虫のふん、桜の樹脂を使った桜の香りの苦めのリキュール「桜毛虫アマーロトニック」もある。

 また、アカマツ、ヒノキ、カラマツといった木を蒸留して作るフォレストソーダ(木のソーダ)も美味だ。一切香料を使っていないが、爽やかな森の香りが漂う「飲む森林飲料」。

 こういった昆虫食、飲料が、「アントシカダ」のカウンターの中にいる篠原さんをはじめとするスタッフの愛情たっぷりの解説とともに味わえるのだ。時には原材料の虫なども登場、スマホ端末を使って写真を見せながらの説明なども。

 篠原さんはいう「虫に焦点を当てていますが、それだけがすべてではありません」。実際のところ、イノシシ肉などのジビエ料理、コイといった、昔ながらの食材ながら最近はあまり口にすることが少なくなったものなども提供されている。

 「アントシカダ」という店名は、「アリ(ant)」と「セミ(cicada)」を合体させたもので、篠原さんのアイデア。「地球の生きものの豊かなこと。虫は虫、イノシシはイノシシ。それぞれに良さがある。それをリスペクトする。地球料理なのです」。

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