安倍さんには苦しめられた 岸田政権が強行した「民主主義を守るための国葬」にモヤモヤ

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2022年09月28日 16:00  AERA dot.

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安倍晋三元首相の国葬で追悼の辞を述べる岸田文雄首相
作家・北原みのりさんの連載「おんなの話はありがたい」。今回は、安倍元首相の国葬ついて。


【写真】北原みのりさんはこちら。
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 国葬、強行されましたね。


 菅元首相のエモーショナルな演説、安倍さんの「おちゃめ」な感じを演出するピアノ演奏姿とか、内輪の葬式にしか見えなかった。安倍さんて、そんなに愛されていた人でしたか?


 自然災害に苦しみ、不況にあえぎ、コロナ禍が癒えない今、16億6千万円という税金を使った葬儀が、本当に必要な儀式だったのか。反対の声は大きく、支持率も下がっているにもかかわらずの国葬強行は、岸田さんって声を聞く気がそもそもないんだね、とハッキリ教えてもらったようなものだ。


 国葬の日、中継用ヘリコプターが飛ぶ東京の空を見上げしみじみ心に浮かんだことは、ただ一つ。


 安倍さんには苦しめられた。


 心から、改めて国葬の日にそう感じている。安倍さんは性教育を後退させた。嫌韓感情を扇動した。「慰安婦」問題への無関心と無知を公然にし、被害者を幾度も絶望に追いやった。ジェンダー平等政策を骨抜きにした。貧富の差を激しくし、持つ者だけがより持てる社会になった。汚染水はコントロールされているとして五輪を誘致した。森友・加計、桜を見る会など、権力と金を巡る問題を起こしたにもかかわらず責任は一切取らず、自死者まで出した。沖縄を見捨て、辺野古埋め立てを強行した。そして山上容疑者のように、被害者が無数にいると指摘されていたにもかかわらず、旧統一教会にお墨付きを与え続けてきた。国葬で流れた動画では、安倍さんが「(過去の戦争に関係のない未来の日本人に)謝罪を続ける宿命を背負わせてはなりません」と言っている姿が「良きこと」のように描かれていたが、安倍さん自身が過去の加害を謝らず、歴史を忘却し修正することを臆面もなくしてきた。そしてそんな安倍さんに対し、メディアは萎縮し続けてきた。


 ここひと月、国葬にモヤモヤしていればいるだけ、ふだん目に入らぬ葬儀や葬儀用の保険のCMが気になってきた。超高齢化社会において葬儀は巨大産業でもあるが、今の時代、できるだけ迷惑をかけず、できるだけ自己責任で……というのが主流だ。




「おれのお葬式は小さいのでいいよ。おまえたちに面倒をかけたくないからさ」


 天国からお父さんが優しくささやく葬儀CMなど、家族の悲しみが静かに伝わる良い作品で、うるっときてしまいそうだ。「おれんちのボスの葬式は国一番でやらせてもらう。国民には迷惑をかけるけどな」という岸田さんの独断にのまれる日本社会に生きていると、葬儀CMで泣いてしまうほど、心がもろくなってしまうのかもしれない。


 コロナ禍を意識した葬儀CMも少なくない。「大勢で集まることがためらわれる世の中、家族葬が安心という方が増えています」……そんな、なんてことのない淡々とした葬儀場のCMにも胸がいちいちざわつく。この3年、私も大切な友人や知人を数人亡くしたが、最後のお別れは諦めなければならなかった。そういうときを、この国を生きている人は過ごしてきたのだ。だいたい岸田政権になってから、この国は世界で一番新規感染者数の多いとされる国になり、死者も急増した。初めてのコロナ死者が出た2020年2月13日から22年9月1日までの死者数を見ると明らかだが、安倍さん時代(約7カ月)1467人、菅さん時代(約1年)1万6268人、岸田さんになってから(約1年)既に2万2513人が亡くなった。家族葬で十分、せめて自民党の葬儀でよかったのではないか。


 葬儀CMを見ていると、庶民が葬儀にかける費用は100万〜200万円だということがわかる。それだって大出費である。いざというときのために、周りに迷惑をかけないように、自分の葬儀を自分で出すための死亡保険というものも販売されている。


「54歳の私の年だったら、月々490円なんです。いざというとき、家族に迷惑をかけたくないので自分のお葬式代くらいはしっかり用意したほうがいいかなと思っているんです。加入してなんだかとっても安心しちゃいました」


 私と同世代の女性が死後の迷惑まで考えて備えるようなCMを見ると、モヤモヤはもう最高潮に達してしまう。は? 国葬? 自分の葬式代くらい自分で出せば? 死んでまでなぜ16億円もの税金を使うの? 毎月490円のお金を積み立て、自分の葬儀の準備をするようなリアルワールドとのあまりの違いに、衝撃を受ける。



 そんなふうに、国葬に心をかき乱されたひと月、葬儀のCMですら穏やかに見られない状況だ。親しい友人の葬儀にも参加できず、自分の葬儀の心配をしながら積み立てをし、なるべくお金のかからない葬儀に奔走するこの国の生活者の感覚のわからない人たちが、自分たちの威信のためだけに、税金を無駄遣いしている。この国葬を、岸田さんは「民主主義を守るための国葬」と言ったが、閣議決定で何でも決められる政治に、もう民主主義を語る資格はないのではないか。税金がこれほど不平等に使われる今、民主主義を盾にするような大義名分そのものがうそ臭い。


 安倍さんの遺骨は、国葬によって、16億6千万円もかけて恭しく奉られ、最大限の敬意とともに鎮魂される。一方、安倍さんが虐げ続けた沖縄では、沖縄戦で亡くなった人の遺骨が混じった土砂が辺野古の埋め立てに使われる懸念が今も残っている。この国葬が葬るのは、私たちの痛みなのか、それとも岸田政権の未来なのか。私たちの民主主義が問われるのだと思う。


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  • 極左暴力集団や共産主義者からすれば無駄事を言いたいのでしょうが、貴様等の品性下劣さと危険性は明らかになりましたから何を言っても無意味です。何せ反社仲間ですから。
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