専業主婦の年金を増やすワザ 60代の10年で「月約17万円」をめざせ

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2022年09月29日 11:30  AERA dot.

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※写真はイメージです (GettyImages)
老後資金の頼みの綱はやっぱり年金。今の年金世代に多い専業主婦は、その年金が少額のことが多いが、実は制度をうまく利用すれば60代の10年だけで年金額を相当増やせる。しかも、それは将来の「おひとりさま対策」にもつながる。一石二鳥の年金増額策とは──。


【図表】専業主婦の年金を60代で増やすワザ、4ステップはこちら
*  *  *


 都内に住む専業主婦のAさんは、60歳になるとすぐ地元の年金事務所に行った。


「私の年金は70万円弱しかありません。何でも若いころに未加入の期間があるからとのことですが、夫に聞くとそれが今からでも挽回できるというのです」


 Aさんが利用するのは、国民年金の「任意加入」という制度。保険料を支払う必要はあるが、加入すると将来の年金は確実に増える。


 Aさんがしみじみ言う。


「毎年来る『ねんきん定期便』を見ては『少ないなあ』と思っていたんです。少しは良くなるみたいですが、いったい、どこまで増えるのか……。世の中、本当に知らないことが多い」


 Aさんの言うとおり、世の中は知らないことだらけだ。そして、知らないと「損」をすることが多い。年金の世界では、奇しくもAさんのような「専業主婦」が格好の事例になる。現在、年金世代に差しかかっている女性の多くが若いころに未加入の期間があるからだ。


 Aさんは「任意加入」を利用したが、実はほかにも年金を増やせる仕組みがあり、上手に利用すれば60代の10年で相当、年金額を増やせる。おおむね50代以上の専業主婦にあてはまる「年金増額策」を探ってみよう。


 この世代の専業主婦は、同じような「人生パターン」を生きてきた人が多い。短大か大学へ進学→就職→数年後、会社員の男性との結婚で寿退社→専業主婦、である。


 多くの人が未加入の期間があるとしたのは、国の制度による。1991年3月までは、学生は20歳になっても国民年金に強制加入ではなかったのだ。加入は任意だったから、未加入が圧倒的多数派。したがって、大抵の人は「2年」ほど未加入期間がある。浪人していればそれが「3年」などにのびる。また、その後の生き方しだいで、さらに未加入の期間が長い人もいる。




 年金制度の中では、専業主婦は国民年金の「第3号被保険者」になる。20〜59歳で、会社員の夫の被扶養者なら「3号」でいられる。いくつか年上のことが多い夫は、今や60代前半は会社で働き続けるケースがほとんどだ。したがって専業主婦も「3号」のまま60歳を迎える人が多い。


 さあ、問題はそこからだ。冒頭のAさんが行ったように、国民年金に「任意加入」するところから年金増額策は始まる。


【STEP1 任意加入】


 任意加入は、まさに未加入や保険料を納められなかった期間がある人のために設けられている制度だ。一定の条件を満たす本人が申し出れば、60歳から65歳まで最長5年間入れる。ただし、59歳までの分と合わせた加入期間が、国民年金の加入上限である「40年(480月)」に達したら、そこで終了となる。


 任意加入できる期間は、今年度の「ねんきん定期便」なら【480月−20歳〜59歳の加入月数】で自分のケースがわかる。任意加入しておけば、多くの専業主婦が5年間のうちに「満額」の老齢基礎年金をもらえるようになるだろう。


 増える年金額は「1620円×加入月数」で、5年間丸々加入できる人なら最大で年間「9万7200円」増やせる。しかも老齢基礎年金は終身年金だから、それが死ぬまでもらえる。


 保険料は今年度は月1万6590円、1年で約19万9千円だ。1年加入すると1万9440円(1620円×12)年金が増えるから、65歳から年金受給を始める場合だとちょうど10年で元が取れる。つまり75歳以上生きると、長生きするだけ得になる。


 保険料は口座振替が基本で、まとめて払う「前納」も6カ月、1年、2年と3パターンが用意されている。2年前納だと1カ月弱分の1万5790円もお得になるから、それらを利用すると元が取れる期間がさらに短くなる。


 女性は長生きの人が多く、さらに後述する「おひとりさま対策」のことを考えると、60代前半での任意加入は必須といえるのではないか。


 その上、国民年金に任意加入すると、さらに年金を上積みできる「資格」が得られる。国が国民年金の加入者向けに用意している「上乗せ年金」に加入することができるのだ。



【STEP2 付加年金・国民年金基金】


 上乗せ年金には「付加年金」と「国民年金基金」の二つがある。ともに自営業者など国民年金の第1号被保険者のために用意されている制度だ。59歳まで「3号」だった専業主婦は、任意加入後は「1号」扱いになるため利用できるようになる。


 付加年金は、月400円の付加保険料を納めれば「200円×納付月数」の付加年金額を終身受給できる。最大5年間納めても年金額は年「1万2千円」にしかならないが、どんな場合でも2年で元が取れる。


 国民年金基金も終身年金が基本だ。ただし付加年金と違って、毎月の掛け金が6万8千円までと高額かけることができる。60歳女性なら、5年間加入できる場合は月2万3750円の掛け金で65歳から年「6万円」の終身年金がもらえる(保証期間15年つき)。ただし、計算してみると元を取るのに「約24年」もかかる。


 どちらも59歳までの年金未加入期間が「5年」ある人はともかく、多数派を占めるとみられる「2年」程度では金額的なうまみは少なそうだ。ただし、両方に加入することはできない決まりで、どちらかを選ばなければならない(もちろん加入しない手もある)。


 早く元が取れるという観点からは付加年金に軍配が上がる。長寿に自信があり、かつお金の管理が苦手という人なら、国民年金基金を利用してもいいかもしれない。「年金化」しておけば将来、勝手に定期的にお金が振り込まれてくるため、ほったらかしで済むからだ。


 さらに、もう一つ、確定年金ではないが、個人型確定拠出年金、いわゆるiDeCo(イデコ)にも加入できる(任意加入している期間のみ)。2017年からの規制緩和で専業主婦も加入できるようになり、今年5月から65歳まで加入できるようになった。


 しかし、イデコは投資信託を使っての「積み立て投資」が主だ。最長の5年でも期間が短く、長期投資のメリットを生かせない可能性が高い。したがって加入可能になった17年から始めている人以外は、手を出さないほうがいいだろう。



【STEP3 5年繰り下げ】


 任意加入で老齢基礎年金を「満額」にし、一定の上乗せ年金にも加入した上で、余裕がある専業主婦には、ぜひ「とどめ」を刺してほしい。60代後半は年金をもらわずに受給を遅らせる「年金繰り下げ」を実行するのである。


 長寿時代を迎え、今年の大改正で上限年齢が70歳から75歳に引き上げられたこともあり、「繰り下げ」は注目を集めている。


 何と言っても魅力的なのは増額幅だ。1カ月受給を遅らせるごとに「0.7%」年金額が増える。1年で8.4%、5年で42%、仮に上限の75歳まで受給を遅らせると実に「84%」と倍近くまで増える。1年で1割弱も増える金融商品は存在しない。年金は金融商品ではないが、そんな「高利回り」を国が保証してくれるのだ。


 60代後半の5年間繰り下げするだけで「約110万円(月9.2万円)」にもなる優れものだ。


「2年未加入」の専業主婦が65歳から年金受給を始めた場合の年金額は「約74万円(月6.2万円)」だから、月3万円も増えるのだ。


■「おひとりさま」への効果


 これだけでもうれしいが、それが夫が先に死亡した場合の「おひとりさま対策」にもなっている点に注目してほしい。若いころ会社で働いていた時代の少額の老齢厚生年金を持つ専業主婦と老齢厚生年金が月10万円の夫で考えてみよう。


 こうした専業主婦世帯では、夫の遺族厚生年金は夫の老齢厚生年金の4分の3分を受給することになる。すると、この専業主婦は10万円×3/4で「7.5万円」の遺族厚生年金をもらえる(*)。70歳まで繰り下げた自分の老齢基礎年金「9.2万円」を合わせると月「16.7万円」だ。


 一方、何もしなかった場合は、7.5万円+6.2万円で「13.7万円」になる。


 総務省の家計調査年報(21年)によると、65歳以上の夫婦無職世帯の総支出は月約25万5千円。2人世帯が1人に変わった場合の総支出は約7割に減るとされるから、平均的家計では「約17万8500円」になる。


 先の数字と比べてほしい。何もしなかった場合は月4.2万円も不足するのに、増額対策をほどこした専業主婦だと不足額は1.1万円で済む。年額に直しても13.2万円。おひとりさまの期間が10年続いたとしても、貯蓄が150万円程度あれば足りてしまう。



【STEP4 おまけ】


 お金はあって困るものではない。さらに余裕資金があるのなら「積み立て投資」に挑戦する手もある。若い世代が今、我先にと始めている投資法だ。


 簡単に言えば、主に世界経済全体を対象にしている投資信託を毎月、一定額購入する投資法だ。成長性を重視するのなら、投資対象は「株式」が主流になる。長期間積み立て続けることで世界経済の成長の波に乗ることを狙うのだ。


 国の制度である「つみたてNISA」なら年間40万円まで積み立てできる。60代10年なら400万円まで投資ができ、運用益はすべて非課税だ。





 以上見てきたように、年金の少なさを嘆く専業主婦でも、制度を知り、それを利用できる少しの余裕があれば60代の10年で老後資金を増額できる。ちなみに、国民年金の任意加入の保険料は、夫が会社員なら夫に出してもらおう。全額が社会保険料控除に使えるから、夫の所得税・住民税が安くなる。これまた一石二鳥なのだ。(本誌・首藤由之)


*正確には、自分の少額の老齢厚生年金が先に支給され、それと夫の老齢厚生年金の4分の3との差額が遺族厚生年金になる

※週刊朝日  2022年10月7日号


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