「映画デリシャスパーティプリキュア」が見せる子どもと大人の夢のあり方 田中仁の脚本はなぜ大人の涙腺を緩ませるのか

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2022年09月29日 18:03  ねとらぼ

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ねとらぼ

田中仁氏が脚本を書いた「映画デリシャスパーティプリキュア」

 「プリキュア映画」には、大人の涙腺をも緩める作品が多々あります。



【画像】映画で披露された「お子さまランチドレス」(他7枚)



 ・魔法つかいプリキュア!「奇跡の変身!キュアモフルン!」



 ・スター☆トゥインクルプリキュア「星のうたに想いをこめて」



 この2本は大人も泣かせると、ファンの間でも人気が高い作品ですね。2作品に共通しているのは、監督が田中裕太氏。そして脚本を田中仁氏が手掛けていることです。



 その田中氏が脚本を手掛けた「映画デリシャスパーティ・プリキュア 夢みる・お子さまランチ!」(・はハートマーク、以下略)が公開されました。



 それは田中氏が紡ぐ、子どもと大人の「夢」の物語。お子様ランチのテーマパークを舞台に、子どもたちには楽しく、大人はちょっぴり切なくなる。映画館を出るときにはきっと親子で手をつないで出たくなる。そんな映画だったのです。



※映画の内容に関するネタバレはありません



●映画デリシャスパーティプリキュア公開



 9月23日、「映画デリシャスパーティプリキュア 夢みるお子さまランチ!」が公開されました。



 本作には最近見られていた「過去プリキュアとのコラボ」は無く、「デリシャスパーティプリキュア」単体での物語となりました(その分、過去4作品コラボのショートムービーが同時上映となります。余談ですがこの短編がまた素晴らしい内容なのですよ)。



 映画では、パムパムら妖精たちも人間の姿になったり、プリキュアたちもパワーアップ、新コスチュームで派手なアクションシーンが繰り広げられたりとビジュアル的にも見どころ満載です(パムパムの人間の姿が一部のファンの心に刺さっているようです)。



 監督は「フレッシュプリキュア!」「HUGっと!プリキュア」のシリーズディレクターの座古明史氏。そして脚本は「Go!プリンセスプリキュア」「キラキラ☆プリキュアアラモード」のシリーズ構成を担当した田中氏。プリキュアを知り尽くした鉄壁の布陣となっています。



 脚本の田中氏は、最近では「ゆるキャン△シリーズ」や「ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会」のシリーズ構成、脚本なども担当し、プリキュアに限らず多くのアニメファンにも大人気の脚本家となっています。



 しかし、やはりプリキュアファンには「映画魔法つかいプリキュア!奇跡の変身!キュアモフルン!」「映画スター☆トゥインクルプリキュア星のうたに想いをこめて」の感動的なストーリーの印象も強いかと思います。



 「まほプリ奇跡の変身!キュアモフルン!」では、ぬいぐるみであるモフルンの夢を、「スタプリ星のうた」では、星そのものの夢を通し、子どもたちへ夢を見ることの大切さを描いてきた田中氏。



 本作「夢みる・お子さまランチ!」でも、お子様ランチというモチーフを通して「夢」が描かれました。



●大人と子どもで見え方が異なる



 この映画、楽しい絵が満載で子どもたちは本当に楽しいと思います。「プリキュアとは、アニメだけでなくプリキュアという体験そのもの」と語ったのは「スター☆トゥインクルプリキュア」のプロデューサーである柳川あかり氏ですが、まさに今回の映画でも、映画館の売店で売っているポップコーンのセットが実際に映画の中に出てきたり、手拍子で劇中のアトラクションを一緒に楽しむシーンがあったりと、子どもにとっては「映画を見る」というよりも「体験する」といったワクワク感があります。



 内容的にも、妖精たちが人の姿になって戦う特別感、お子様ランチを模したアトラクションのシーンがとにかく楽しそうに描かれ、アクションシーンはド派手でカッコよく、子どもたちは「ドリーミアの世界」に導かれます。劇場で見掛けた子どもたちも上映後はニコニコで映画館を後にしていました。これぞ「プリキュアの映画!」という感じの世界観です。



 一方、横で見ている大人たちは、見え方が異なるかもしれません。



 本作の敵キャラクターは、強く「大人を否定」するのです。これは「大人は決して入れないドリーミア」に象徴されています。大人を否定する理由もややビターなもので、決して「悪」ではなく、子どもを守りたい思いから暴走してしまう。そんな敵キャラにも大きく感情移入してしまうのです。



 テレビアニメではお気楽な主人公・和実ゆい(キュアプレシャス)にも、「ごはんは笑顔」だけではどうにもならないシリアスな局面が訪れたりと、大人にもグっと来る演出も多いのです。



●お子様ランチを通して描かれる子どもと大人の対比



 本映画は「子ども」と「大人」の物語です。



 「はやく大きくなりたい」と願うコメコメと、「汚い大人になんかならなくてよい」とする敵キャラクターとの対比がお子様ランチをモチーフとして描かれます。



 「子どもっぽいから、お子様ランチを食べたくない」とする子ども。 「汚い大人に、お子様ランチを食べる資格はない」とする大人。



 お子様ランチを巡る異なる2つの思いは交錯し、プリキュアは対話をするために戦います。決して善vs.悪の戦いではなく、共に「子どものため、未来のため」を巡っての戦いはこの映画のラストシーンの最大の見せ場です。思いの力で戦い、奇跡を起こすのがプリキュア映画の魅力なのです。



●夢に遅いも、早いもない



 田中氏が手掛けるプリキュアでは、よく「夢」が描かれます。この映画でも「夢」の描かれ方が本当に素晴らしいのです。



 それを象徴するのが、この映画の主題歌「ようこそ、お子さま・ドリーミア」(・はハートマーク)です。



 フルで8分12秒もあるこの曲は3部構成となっていて、第1楽章はお子様ランチのテーマパークをコミカルに歌い上げますが、一転ダークな空気へと変わる第2楽章で、この映画を象徴する歌詞が紡がれます。



 この歌の歌手、後本萌葉氏も雑誌のインタビューで、この歌詞について答えています。



「夢に、大きいも小さいも遅いも早いもない。ぜんぶ素敵」のところとか、大好きです。



引用:主題歌「ようこそ、お子さまドリーミア」後本萌葉インタビュー徳間書店『アニメージュ2022年10月号』(P58)



 「夢に、遅いも早いもない。ぜんぶ素敵」



 プリキュア映画は子どもだけではなく、一緒に見ている大人にもメッセージが込められています。子どもの隣で一緒に見ている大人に「大人になっても夢を見ても良いのですよ。夢には遅いも早いもないのだから」ということをこの映画を通して伝えているようにも思えます。



 脚本の田中仁氏は、子どもが元気に育つためには保護者の存在が不可欠だとしています。



僕は、子どもが元気に育つためには、保護者の存在が不可欠だと思っています。トワが環境によって一度は悪い方向に行ってしまったように、環境が子どもの夢を閉ざしてしまうこともある。



『Go!プリンセスプリキュアオフィシャルコンプリートブック』田中仁インタビュー(P82)



 子どもが元気に育つためには、一緒に見ている大人をも幸せにする必要がある、とするのが田中仁氏の、そしてこの映画のプリキュア観なのです。



●お子様ランチというメタファー



 プリキュアというアニメは、お子さまランチと良く似ています。



 子どもが大好きなところ、大人が子どこを喜ばせるために全力で作っているところ、子どものころは大好きだったのに成長するにつれ離れて行ってしまうところ……。



 本映画では「お子様ランチは誰が食べたって良い」ことが明示されます(もちろんきちんと「大人は食べられない店もある」との言及もあります)。



 「お子様ランチ」は、プリキュアというコンテンツ自体のメタファーとみることもできます。子どもと保護者(大人)が一緒になってお子様ランチを食べる世界こそが、今のプリキュアが示している世界なのです。



●ヒーローとは何か?



 また、本映画のラストシーンではコメコメの「キュアプレシャスのようなヒーローになりたい」という夢を通して、「ヒーローとは何か?」が示されます。



 子どもたちにとってのヒーローとは何なのか? そして大人たちにとってのヒーローとは何なのか?



 そこで提示されるヒーロー像は、この映画を見て体験してほしいのです。きっと大人たちも満足できる結末が見られると思います。



 ずっとプリキュアで「夢」を描いてきた田中氏は、今作でどんな夢を描いたのか。



 「映画デリシャスパーティ・プリキュア 夢みる・お子さまランチ!」。家族連れはもちろんのこと、お一人様の大人でもアツく見られる、そんなすてきな映画です。きっと映画を見た帰りに「お子さまランチ」を食べたくなりますよ。



●興行収入も絶好調!



 数字面でも絶好調です。9月26日に発表された全国映画動員ランキング(興行通信社調べ)によると、「映画デリシャスパーティプリキュア 夢みるお子さまランチ!」は、金(祝)土日の初動3日間の累計成績は動員30万8000人、興収3億6700万円を突破しました。



 例年は土日2日間、今回は金(祝)土日の3日間の興収発表なので例年との比較はできませんが、歴代プリキュア映画の中でもかなり高い数字となっています(同じ3日間(土日月(祝))の興収発表だった2010年「映画プリキュアオールスターズDX2希望の光☆レインボージュエルを守れ!」(歴代興収2位)の初動3日間の動員29万6000人、興行収入3億1900万円を上回る数字となっています)。



 新型コロナの影響で落ち込んでいたプリキュア映画に子どもたちが戻ってきました。



「デリシャスパーティプリキュア」毎週日曜8時30分よりABC・テレビ朝日系列にて放送中(C)ABC-A・東映アニメーション



●著者:kasumi プロフィール



プリキュア好きの会社員。2児の父。視聴率などさまざまなデータからプリキュアを考察する「プリキュアの数字ブログ」を執筆中。2016年4月1日に公開した記事「娘が、プリキュアに追いついた日」は、プリキュアを通じた父娘のやりとりが多くの人の感動を呼び、多数のネットメディアに取り上げられた。


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