凱旋門賞にまったく違うアプローチで挑む日本馬4頭。悲願の勝利に向け、各陣営が自信を覗かせる「戦略」とは

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2022年10月02日 06:41  webスポルティーバ

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 日本競馬の悲願でもある凱旋門賞制覇。これまで、さまざまなアプローチで各陣営がその壁に挑んできた。どのような臨戦過程が理想的であるか、どのような馬に適性があるのかといった議論は、勝利という正解がない中で延々と続けられてきている。




 例えば、「日本とはまったく質の異なる馬場にいきなり対応することは難しい」という考えから、一度現地のレースを経験させるといったことや、中長期の滞在でのチューンアップ、逆に直前まで日本で出走するのと同じように仕上げて現地では微調整、というものもあった。そういった意味では、今年に出走する4頭がすべて異なるアプローチでレースに臨むことは実に興味深く、これまでの積み重ねのひとつの集大成ともいえる。

 凱旋門賞と同じコース、同じ距離の前哨戦GIIニエル賞を使って挑む選択をしたのは、今年の日本ダービー馬ドウデュース(牡3歳)だ。日本調教馬の最高着順である2着は過去に4回あるが、その4回はいずれも前哨戦を使っていた(ただし、1999年のエルコンドルパサーは長期滞在3戦目がフォワ賞)。

 この方法の最大のメリットは、なんといっても本番と同じ条件を経験できること。一方でデメリットは、本番まで中2週と、近年の日本における一線級の馬のローテーションとしてはいささか間隔が短いことだ。前哨戦で好走しても、その消耗が残ってしまって本番でパフォーマンスを落としてしまう、というケースも少なくない。

 ドウデュースを管理する友道康夫調教師も、2016年の日本ダービー馬マカヒキで、同じ臨戦過程で同年の凱旋門賞に臨んでいる。前哨戦のニエル賞を快勝し、大きな期待を寄せられたものの、本番では14着と大きく敗れてしまった。

「前哨戦も勝ちにいくというか、仕上げて臨んだことで、今思えば"お釣り"がなかったのかもしれない」

 これは、9月28日のシャンティイで最終追い切りを終えたあとの友道調教師の弁だ。その経験を踏まえて、陣営は大胆な策を採った。本番から逆算し、前哨戦のニエル賞を、結果を求めない"調整レース"として割り切って使ったのである。レースは7頭立ての最後方からレースを進め、最後の直線で伸びを見せるも、ダービーのように最後まで伸び切ることはできず4着に終わった。

 正直なところ、「調整とはいえ負けすぎでは?」という物足りなさもあったが、その点について友道調教師は、「勝てるに越したことはないけど、デキも余裕残しで、太目も残っていた。直線もずっと右手前で走ってしまって、武豊騎手も最後まで追いませんでした。あれで手前をちゃんと換えていたら、結果はもう少し違っていたと思います」と、想定の範囲内であることを強調した。

 事実、最終追い切りでは、ドウデュースは単走で軽快な動きを見せた。友道調教師も「1回使った上積みは大きいと思う。イメージ通りにきています」と自信を覗かせている。

 昨年に続いて参戦のディープボンド(牡5歳)も、昨年は前哨戦のフォワ賞を圧勝しながら、本番では14着に敗れた。

「フォワ賞を勝った後、具合いいと思っていたけど、疲れていたのかなという気もします」

 管理する大久保龍志調教師も、友道調教師と同じく前哨戦を使ったマイナスの影響を振り返る。ただ、ドウデュースと異なり、ディープボンドは遠征の環境やコースの経験をすでに積んでいる。そこで今年は、"経験"を目的とした前哨戦出走は不要と判断し、本番だけを使うプランが組まれた。

 前哨戦が行なわれた前日の9月10日にフランスに到着。昨年と同じくエントシャイデンを僚馬に、じっくりと調整されてきた。

「休み明けでも、5歳なので競馬への上がっていく曲線もわかっているので苦労はありません。仕上がりに関しても去年よりも自信があります。昨年に大きな課題をもらって、馬場などについても対策をしてきました」(大久保調教師)

 具体的な対策について尋ねると、「それは秘密」と不敵な笑みを見せた。

 いわゆる"トライアルデー"ではなく、本番4週前のGIIドーヴィル大賞をステップに使うトリッキーな策に出たのは、矢作芳人調教師の管理するステイフーリッシュ(牡7歳)だ。これまでも前例にとらわれない形で結果を出してきた矢作調教師は、「本番までの間隔が短いので、トライアルデーを使うのは避けたかった。けれども、こちらの競馬を一度経験させておきたかったので」とその狙いを話す。

 前出の2名の調教師も、前哨戦の消耗が戻り切らなかったことを強調していたことを考えれば、ひと叩きを前倒しするのは理にかなっている。ドーヴィル大賞は、ドウデュースのニエル賞と同様にひと叩きと割り切ったものだった。

「6分のデキで2着という結果は、素直に『こんなもんかな』と思いました」

 父ステイゴールドは、7歳時の引退戦となった香港ヴァーズで待望の国際G気鮟蘊〕。その産駒たちもオルフェーヴル、ナカヤマフェスタと凱旋門賞で好走している。

「7歳になれば普通は大きな変化がないはずなのに、トレセンのワサワサした雰囲気から解放されたこともあってか、成長を感じています。正直、日本の4頭の中では(格が)落ちるけども、意外性に賭けたいよね」(矢作調教師)

 現地の馬場を一切経験せず、ぶっつけで本番を迎えるのが"大将格"であるタイトルホルダー(牡4歳)だ。

「精神的にもフィジカル的にもこの馬についてつかめてきた中で、短い間隔で使うのはよくない。休み明けでも走れる馬なので、ベースの調教をしっかりやれば大丈夫だと判断しました」

 臨戦過程の理由を管理する栗田徹調教師はそう話す。実際に、3歳時のGIIディープインパクト記念弥生賞や、今年のGII日経賞、そしてGI宝塚記念と、間隔を開けた出走で勝利している。とりわけ今年の宝塚記念は約2カ月ぶりでも圧巻の走りだった。

「先週しっかりできているし、最終追い切りでは体調も落ち着きもよく、いい調子できています。無理だけはしないように、当該週の追い切りとしては文句のない内容です」(栗田調教師)

 馬自身はぶっつけとなるが、手綱を取る横山和生騎手は2週間前にフランスに渡航。マイル戦ではあるものの、タイトルホルダーの一時入厩先である小林智厩舎の馬に騎乗して、パリロンシャンの馬場とフランス競馬の流れを経験している。

「今年は大野(拓弥)騎手がしばらくフランスで乗っていたので、2週間前の経験もふまえていろいろ話をさせてもらいました。追い切りでは、タイトルホルダーも馬場はそんなに気にしていませんでしたし、競馬場は(調教場とは)また違うので気にすることはないと思います」(横山和生騎手)

 自身の今回の参戦について、「2、3年前(の自身の成績)からしたら現実味がない」と話すように、横山和生騎手の躍進は目覚ましい。昨年優勝のトルカータータッソに騎乗したレネ・ピーヒュレク騎手も凱旋門賞は初騎乗だった。凱旋門賞の怖さを知らないことは、ある意味アドバンテージとなるかもしれない。

このニュースに関するつぶやき

  • ナカヤマフェスタみたいに、国内G1やっと勝てたくらいでも好走する例があるから現役最強である必要はないと思うんですよね。
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