進化型カプセルホテルは豪華で快適 若い女性客にも人気の理由とは

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2022年10月02日 11:00  AERA dot.

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ナインアワーズ大手町/廊下部分がガラス張り。開放感がある。滞在中の眠り、シャワーやタオルの質にこだわっている=ナインアワーズ大手町提供
狭くて、利用客は男性ばかり。そんな従来のイメージが変わりつつある。本当だろうか。進化型カプセルホテルに記者が泊まってみた。AERA 2022年10月3日号より紹介する。


【写真】進化型カプセルホテルはこちら
*  *  * 


「出張でもないのに、高級カプセルホテルに泊まる……贅沢!」「カプセルホテルめっちゃおしゃれ! 開放感すごい〜!」


 ユーチューブやインスタグラムで、こうした女性からの投稿をいくつも目にした。


 カプセルホテルと言えば、男性専用で古めかしく、終電を逃したときに泊まるイメージだったのだが。


 少し前から気になってはいたが、やはりハードルは高い。でも、記者(女性、30歳)が思い切って、都内のカプセルホテルに泊まって取材してみると、豪華で居心地のいい「進化型カプセルホテル」が、多く誕生していた。


 取材で歩き回った夕方、疲れがどっと押し寄せた。もう家に帰るのも無理……。


 そんな日に行ったのは、東京メトロ竹橋駅近くの「ナインアワーズ大手町」だ。


 外装も内装も白。共用スペースの机や椅子はシンプル。有名デザイナーが手がけた。


■快適、SNS映えも


 カプセルホテルは閉鎖的なイメージが強いが、ここは廊下の壁がガラス張りで、明るいうちは、日光がよく入る。暗くなったら、暖色のライトが窓の外に漏れる。SNS映えする。


 男女別の専用エレベーターでフロアも別々。ベッドも厚く、硬めで腰が痛くならなそうだ。慣れない布団だと寝られない記者もぐっすりだった。


 寝る前に共用スペースで「残業」した。机、いす、コンセント、Wi−Fiがある。家なら寝てしまうけど、ここなら緊張感を保てる。想像以上に快適だ。ナインアワーズの米本秀高さんは言う。


「ナインアワーズの名前の由来は『1時間のシャワー+7時間の睡眠+1時間の身支度=9時間』です。眠るだけなのに、個室ホテルは割高に感じる。だからといってネットカフェに泊まるのは疲れる。そんな方たちのために必要な『眠り』と『シャワー』に特化したサービスを提供しています」




 一部店舗では睡眠解析サービスも。カプセル内の赤外線カメラやマイクが、心拍やいびきを測定、メールで結果を届ける。宿泊料金は時期によるが3千〜5千円ほど。この価格、この快適さなら、十分満足と思う人も多いだろう。


 読みたかった本を持ち込んで、羽を伸ばしたい……。そんな特別な時間を過ごしたいという需要にも応える。


■ファーストクラス気分


「地上でファーストクラスを体験!」


 こうアピールするのは、「ファーストキャビン」だ。今年2月にリニューアルした市ケ谷店では、ベージュのジャケットを着たスタッフが「いらっしゃいませ」と、柔らかいほほえみで迎えてくれる。


 ここのホテルは窮屈さがない。普通はカプセル内では中腰になる。だが、ここでは天井まで自分のスペースだ。カプセル内で立つこともできる。


 最もランクの高い「ファーストクラスキャビン」に泊まってみた。


 なんとベッド以外のスペースがある。机もあって、普通のホテルの部屋のようだ。アコーディオンカーテンで仕切る。



 広い大浴場に、洗濯乾燥機、充実のスキンケアグッズ、数万円する高級ドライヤーも完備。なんと豪華なことか。宿泊料金は4千円から。ビジネスクラスは千円ほど安くなる。


 女性客のほうが多いのではないかと思ったが、記者が宿泊した8月の平日は、2対1の割合で男性客が多かった。それでも、女性に好まれそうなサービスを提供する理由について、ファーストキャビンの西島紗織さんはこう答える。


「男性でもハードルを感じる人もいる。男性でも女性でも心地よく感じる清潔な場所は選んでもらえるはず。メインターゲットは30、40代女性です」


 全館女性専用のカプセルホテルも出てきた。「秋葉原 BAY HOTEL」だ。


 記者が日曜日に泊まったところ、ワンピース姿の20、30代くらいの女性が多い印象だった。支配人の大上香音さんは言う。


「東京ドームなどでコンサートがある週末は、稼働率がかなり上がります。夜行バスの時間に間に合わない、または翌日ゆっくり帰りたい方が使ってくださっています」




 ここでは「推(お)し事(ごと)プラン」が人気だという。推し活での疲れを癒やして、というのが狙いで、栄養ドリンクなどのプレゼントを選べる。


 アニメやゲームのキャラクターとも時折コラボ。なんとカプセル内に、キャラクターの特大イラストが貼られている。まるでキャラクターと一緒に寝そべっているかのようだ。


■「推し活」に活路


 大上さんは、推し活のエネルギーを感じている。


「キャラクターで飾るのは10室ほどですが、予約枠が瞬時に埋まることもあります。ただ、部屋はランダムなんです。予約したお客様は、どのキャラクターのカプセルに当たるか、実際に来るまでわかりません。推しのキャラクターのカプセルに泊まれるのか、そういう楽しみもあると思います。コラボ期間中にリピーターになってくれる方も多いですね」


 カプセルホテルは増えている。厚生労働省の衛生行政報告例によると、カプセルホテルを含む簡易宿所の施設数は、2010年に約2万4千だったが、20年には約3万8千と6割も増えた。鍵となったのは、13年頃から始まったインバウンドの増加だった。



 ホテル評論家の瀧澤信秋さんは言う。


「インバウンドは増えたものの、宿泊施設が不足していました。旅館やホテルも増えましたが、一から造るハードは開業までに時間を要します。それに比べて、カプセルホテルは準備期間が短く、数を伸ばしました」


 ただ、最近はカプセルホテルの休業や閉鎖も耳にする。


「コロナ禍とインバウンドが減ったことが大きいですが、実は宿泊施設の供給過剰は、コロナ禍前から始まっていました」と瀧澤さん。一般のホテルの開業ラッシュだった18年頃から、稼働率の低下が指摘されるようになったという。


「カプセルホテルも淘汰されています。他社にない魅力を打ち出そうとした。結果、進化を遂げたのです」


(編集部・井上有紀子)


※AERA 2022年10月3日号


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