「株主優待生活」の桐谷広人七段がリーマン・ショックを振り返りたくない理由「本当に死ぬかと思った」

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2022年10月04日 18:00  AERA dot.

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リュックを背負い、遠い街まで自転車で疾走していくのが桐谷スタイル。若い頃から体力は抜群で、日本将棋連盟のマラソン大会では上位の常連だった(photo 写真映像部・戸嶋日菜乃)
AERAの将棋連載「棋承転結」では、当代を代表する人気棋士らが月替わりで登場します。毎回一つのテーマについて語ってもらい、棋士たちの発想の秘密や思考法のヒントを探ります。渡辺明名人、「初代女流名人」の蛸島彰子女流六段、「永世七冠」の羽生善治九段らに続く19人目は、「株主優待生活」の桐谷広人七段です。発売中のAERA 2022年10月10-17日合併号に掲載したインタビューのテーマは「将棋以外の楽しみ」。


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「本当に死ぬかと思ったんです。いまでもあまり思い出したくない」


 桐谷広人は2008年に起こったリーマン・ショックのときのことを、そう振り返る。桐谷は証券会社から金を借り積極的に勝ちをねらう「信用取引」をおこなっていた。


「リーマンが潰れたときに撤退すればよかった。信用の負けが2千何百万円あったんですけど、全部清算してね」


 桐谷は撤退せず、あまり信用もしていなかった経済評論家の言葉にすがりつく。


「『大逆転の好機』って言っててね。つらいときは、占いでもいいことを言ってもらって信じたい。撤退せず、逆に信用で大量に買ったら、そこからまた下がって。2千万ぐらいずつの損失を3日連続で出しました」


 株式投資家としての桐谷は、約40年ほどの間に何度も浮き沈みを経験してきた。


「大儲けしたときは『株をやってよかった』。大損したときは『やらなきゃよかった』。数年ごとに、この繰り返しでした」



 現在では著名な個人投資家である桐谷が、将棋の引退棋士・桐谷七段だと知る人は、そう多くないかもしれない。


「コンピューター桐谷」


 それが現役時代の通称だ。抜群の記憶力で過去の棋譜データを深く分析し、いくつもの優れた定跡書を執筆した。「天才集団」と呼ばれる棋士たちであっても、株でうまくいくとは限らない。14年、桐谷がトークイベントに招かれた際、羽生善治現九段(52)はこんなことを言ったという。


「自分が棋士になった直後にバブルがはじけ、先輩方が大損してるのをいっぱい見てるので、自分は株はやりません」


 その「先輩方」の一人に桐谷は含まれている。


(構成/ライター・松本博文)


 ※発売中のAERA2022年10月10-17日合併号では、桐谷広人七段が株主優待や配当を中心とするスタイルを確立した理由や、自転車に乗ってブレークしたきっかけについても話しています。


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