田原総一朗「課題山積の日本的経営は限界 抜本的改革は奏功するか」

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2022年10月05日 06:00  AERA dot.

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田原総一朗・ジャーナリスト
ジャーナリストの田原総一朗氏は、日本的経営に改革が必要なことを指摘する。


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 米国、中国、韓国、台湾などに無残に立ち遅れ、規模が縮小してしまった日本経済をいかにして活性化させるか。大手メディアの中にも強い危機感を持って、この問題にどう取り組むべきか考え始めたところもある。私自身こうした取り組みのプロジェクトをこれまで多く発信してきた。


 2012年に第2次安倍晋三政権が発足した。日本の経済状況は極めて悪かった。そこで安倍首相は日銀の黒田東彦総裁と組み、思い切った財政出動をする異次元の金融緩和を敢行した。これにより内需が拡大、経済が成長する、と自信を持って言い切ったのである。


 18年に安倍首相は3選されたが、内需は拡大せず、経済も成長していなかった。安倍首相は、「どうもアベノミクスは成果を上げていないようだ。どうすべきだと思うか」と私に相談した。もちろん、何人にも相談したのだと思う。


 私は、あらかじめ相談を受けることがわかっていて、私が信頼していた斎藤健氏、村井英樹氏などと話し合い、この両氏をキーパーソンにしたプロジェクトチームをつくることを考えた。そして、そのことを安倍首相に提案すると、積極的に受け入れたのである。


 当時、経済再生相だった西村康稔氏を筆頭に、経済産業省、財務省、厚生労働省などの公務員9人、エコノミスト、経営者などによるプロジェクトチームを発足させ、日本の産業構造、そして日本的経営を抜本的に改革することにした。


 もっとも、安倍首相は途中で体調を崩して辞任したが、プロジェクトチームはそのまま進め、20年の9月末日には、時の経団連会長、トヨタ副会長、パナソニック副社長やNTT社長などの経営者たちが、この構想を実現させようではないか、ということになった。


 そして21年の春、新首相の菅義偉氏に、このプロジェクトの構想を実現させようと提言した。




 菅首相は前向きに同意したのだが、「現在、新型コロナ問題で手いっぱいなので、それが一段落したら取り組むことにする」と言って、そのまま辞任してしまった。


 この構想の発端は、日本的経営の限界が見えてきたからだ。


 たとえば1980年代、日本経済はジャパン・アズ・ナンバーワンと称されていて、企業の時価総額ランキングでは、世界のトップ10社の中に日本企業が7社も入っていた。ところが現在では、トップ50社の中にトヨタが36位と1社入っているだけである。


 現在の日本的経営は年功序列、終身雇用制で、役員も社長も基本的に社員から出る。会社員の目標は企業内で地位の高い役職に就くことになり、どうしても上役に気に入られるために、思い切った正論などが言えないことになる。


 東芝がわかりやすい例だ。数年前まで7年間も粉飾決算を続けていて、これが東芝が劣化した要因なのだが、中堅以上の社員ならば誰でも粉飾とわかっていたはずなのに、誰も指摘しなかった。6、7人の中堅以上の社員に「なぜ言わなかったのか」と問うと、「言えば左遷される。それが怖くて言えなかった」と誰もが答えた。


 これでは企業が劣化するはずである。年功序列と終身雇用の見直し、ひいては新卒採用や学生の就職活動、仕事に対する教育のあり方を改革するなど、問題は山積みなのである。


田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年生まれ。ジャーナリスト。東京12チャンネルを経て77年にフリーに。司会を務める「朝まで生テレビ!」は放送30年を超えた。『トランプ大統領で「戦後」は終わる』(角川新書)など著書多数

※週刊朝日  2022年10月14・21日合併号


このニュースに関するつぶやき

  • 日本的経営がダメなのではなく、中途半端に欧米化させたのが失敗だよ。日本型でがっちり社会を作り上げるか、流動性を重んじる欧米型に社会ごと切り替えるかその選択が国として出来てないだけ
    • イイネ!11
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