ドイツ代表、低迷期からの脱出。自国開催W杯を機に攻撃サッカーへ舵をきる

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2022年10月05日 11:22  webスポルティーバ

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ドイツ代表・強さの秘密(2)
(1)「ドイツ代表はなぜ強いのか。プラティニのフランスもお手上げだった全盛時代」はこちら>>

 東西ドイツが統一され、代表チーム名がドイツに変更されたのは1990年イタリアW杯後の1992年の欧州選手権(ユーロ・スウェーデン大会)予選からになる。




 以降、1996年の欧州選手権(ユーロ・イングランド大会)こそ優勝を飾ったドイツだが、W杯では1994年アメリカ大会、1998年フランス大会でともにベスト8と停滞する。ユーロ2000(オランダ、ベルギー共催)では、ポルトガル、ルーマニア、イングランドと同居したグループリーグで最下位に沈む。続くユーロ2004(ポルトガル大会)でもグループリーグ落ち。チェコ、オランダの後塵を拝したばかりか、小国ラトビアにも引き分ける有様だった。

 その間に行なわれた2002年日韓共催W杯で、ドイツは準優勝している。だがこれは、くじ運に恵まれた結果だと筆者は見ている。とりわけ準々決勝のアメリカ戦は、危ない試合だった。ドイツのトルステン・フリンクスが、ゴールライン上で相手のシュートを手で止めたにもかかわらず、主審は、ドイツを敗退させるわけにいかないとばかり、PKの笛を吹かなかった。

 2000年前後は、ドイツが史上もっとも弱かった時期だと筆者は考える。再び上昇気流に乗る転機となった大会は、2006年自国開催のW杯になる。

 欧州各地でサッカーファンに「好きな国、嫌いな国」を尋ねれば、嫌いな国の一番手にドイツを挙げる人は多くいた。ナチスドイツのイメージをいまだ引きずる人が少なくないことを知る機会にもなったわけだが、当のドイツ人も、自らの不人気ぶりを自覚している様子だった。

 たとえばユーロの現場では、各国サポーターは国境の垣根を超えて親睦を深めようとする。試合が終われば繁華街に繰り出し、和気藹々とアルコール類を酌み交わす。ユーロ2004でいえば、大会最高の名勝負となったオランダ対チェコの試合後、両国サポーターはノーサイドとばかり肩を組み、深夜までお互いの健闘を讃え合った。

 だが、ドイツ人はそうした輪の中に加わろうとしない。ドイツ人同士で固まろうとする。なぜかと理由と尋ねれば「僕らは嫌われているからさ」と自嘲気味に返してきたものだ。

代表監督がサッカーを変えた

 2006年の自国開催のW杯。そんなドイツのテーマは人気回復だった。フランツ・ベッケンバウワー大会組織委員長は、歴史的背景に触れつつ、改善するチャンスにしたいと述べていた。ドイツ人の表情は全体的に固く怖そうに見える。怒っているように見えることもある。だが、このW杯期間中は違った。各会場を訪れれば、ボランティアスタッフが「ハロー!」と、作り笑いがバレバレの、固い笑顔を振りまいてきた。

 サッカーも人気不足が目立ってきた。1974年W杯決勝対オランダ戦、1982年スペインW杯準決勝対フランス戦で勝利を収める姿は、まさに敵役そのものだった。ただし「いいサッカーをしても勝たなければ意味がない」は、成績が伴って初めて成り立つ論理だ。2000年、2004年のユーロでグループリーグ落ちするなど、2006年自国開催のW杯を前に、低迷するドイツは、長所を見いだしにくい集団となっていた。

 守備的なサッカーも輪を掛けた。もともと3バック(5バック)を好む習慣があったドイツは、1990年代後半、イタリアで守備的サッカーのムーブメントが起きると、すかさず呼応。3バックとひと口に言っても、守備的なものから攻撃的なものまで幅広く存在するにもかかわらず、ドイツはイタリア式3バックにすり寄った。

 バイエルンをはじめとするブンデスリーガのクラブの多くも、イタリア的な色に染まっていった。だが2004年、そうしたなかでドイツ代表監督の座をルディ・フェラーから引き継いだユルゲン・クリンスマンは、それまでとは一転、攻撃的サッカーに転じた。2006年自国開催のW杯では3位に終わるも、大会後、クリンスマン監督のもとでヘッドコーチを務めていたヨアヒム・レーヴが監督に就任すると、その色はさらに鮮明になっていく。

 2008年ユーロ(オーストリア、スイス共催)では決勝に進出。ウィーンのエルンスト・ハッペルでスペインと対戦し、0−1で敗れたが、攻撃的サッカーのスペインに対し、攻撃的サッカーで向かっていくドイツに新鮮な魅力を覚えたものだ。

 2010年南アフリカ大会も、ドイツは優勝したスペインに敗れている。ダーバンで行なわれた準決勝。スコアは2年前と同じく0−1だった。

 スペインはその2年後のユーロ(ウクライナ、ポーランド共催)も制し、国際大会3連覇を果たす。ドイツはワルシャワで行なわれた準決勝でイタリアに敗れ、涙を飲んだが、その姿は王者スペインの陰で、虎視眈々と世界ナンバーワンに躍り出る機会を狙っているように見えた。

 少なくとも「いいサッカーをしても勝たなければ意味がない」と言い出すようなスタイルから、ドイツは完全に脱却していた。続く2014年ブラジルW杯で通算4回目の優勝を飾ったドイツは、まさしく「いいサッカーをして勝った」。
(つづく)

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