「がんは災害と似ている、備えて被害を最小限に」腫瘍内科医が提唱する“命救う”マニュアル『がん防災』

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2022年10月07日 08:10  週刊女性PRIME

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“がん”は自然災害とよく似ているという

 三大疾患の代表「がん」。2人に1人はかかり、3人に1人はまだまだ元気に働き続けなければならない就労世代に闘病生活を送る。突然の告知に、多くの人は、お金は?家のローンは? 家族になんと伝えたら? と頭が真っ白になるだろう。

間違った情報をうのみにしない

「突然のことに動揺しないためには、心の準備が必要です。例えば台風や地震への対応や準備は、小学校からしっかり習います。がんも“ある日突然”という意味からすると、似ている。誰の身にもいつか振りかかってくるかもしれない“災害”と思えば、準備の大切さがわかるでしょう」

 と語るのは押川勝太郎先生。YouTubeで「がん防災」の大切さを発信している腫瘍内科医だ。

「がんという言葉の重さから、いざ宣告されるとパニックに陥って間違った知識にすがったり、初手が遅れてしまうケースがある。健康なときからがんについて正しい知識と心構えを持っていれば、つらさや衝撃は最小限ですみますし、災害同様、復興再建を適切に行えるのです」(押川先生、以下同)

 手軽だからといってインターネットやSNSからの知識は逆効果にもなる。国立がん研究センターや公的機関などが公開している信頼性の高い情報にアクセスするのが望ましい。

 注意したいのは闘病ブログや動画、有名人の「がん」報道。

「さまざまな対応や治療内容があふれていますが、それを信じて“この治療方法で、この結果になるに違いない”と思い込み、それまでの治療を中止したという患者さんもいます。がんの状況、症状、対策はケースによってさまざま。治療についての疑問や不安は主治医とのコミュニケーションで解決するのが基本です」

 全国にある「がん相談支援センター」では、病気だけでなく無料で誰でもお金や生活のことなど、多くの不安や疑問について相談できる。「いざという時」のために調べておいてほしい。

発見できるがんはしっかり検診を

「がん発生の因果関係の多くは不明。ただ、1番のリスクが『加齢』だということは確実。10代と60代では発がん率が100倍くらい違います」

「がん=死亡」というイメージは、昔のもの。早期発見・早期治療ができれば、5年生存率が90%以上。もはや「死なない病気」になってきているが、そのために必要なのは検診だ。

 例えば日本人女性の死亡率1位の「大腸がん」は検診が非常に効果的。

「大腸がんは、ポリープから『がん』になります。便潜血検査や内視鏡検査で見つかったポリープを切除するだけで大腸がんの死亡リスクを下げられます。がん検診でほぼ100%発見可能なのに、それをやらないのは非常にもったいない」

 40歳以上なら年に1回程度の定期検診を推奨。ただ、検診後の「要再検査」や「要精密検査」を放っておくケースも多いという。

「再検査がめんどくさい、もしくは結果が怖いという気持ちがあって未受診となるのかもしれません。しかし転移でもあれば一生抗がん剤治療の継続にもなりかねません。検診で見つかるのは幸運なほう、と考え受診をマストと思ってください」

知っておきたいお金の対策

 その一方で、やはりがんに罹患して、誰もが大いに気になるのは「お金」の問題。健康なうちに確認したいのは「保険」だ。

「健康診断で『再検査』や『経過観察』とされるだけで『がん保険』に入れなくなったりもします」と語るのは、さまざまな保険を扱うエージェントの神麻直樹さん。

 診断結果を見て「入りたい」ではもう遅い。「がん保険」の場合、加入からの待機期間90日がほとんどだから、契約が診断直前だったりすると、適用されないことも……。同じく後で「この保障内容をつけておけばよかった」と後悔する例も多いという。

 では、「がん保険」にはどのような保障内容があるのか。

「がんの診断の一時金、入院や治療のお金が支払われるタイプ。そして双方に対応した複合型の3つが代表。難しいなどと思わず、まさに『備え』の感覚で、保険料が低い若いうちから一時金がもらえる保険だけでも入っておくと安心できるかもしれません」

 おすすめなのは保障期間無期限で、一時金をもらったあとでも再発で再度支払いがあるというもの。ただ、保険に入ったから安心というのも間違いだ。

「以前の『がん保険』では65歳以上になるともらえる保険金が半分になってしまったり、なくなってしまうものもあります」

 医療費が戻ってきたり支給される国の支援制度も知っておきたいところ。月の医療費が一定額を超えたときに超過分が返ってくる制度や、会社員や公務員の場合、病気やケガで働けない間に給与などの約3分の2が保障される制度などがある。

 ただ、どちらも自分から申請をしないと使えないこともあるので注意が必要。手術や抗がん剤治療など、罹患すると治療が長引くことの多い「がん」。だからこそ、「備える」ために「お金」にまつわる情報や制度を確認しておくことも大切になってくる。

押川医師監修『がん防災』チェックリスト

■がん検診は受けましたか?

 国が定めるがん検診は必ず受けましょう。ご家族も受診はすんでいますか? 状況を毎年確認しましょう。

■二次検診は行きましたか?

 要再検査、要精密検査と言われたら、しっかり受診を。

■加入している民間保険の保障内容を確認していますか?

「いざという時に使えない」がないよう、保障内容を確認しましょう。

■会社の健康保険組合のホームページを見たことがありますか?

 高額療養費制度、傷病手当金などの情報を確認しましょう。

■会社の就業規則を確認しましたか?

 病気になったときの休暇・休職制度などを見ておきましょう。

■近くのがん相談支援センターを知っていますか?

 いざという時の相談先です。場所と連絡先を確認しておきましょう。

■かかりつけの病院情報を共有しておきましょう

 意外に家族が通っている病院を知らないことがあります。いざという時に困らないように情報共有しておきましょう。

■定期的にがんの情報更新をしましょう

 がんの治療は日進月歩です。信頼できる情報源から必要に応じて情報更新を行いましょう。

チェックした数が……
5つ以上:基本的な準備OK! 継続しましょう
5つ未満:あなたと家族を守るためにもしっかり備えましょう

押川勝太郎医師


1995年宮崎大学医学部卒業。専門は抗がん剤治療、緩和ケア。25年間で1万人以上の全国のがん患者と直接対話し、毎週日曜日夜にYouTube「がん防災チャンネル」でがん相談飲み会ライブ(同時視聴500人)を開催中。

取材・文/オフィス三銃士 データ素材提供:(一社)がんと働く応援団

このニュースに関するつぶやき

  • 自治体の健診は必ず受け、再検査もする。がん保険も掛けた。良い保険が出てくるので若い人は掛けてあっても見直しをお勧め。高齢者は見直しできない。
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