コロナでも好調だった理由 メゾンスペシャルは2019年春夏シーズンにデビュー。相反する要素を掛け合わせて融合することで、ファッションの新たな価値提案を目指している。運営会社のMAISON SPECIALはブランドの立ち上げに先駆けて、2018年に設立。「本当に欲しいものを生み出していく」という思いを込め、「SPECIAL IS YOUR STANDARD.」を理念に掲げている。
メゾンスペシャルといえば、主張の強いデザインを豊富に展開しているイメージがあるが、デビュー時はベーシックやビジネス向けといったテイストも打ち出していた。テストマーケティングも込めて、初年度は複数のテイストを提案し、敢えて間口を広げていたが、この時からベーシックなアイテムよりもオレンジやグリーンといった主張の強いカラーパレットの商品がよく動いていたという。「他に無いデザインや色が求められていた。ブランドの知名度がまだなかった時だったので、他ブランドにあるようなデザインで勝負しても負ける」(菅井氏)。この気付きが、現在のデザイン路線を追求するきっかけとなり、“生き残っていく”ための強い武器にもなった。
“売れる糸口”が見え始めた2年目、新型コロナウイルス感染拡大が猛威を振るった。日本のアパレル業界は大きなダメージを受けたが、メゾンスペシャルではデザインの効いた独自性のあるアイテムの売れ行きは維持していたという。「ラグジュアリーの国内消費が活発だったように、ファッションにお金を使う人は意外と減らなかった。そういった層にはメゾンスペシャルの商品が深く刺さったのではないか」と菅井氏は分析する。コロナ禍でも稼働が必要だった美容師からの支持も高いという。結果として、コロナはブランドの方向性を定める一因にもなった。
社名変更、新ブランド立ち上げへ 前期(2022年2月期)には黒字化も実現したメゾンスペシャルだが、次のフェーズとして見据えるのは新ウィメンズブランド「プランクプロジェクト(PRANK PROJECT)」の展開だ。
新ブランドでは、メゾンスペシャルとは異なる遊び心のあるエレガンスモードブランドとして打ち出す考え。メインターゲットは30代後半から40代の女性で、メゾンスペシャルよりも上の価格帯を想定する。来年2月上旬には青山と福岡の路面店に売り場の開設を予定している。渡邊氏は「メインターゲットの世代の方々が楽しめるファッションが意外とない、という声も聞く」とし、メゾンスペシャルと同様に「本当に欲しいものを生み出していく」という思いを込めた企業のスローガン「SPECIAL IS YOUR STANDARD.」を体現していく。これに伴い、来年2月に社名もMAISON SPECIALから変更する。