「野球を楽しく!」に方針転換、部員激減から3倍増へ|庭代台ビクトリー

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2022年11月08日 19:40  ベースボールキング

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かつては西武の森友哉選手も在籍し、最盛期には7、80名の部員を誇った大阪府堺市にある『庭代台ビクトリー』。それが3年前には部員が7人まで減ってしまった。原因は指導が厳しすぎたこと。そこでチーム方針を大きく見直したことが奏功し、現在子ども達は22人まで増えた(取材時点)。監督の大下雄平さんにお話を聞いた。



【時代に合わない厳しい指導、部員が7人に減少】
——3年前までは厳しかったそうですが、具体的にはどんなふうに?

ちょっとした中学硬式野球や高校野球の強豪校に通じるような指導でしたね。キャプテンを中心とした縦型社会でしたし、ミスしたことを激しく叱責する、怒声、罵声が飛び交うような感じで「勝利至上主義」といわれる部類やったと思いますね。

——それは根底には、練習が厳しくても勝てば嬉しいはず、子ども達が中学・高校で強いチームに行けるようになど、そういう思いがあって?

そうですね。そういう思いでやっていたと思います。

——部員は段々減っていったのですか?

そうですね。3年前に急激に減ったのではなく徐々に減っていきました。

——厳しい指導はやっぱり今の時代には合わない?

時代も変わってきていますし、学校やご家庭の方針も昔に比べてかなり変わっていますよね。野球チームにいるときだけ厳しいことを言われても、子どもも保護者もそれは受け入れられないですよね。
昔は厳しい指導方針でも子ども達に反発心もあったんですけど、今はそんな方針では子ども達は萎縮して固まってしまう。
ですから時代に合わせた新しい指導方法に切り替えないと、子どもにも保護者にも何一つ伝わらないですよね。

——怒られたりしても「なにくそ!」という部分がなくなっているのは、今の子達が家でも学校でも怒られ慣れていないということも関係しているのかもしれないですね。

昔と同じ感覚で厳しくやっていたら辞めてしまいますし、怖がってチームに入ってこないですからね。うちのチームも数年前まではここら辺では怖くて有名でしたからね(笑)。


【怒声、罵声の禁止、子ども達を追い込まない指導へ】


——平日練習もされていますか?

水曜日にやっています。15:30から2、3時間くらいですね。土日は、今は学校の開放時間が変わった関係で土曜は8:45からスタートして16:30まで練習をしています。
練習時間が長いよう思われるかもしれませんが、午前中だけ練習に参加して午後からは用事があるから帰りますとかでも全然OKです。その辺は全く制限はしていないです。

——方針を変えるにあたってはどのように変えるかなど、コーチ達と話し合ったりされたのでしょうか?

話し合いましたね。このまま厳しい伝統と方針を貫くか、チームの存続を選ぶのか、という会議があって。それで後者を選んだということですね。

——次の練習から方針はガラッと変えられたのですか?

なかなかできなかったですね。難しかったですよ。

——方針を変えたことに対して、保護者の方の反応は?

喜んでくれました。当時は部員が7人で、兄弟で入ってくれているご家庭もあったので、そんなに保護者はいなかったですけど(笑)。

——新しい方針は具体的にはどんな内容になったのでしょうか?

一番はグラウンドでの怒声、罵声を止めようということでした。これはもう徹底してやろうと。あとは子どもを追い込まないということ。昔の子どもを指導していた感覚がどうしても残ってしまいますけど、今の子に合わせていこうと。とにかく子ども達が野球を楽しくできるように、ということにこだわりました。

——方針を変えてみて子ども達に変化などを感じる部分はありますか?

試合中でもそうですし、エラーはOKと言っていますから、できることは全力でいこうと。そういう面では伸び伸びと楽しくやっているかなと思います。


【子ども達に野球を嫌いになって欲しくない】


——7人だった部員は徐々に増えていったのでしょうか?

少しずつ増えていきました。昔はほぼ庭代台小学校の子ども達だったんですけど、今は半分くらいは他の小学校の子どもが来てくれるようになりました。他のチームがちょっと厳しすぎて、こっちの方が楽しそうだからと入ってきてくれる子もいますね。

——今日はコーチの姿がたくさん見えますが、保護者の姿が見えないですね。見守り当番やお茶当番などはないのでしょうか?

お茶当番も含めて、保護者の当番のようなものは何もないです。たまに試合や大会などに参加するために配車のお願いをさせていただくことがあるくらいでしょうか。それもたまにお願いするという感じで毎回ではありません。

——ちなみにこの辺りはサッカー、バスケなどスポーツが盛んな地域のようですが、他のスポーツや習い事との掛け持ちはOKですか?

もちろんOKです。「来週は水泳の大会があるので試合に出られません」とかでも全然いいですし、家族と旅行に行くとか、おじいちゃんの家に遊びに行くとか、それも今しかできないことですからね。

——方針を変えて、試合の勝ち負けの部分では何か変化はありますか?

部員が集まらない時期が続いていましたから、ずっと勝てていませんでした。例えば各学年に10人子どもがいたらそのチームは強いと思うんですけど、6年生と5年生、4年生まで使ってなんとか試合ができるというような人数のチームはなかなか勝てないですよね。それが人数が増えたことで、最近はまたちょっと勝てるようになりましたね。

——チーム方針を劇的に変えられてみて、いま改めて少年野球の担う役割をどう思いますか?

少年野球って、子どもたちが思いっきり野球をやって「野球が楽しかった」と思ってもらって、次のカテゴリーに繋いであげる役割だと思うんです。
野球は基本的には少年野球からみんなスタート。そのスタートで失敗が許されず怒声、罵声を浴びていたらそりゃ野球を嫌いになりますよね。厳しさなどは次のステージで良いと思うんです。

——最後に今後の目標を聞かせてください。

毎年30人以上の部員が入ってきてくれて、強さ、弱さではなく、チームとして見てもらって「良いチームやな」と地域の人達に言ってもらえるようなチームになること。庭代台小学校でも人気のあるような、そんなチームになること。
それがずっと続くようなチームにしていきたいですね。

(取材・文・写真:永松欣也)

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  • 今の子は負けても笑っている…悔しさ・負けず嫌いと言う感情が欠落しているのか?野球(スポーツ全般)は楽しいだけでは試合に勝てない。勝てない試合ほど詰まらないものはない。
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