教員を確保できない「未配置」問題が深刻化 担任不在で「自習状態」「2人体制」も

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2022年11月24日 08:00  AERA dot.

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教員未配置は子どもたちの学習環境を悪化させる。国が推し進める少人数学級の流れに逆行し、2クラス合同授業なども行われている(photo 写真映像部・東川哲也)
 教員不足が深刻化している。現場の負担は増し、病休者らが増える悪循環。学級担任が配置されないケースや授業ができない事態も起きている。2022年11月28日号の記事を紹介する。


【図表】文科省が行った「教師不足の実態調査」結果はこちら*  *  *


 今年4月。首都圏に住む女性(44)が、始業式を終えて帰宅した小4の娘に「今度の担任の先生はどんな先生?」となにげなく聞いたところ、驚くような答えが返ってきた。


「担任の先生はいなくて、2人の先生がみてくれるって」


 ……4月に担任がいない?


 学校からの手紙には、教員が足りず、配置されるまでは教務主任と音楽専科の教員が交代でクラスをみる、といった説明があった。2学年上の娘のときも、3学期に担任が産休に入り、残りは教頭が担任をしたことがあったが、年度初めに教員が配置できないとは……。女性は言う。


「教務主任の仕事はそもそも激務なのに担任も持つのは大丈夫なのかなと思ったし、音楽だけを教えてきた先生が、算数や国語を教えるのってどうなの?と少し不安も感じました」


 その後も担任は配置されず、2人体制は続いている。個人面談では2人ともそろい、話から、一緒にいる時間が限られても娘をきちんとみてくれていると感じられたし、複数担任制のようでメリットも感じてはいる。


「ただ、教務主任の先生は他学年の校外学習や林間学校にも付き添い、本当に忙しそう。さらに2学期には他学年で産休に入った先生がいて、教頭先生も担任をすることに。学校全体がギリギリの状態で、いつ破綻してもおかしくない感じです」(女性)


■年度末になるほど深刻


 教員を確保できずに、「未配置」となるケースが全国の公立学校で相次いでいる。文部科学省も2021年度に初めて「『教師不足』に関する実態調査」を行った。21年度始業日時点の「教師不足」人数は2558人、5月1日時点では2065人だった。


 5月1日時点の小学校教員の不足人数、不足学校数とも最多だったのが千葉県だ。16年8月から県内公立学校の未配置教員数を集計する全教千葉教職員組合書記長の中川晃さんはこう説明する。



「文科省の調査は4月1日と5月1日時点だけですが、教員未配置は年度末に向かってより深刻化します。県内の教員未配置数は年々増え、昨年度末は348人と、過去最多になりました。今年度は10月時点で313人となっており、どんどん教員未配置が増えている状況です」


 全教千葉の集計では、昨年度の県内の未配置数は4月に116人だが、年度末には348人と3倍になった。4、5月のみの文科省の調査では、不足実態を正確に把握できたとはいえず、2000人超という教師不足は「氷山の一角」という指摘もある。


 教員未配置が起きると学校現場はどうなるのか。文科省の調査では小学校の学級担任の代替状況として最も多かったのは「主幹教諭・指導教諭・教務主任」で、43.2%だった。


 千葉県内の小学校で教務主任を務める男性教員(40)は、11月半ばから担任も兼務している。教務6年目にして兼務はすでに6回目だ。特に卒業式の準備や次年度の計画策定などが重なる時期には、学校の階段を上る途中に何度か倒れそうになったこともあった、という。


「今は突然発生する未配置に備え、先行して書類などを作って対応しています。でも年度初めからの未配置になると、もう身を守れない。未配置におびえながらの日々がなくなってほしい」


■小2なのに担任5人目


 県内の別の市の小学校で特別支援学級の担任をしている男性教員(41)は昨年度、同校にある支援級3クラスのうち、2クラスの担任がそれぞれ病休と産休に入り、一時期3クラスを1人で担当することになった。


「仕事量が増えるし、子どもたちの特性もさまざまなので3クラスをみるのは大変でした。特別支援学級は1クラスの人数が最大8人なので、まとめてみられましたが、30〜40人のクラスをもう一つみて、と言われたら無理だと思う。実際、担任が不在になった校内のクラスは入れ代わり立ち代わり先生が入りますが、ほぼ自習状態でした」


 県内の中学校に勤務する女性教員(44)は言う。



「もともとギリギリの人員なのに、未配置や、体調不良で休む先生もいるので、補教(代わりの教員)さえも組めない状況です。授業準備時間がなくなる一方で、事務作業は学級担任がいないクラスの分も負担しなければならない。もう回りません」


 中川さんもこう指摘する。


「この十数年、英語必修化やプログラミング教育、道徳の特別教科化など仕事が増える一方で長時間過密労働を強いられています。さらに未配置の教員分をカバーするために学校現場の負担が増え、その結果心身を病む教員が増えてさらなる未配置を生む。悪循環が起きています」


 教員未配置によって子どもたちの学びも揺らいでいる。


 前出の女性教員が勤務する学校では、7月に社会科の教員が産休に入った後、代替教員が見つからず、2学期からは別の学年を教える再任用の教員が2クラス、60〜70人合同で授業をしているという。昨年度、理科の教員1人が1年間未配置だったときは、他学年の理科教員が授業を受け持ったが、週4時間の授業時数は担当できず、週1時間は自習させていたという。


「自習の補教に入りましたが、私の専門は別の科目なので、生徒の質問に答えられない。生徒たちに申し訳なかったです」


 県内の小学校に勤務する男性教員(38)もこう話す。


「音楽の先生が産休に入った後、未配置になったので、音楽の授業も私が担当しています。3学期には書写専科の先生も産休に入る予定ですが、専科の先生と比べたら、どうしても授業内容が劣ってしまう」


 筆者の息子が通う千葉県北西部の小学校でも教員未配置問題は深刻で、まだ小2ながら、担任はすでに5人目。担任不在の期間もあり、校内の先生が代わる代わる授業を担当していたが、自習状態の時間もあったという。


 中川さんは言う。


「本来配置されなければならない教員が配置されないのは、学校教育法にも違反していますし、憲法が保障する子どもの教育を受ける権利も侵害しています」


■千葉で「県民の会」発足


 学校教員需要や採用を研究する兵庫大学高等教育研究センターの山崎博敏教授はこう話す。


「2010年頃から、団塊世代の大量退職にあわせて教員需要が増加しましたが、各自治体は採用を増やしたものの、欠員をすべて正規教員で補充せず、非正規教員で補ってきました。教員の世代交代が進んで若手教員が出産期を迎え、35人学級の実施でさらに教員需要が増えることから、教員の未配置問題はしばらく続くと考えられます」



 未配置を解消させるには、教員の採用を増やすことが第一の解決策だが、各自治体は将来の少子化に備え、採用を増やすことに及び腰だ。そんな中、千葉県内では今年7月に「教員未配置を考える県民の会」がつくられ、県の責任で改善措置を早急に講じることを求める署名活動も展開。県教育委員会は10月までに行った23年度の小学校の教員採用選考で前年度より136人多い914人に合格を出した。事前に公表していた募集人員は前年度より20人減の620人だったが、方針を転換させた格好だ。県教育委員会の担当者は取材に「来年度の教員の必要数を計算した結果」と説明する。(編集部・深澤友紀)

※AERA 2022年11月28日号より抜粋


このニュースに関するつぶやき

  • なりてが居ないのは当然で、上が責任逃れ、現場は一杯一杯で過労の連続、文科省(に限らず省庁の上から順にバカランキング状態)は馬鹿の集まりとなれば、そりゃ…。
    • イイネ!7
    • コメント 2件

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