女性だからという理由で不都合は感じない “aiboドック”に携わった社員の働き方に見たソニーの先進性

0

2022年11月27日 11:00  AERA dot.

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

AERA dot.

清田友理香(きよた・ゆりか)/1988年生まれ。2011年、ソニー(現ソニーグループ)入社。専門はHCD(人間中心設計)。aiboなどを支えるクラウドサービスの開発などに取り組む(photo 写真映像部・東川哲也)
 ソニーグループが営業利益1兆2023億円(2022年3月期決算)をたたき出した。営業利益1兆円超えは国内製造業ではトヨタ自動車に次ぐ2社目だ。家電の不振から復活した原動力は、そこで働く「ソニーな人たち」だ。


 短期集中連載の第2回は、“リケジョ”の清田友理香さん(33)。結婚、出産、復職と、様々なライフイベントをこなし、開発の最前線で働く。そこには気負いも背伸びもない。彼女の生き方には、ソニーの素顔が垣間見られる。2022年11月28日号の記事を紹介する。(前後編の後編)


【写真】清田友理香さんの写真をもっと見る*  *  *


“リケジョ”といっても、女性が企業で働き続ける際、大きな壁となるのが、出産や子育て、介護といったライフイベントだ。清田もまた、2016年10月に出産後、2年間の育児休暇を取得した。


 当時、夫も育休を取得した。長い休職も可能だったが、検討した結果、夫は産後1カ月間の休暇に加え、必要に応じて育休を使って休むことにした。


 国内の共働き家庭の数は、近年、専業主婦家庭の2倍をこえている。その意味で、清田のように夫婦がフルタイムで子育てをしながら働くことは珍しくない。清田にとっても、出産を経ても働き続けることは、ごく当たり前のことだった。入社当初から、多くの子育て先輩のロールモデルがいた。


「入社したての頃、『子どもが風邪をひいたので有給休暇をとります』というようなメールが朝から送られてくることに驚いたんです。仕事ってそういう理由でも休みづらいと思い込んでいたので、衝撃的でしたね」


 と、語る。


 彼女は、復職タイミングの近い社員を集めたイベントに参加した。家族や上司も同席し、講師からは、働き方や今後のキャリアについて上司と情報共有することの大切さや、上司に対してサポートを促すメッセージがあったという。周囲を巻き込んでサポート体制をつくることで、復職者を孤独にしないのだ。


 清田は、10人ほどの開発チームの中で、女性は2、3人という少数派の環境で働くことが多い。それでも、「この職種で、かつ女性だからという理由で、不都合を感じたことはないですね」と、さらりという。


■夫婦の負担は「等分」


 国内では、そんな環境の企業はまれだろう。「ソニーは働きやすいんじゃないですか?」と聞いてみた。


「世の中で話題になることに対して、ソニーのほうがだいぶ先行して取り組んでいる印象ですね」という。


 清田の娘は、現在6歳だ。ソニーでは、コロナ禍の前から月に10日のリモートワークが認められていた。夫婦で10日ずつリモートワークをすれば、1カ月間、ほぼ毎日どちらかが自宅で仕事をすることができた。そして、在宅勤務をする方が、保育園の送迎や夕食の支度を担当した。


 コロナ禍に入り、リモートワークの日数の上限がなくなったことで、清田は出社することはほとんどなくなった。朝、保育園に子どもを送った後、帰宅してPCを開き、仕事を始める。月金は清田が5時から5時半の間に仕事を終え、子どもを迎えにいって家事育児をする。火木は夫が早く仕事を切り上げる。その日は、清田は在宅残業が可能で、子どもの世話や夕飯は夫に任せることができる。


 女性の社会進出が進んだ現在でも、これほど夫婦の家事育児の負担を「等分」に分ける夫婦は珍しいのではないだろうか。ともにタフな仕事に就きながらも、仕事と家庭を両立できるのは、互いの仕事を尊重しているからだろう。


 清田は現在、社内で二つの業務を掛け持ちする。一つは、ソニーグループモビリティ事業室クラウドサービス開発部でのaibo(エンタテインメントロボット)、Airpeak(ドローン)、VISION−S(EV)などを支えるクラウドサービスの開発だ。


 もう一つは、同R&Dセンター Tokyo Laboratory 17での、クラウド関係やデータ分析の業務である。前者が「主務」でメイン、後者が「兼務」で、いわばサブの業務である。


 仕事は変わらず、「HCD(人間中心設計)」に携わる。aiboでは、人間ドックさながらの“aiboドック”のサービス開始に携わった。ユーザーの気持ちや、面白がってもらえる体験を考え、aiboの検査項目や検査結果のカルテの仕様を練った。例えばaiboの「瞳」は「眼科」、「鳴きごえ」は「耳鼻咽喉科」の説明がある。こうした細かい調整や気の利いた工夫が、UX(ユーザーエクスペリエンス=顧客体験)を高めていく。



■気負いも背伸びもない


 かつてのように、商品はつくって売って終わりではなくなった。スマホはもちろん、aiboもクルマも、購入後のアップデートによって機能や価値が向上し、ユーザーとの関係を深めていけるような商品へとシフトしているのだ。その最前線で、清田は働いている。ただし、清田には、子どもを育てながらキャリアアップを目指すという気負いや背伸び、無理をしている感じがない。


「ラッキーなことに、やりたいことがずっとできているので、これからも『人間中心』を一本の軸にしていきたいと思っています。でも、製品の種類にはこだわらず、いろんなものに携わるほうが私は好き。その意味で今の部署は色んなことをやっているので、楽しめていますね」


 と、微笑んだ。(文中敬称略)(ジャーナリスト・片山修)


>>【前編の記事はこちら】女性社員がソニーに「人間中心設計」を根付かせた 「変化に挑戦」「自分の成長を逃さない」企業風土が後押し

※AERA 2022年11月28日号より抜粋


    前日のランキングへ

    ニュース設定