
引きこもりの子ども、介護が必要な母も抱えた状況でリタイアできる?
皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。今回の相談者は、妻亡きあと一人で子どもを大学まで出した59歳会社員。その子が引きこもりになってしまい、介護が必要な母も抱えた状況でリタイアできるか心配とのこと。ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんがアドバイスします。
相談者
MKさん(仮名)男性/会社員/59歳
持ち家(一戸建て)
家族構成
長男(30代)、母親(80代)相談内容
30年前に妻と死別し、一人で長男を育て、大学まで行かせましたが、引きこもりになり、また母親の介護をしています。会社の理解で仕事も続けさせていただいています。60歳以降は、会社の再雇用制度を1年利用する予定で、2年目からどうするか決めていません。年収契約で年間手取りは300万円くらいでしょうか。定年後も現役と仕事内容が同一できつい仕事のため、リタイアしたいです。
子どもにも死後3000万円残したいと考えています。リタイアできるでしょうか。よろしくお願いいたします。
|
|
家計収支データ
MKさんの家計収支データは図表のとおりです。
家計収支データ補足
(1)住居費について住宅ローンは完済。固定資産税は、土地建物あわせて年間14万5900円。リフォーム費用は、約1000万円予定。すぐする必要はとりあえずなし。
(2)車両費について
車は1台。月当たりガソリン代1万円、年間:自動車保険4万円、自動車税3万4500円。2年後に軽自動車に買い換える予定。
(3)ボーナスの主な使い道について
固定資産税、自動車関係の税金と保険料、長男の国民年金20万円、投資信託14万円、貯金90万円など。
(4)退職金について
退職金は1450万円の予定。
|
|
<貯蓄2650万円の内訳>
・銀行預金、郵便貯金、MMF、MRFなど
<投資4000万円の内訳>※時価評価額
・株式、投資信託、金貨
(6)家族について(相談者コメント)
母親は自宅介護(週4日デイケアサービス)しています。介護費用医療費は母の年金から支出。私が負担しているのは食費7万円と介護雑費1万円です。母から相続する財産は特にあてにしていません。
母名義の預貯金および現金1500万円あり、遺族年金、障害者年金あわせて年160万円ありますが、施設に入居する際の費用と考えています。
(7)年金について(相談者コメント)
ねんきん定期便によると65歳以降194万9691円/年で、手取りは、健康保険・子どもの年金保険料を引いて65歳以降145万円くらいです。61歳以降は年金財形と貯金を取り崩す形になります。
FP深野康彦の3つのアドバイス
アドバイス1:年金と貯金の取り崩しで老後資金は問題なしアドバイス2:子どもに残す予定のお金の一部は終身保険への加入を検討してみて
アドバイス3:仕事を辞めても問題ないが、生活のバランスを崩さないよう徐々にリタイアして
アドバイス1:年金と貯金の取り崩しで老後資金は問題なし
奥さんと死別された後、おひとりでお子さんを育て大学まで出したうえに、お母さんの面倒も見られていてとても立派ですね。現状はお子さんが引きこもりになってしまって本当にお辛いと思います。現在の仕事を定年後も再雇用でとりあえず1年継続されるとのことで、61歳までと考えているようですが、仕事内容がきついようでしたら60歳で定年退職しても経済的には大丈夫です。
|
|
まず、MKさんの希望ではお子さんに3000万円残したいとありますが、これは問題ないでしょう。この分を別にとっておくと残りは6160万円。これがMKさんの老後資金となります。
現在、MKさんの生活費は月々18万8000円です。今後も同じ水準をキープするとして必要な年間生活費は少し余裕をもって月20万円と考えた場合、年間240万円必要となります。
そうすると仮に今、仕事を辞めた場合、年金をもらい始めるまでの5年間で1200万円取り崩すことになります。65歳に満額の年金をもらい始める段階で手持ちの老後資金は約5000万円になります。
65歳以降は年金が約145万円とのことなので、毎年100万円ぐらいずつ取り崩していけば済むので100歳まで取り崩しても資金不足になる心配は全くありません。
自宅のリフォームに1000万円ぐらいの予算をお考えのようですが、これも問題なくできるでしょう。また、車の買い替えも軽自動車でしたら150万円ぐらいでしょうか。これも大丈夫ですよ。
アドバイス2:子どもに残す予定のお金の一部は終身保険への加入を検討してみて
それよりMKさんは金融資産をかなり持っているので、いざというときにお子さんに相続税がかかる可能性があることを考慮しておいたほうがいいですね。お子さんに資産を残す方法の一つとして、終身保険に加入することも考えてみてください。死亡保険金はほかの相続財産とは別に「500万円×法定相続分」の非課税枠があります。
MKさんは保険に入っていないようですので、非課税で資産を残す方法として3000万円の一部を終身保険で準備することを検討してみてください。それ以外にもできれば途中で生前贈与を少し行っておいたほうがいいと思います。
アドバイス3:仕事を辞めても問題ないが、生活のバランスを崩さないよう徐々にリタイアして
お母さんを自宅で介護しているとのことですが、お母さん自身も現預金が結構あるようですし、年金も160万円もらっているとのことなので、今後の介護費用の心配もなさそうですね。このように経済的な面からみると今すぐ仕事を辞めても問題ないですが、仕事をやっていることで金銭面以外に生活のバランスが取れている面もあると思います。辞めるにしても全く働かないのではなく、社会との接点を持っておいたほうがいいかもしれませんね。
また、家計管理もしっかりされていて、金銭的にも余裕がありますので、もし息子さんの状況が許すようなら一緒に旅行などに出かけられるといいですね。
相談者「MK」さんから寄せられた感想
深野先生、アドバイスありがとうございました。保険について払込が済んでいますが、結婚時に加入した終身保険のことを忘れていました。また再雇用の契約を済ませましたので、仕事ももう1年はがんばってみようと思います。あまり悲観することなく。健康に留意し、前向きに生きていこうと思います。
教えてくれたのは……深野 康彦さん
マネープランクリニックでもおなじみのベテランFPの1人。さまざまなメディアを通じて、家計管理の方法や投資の啓蒙などお金周り全般に関する情報を発信しています。All About貯蓄・投資信託ガイドとしても活躍中。
取材・文:堀内玲子
(文:あるじゃん 編集部)