ゲームクリエイター・ヨコオタロウが描く“飯テロマンガ”?「血なまぐさい話」でなく「吉野家の牛丼」を描いたワケ

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2022年11月28日 07:00  ORICON NEWS

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LINEマンガで連載中の『吉野家兄弟』原作:ヨコオタロウ/漫画:秋鹿ユギリ(C)Yugiri Aika・YOKO TARO/LDF
 マンガの中でも定番で人気のあるジャンルのひとつ、グルメ。食べる、作るなど様々な切り口の作品が誕生し、名作と呼ばれるものもある。最近では、異世界ものなど多様性も見せている。そんな中、LINEマンガで連載中の『吉野家兄弟』は、『ドラッグ オン ドラグーン』や『NieR』シリーズで知られるゲームクリエイター・ヨコオタロウ氏が原作を手掛ける作品。「あのヨコオさんが原作!?」「なぜ牛丼マンガを?」とゲームファンからも驚きの声が上がった同作へ込めた思いとは。

【漫画】この“牛丼絵”はヤバイ! 読んだら絶対食べたくなるやつ… “飯テロ”すぎるマンガ

■血なまぐさい話とは真逆、ほのぼのヒューマンドラマ描く難しさ

 ヨコオさんは、神戸芸術工科大学を卒業後、ナムコ、ソニー・コンピュータエンタテインメントを経て、ブッコロを立ち上げ。同社代表取締役兼ゲームディレクターとして活動している。『ドラッグ オン ドラグーン』『NieR』シリーズや『Voice of Cards 囚われの魔物』などのゲームに携わりつつ、マンガ『君死ニタマフ事ナカレ』や舞台の原作なども手掛けている。

――今回の『吉野家兄弟』はタイトルの通り『吉野家』が舞台のヒューマンドラマものであり、これまで先生が担当してきたゲームのジャンルとはテイストが異なるお話ですね。クレジットを見た読者からも驚きの声が上がっていました。

【ヨコオタロウさん】今作は普段やっているジャンル、作風、その全てが大幅に異なる内容です。ですので、正直言うとゲームファンの方は『吉野家兄弟』に興味を持っていただけないと思っていました。が、話題にしていただき、嬉しく思います。いつも支えていただき、ありがとうございます。

――グルメジャンルであり、ヒューマンドラマを描こうと思ったきっかけは?

【ヨコオタロウさん】本業(ゲーム制作)では、バトルアクションRPGを作ることが多く、血なまぐさい話になりがちです。そんな一方、自分は以前からグルメマンガが好きで、いつか手掛けてみたいと思っていました。グルメマンガにも様々な描き方がありますが、今回大好きな吉野家さんをテーマさせていただけることになり、人と人の繋がりという点を中心にすることを決めた次第です。ゲームとは違う難しさがありますが、楽しく書かせていただいています。

――これまでにもゲームのシナリオや原作も担当したことのある先生ですが、「ゲームとは違う難しさ」とはどんなところにありますか?

【ヨコオタロウさん】まず大きく違うのは「文字数の制約」です。ゲームは文字数に制限があることが少ないですし、文字でプレイ時間を稼ぐ目的もあるので長文になりがちです。一方、マンガでは吹き出しの中に入る文字数に制約があり、読みやすさのためにも、コンパクトにしなければならない部分には気を遣っています。

――作画についてはどうですか。

【ヨコオタロウさん】マンガは画面レイアウトの自由度がゲームよりも高く「絵で見せる」という演出が可能なので、なるべくそうしたマンガならではの良さを出したいと感じています。といっても、描くのは秋鹿ユギリ先生で、僕は待ってるだけですが。

――逆にゲームとマンガ、似ている点はありますか?

【ヨコオタロウさん】ストーリーテリングの構造としては、ゲームで培った仕組みを使うことが多いですね。特に「新キャラクターをあまり一気に登場させない」や「前知識がない人でもわかる」といった、読みやすさ・理解のしやすさはゲームとマンガ共通でやらなければいけないことだと思います。また、キャラクター造形も「自分が一緒に居てイヤじゃない人」という感じで描いています。長時間ゲームを遊ぶときも、『吉野家』に行くときも、イヤな人とは同行したくないですから。

■“読む→食べる”のアクションがゲームでは得られない価値に

 同作は、読んで終わりとならず、グルメマンガであるゆえに読んでいる最中や後に『吉野家』に行きたくなる・食べたくなる…というアクションにつながるのも特徴だ。先日発売されたコミックス1、2巻には、実際に店で利用できるデジタルギフトが特典となっていた。

――今作は企業タイアップでないにも関わらず、タイトルに店名を入れたり『吉野家』を舞台にしていたりと、全編通して“吉野家リスペクトマンガ”に振り切っていますね。

【ヨコオタロウさん】連載企画を立ち上げる時、編集さんに対して「吉野家さん以外だったらこの企画はやりません」「新商品を紹介するマンガにしません」という2つのお願いをさせていただきました。長年『吉野家』の牛丼を食べ続けていた自分が、納得出来る内容にしたかったためです。こうしたワガママを、編集さんと吉野家さんにご快諾いただき、連載を始められたことを感謝しています。

――過去のインタビューで先生は「ゲームはユーザーが体験することに価値がある」とおっしゃっていました。その考えはマンガでもいえることですか?

【ヨコオタロウさん】プレイヤーの自由度を高くできるゲームに比べ、コミックは基本的には一直線の物語しか描けません。ただ、おっしゃる通り「『吉野家』に通っている方が読む」「読んだ方が、『吉野家』へ牛丼を食べに行く」という現実世界とのつながりは、ファンタジーRPGでは出来ないことですので、読んだ方は吉野家さんに行ってみていただきたいですね。

――親しみのある店だからこその面白さがある反面、PRマンガだと誤解される可能性もあったのでは? 作品をスタートすることにためらいはありましたか。

【ヨコオタロウさん】PRマンガと誤解されることは予想していましたが、そこを危惧して不必要なドラマを付け加えることはしたくありません。正直に作り、嘘のない作品であると伝えることが大事じゃないかな、と思っています。

■学生時代に食べていた牛丼と大人になってから食べる牛丼、「向き合い方が違う」

 『吉野家』に集まる様々な人間模様も描かれる同作。ストーリーの軸となるのは、38歳会社員・小柳翔平と17歳高校生・水島康夫の2人。彼らは仲が悪い訳ではないけれど、どこか距離のある「義兄弟」という設定だ。ヨコオ氏がキャラクターに込めた思いとは?

――ひと癖ある“義兄弟”がストーリーの中心となっていますね。こうした設定にしたこと、それぞれのキャラクターを描くうえで心がけたことはありますか?

【ヨコオタロウさん】「吉野家の牛丼」は、単なる食事を超えて、世代を超えて認知されている風景ですから、様々な側面で切り取ろうとした結果、高校生とサラリーマンのキャラクターを登場させました。

――「ヒューマンドラマ」としても描きやすかった?

【ヨコオタロウさん】これは自分自身の経験から来るものなんですが、学生時代に食べてた吉野家の牛丼と、大人になってから食べる牛丼に対しては、向き合い方がやはり違うんですよね。お腹を満たしたいだけの学生時代、忙しいサラリーマン時代、余裕が出来てからのフリーランス時代、と時代と状況に合わせて感じ方も変化しました。小柳と水島の2人のどこかに、読者の皆さんの風景が見えるといいな、と願っています。

――牛丼の食べ方や、それぞれの食べっぷりにも惹かれますし、だんだんと周りの人物(店員さんなど)も気になってきます。物語を進行していくうえで、細かいことだけどココに注目してほしい!というポイントはありますか?

【ヨコオタロウさん】日本全国にチェーン展開している『吉野家』には、様々な側面があります。店員さんはもちろん、サラリーマンから学生、家族や酔っぱらい…そんな異なる立場の人たちが訪れる場所でもあります。単なるグルメマンガというより、『吉野家』という場所を通して、いろんな人生に興味を持っていただけると嬉しいです。

――義兄弟が紡ぐ絆をはじめ、今後の見どころも気になるところです。

【ヨコオタロウさん】あの2人は明るく元気なキャラクターですが、それぞれ少しだけ、心が傷ついて欠けてしまっている部分があります。その欠落に、どうやって折り合いをつけて生きていくか。そして、2人の暮らしがどうなっていくかを見ていただけると嬉しいです。

――もともと先生のゲームのファンだったり、本作のようなグルメマンガのファンなど、読者へ向けてメッセージをお願いします。

【ヨコオタロウさん】せっかくの機会ですので、グルメコミックを普段読まない方にも読んでいただきたいです。そして、『吉野家』の牛丼に興味を持っていただけたら、作者冥利に尽きると思っています。

――今後描いてみたいストーリー、マンガに限らず表現したいものなどがあれば教えてください。

【ヨコオタロウさん】今後描いてみたいストーリーとかは特にないですね…。下請け仕事が多いので、基本的にはお話を頂いてから考えることが多いので。そういう意味では自分から「やりたい」と言った『吉野家兄弟』は珍しい作品な気がします。残りの物語を完走できるように、がんばりたいと思います。

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  • どうせ赤い少女が世界を崩壊させて、鬱展開が続き、最後は人類滅亡ENDで「本当に本当にありがとうございました!」って言うんだろ。そんなヨコオタロウが大好きです。
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