消費者不在の「デジタルプラットフォーム叩き」は国民にメリットがあるのか

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2022年11月28日 16:22  ITmedia NEWS

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 日本国内で「GAFA」に言及が始まったのは、2016年8月に日経新聞の解説記事「ガーファを知ってますか」あたりが最初であろう。同年9月に公表された経産省「第四次産業革命に向けた横断的制度研究会報告書」にも



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 “デジタル市場で急成長を遂げたGAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon)のようなプラットフォーマーは、(中略)その競争優位が固定され、支配的地位となっている可能性が懸念される”



 との言及が見られる。このあたりから次第に政府の中でも、国外のデジタルプラットフォーマーを「脅威」と見なすようになったようだ。



 こうした脅威は、GAFAの独占的支配により、国内のサービスがうまくいかない、成長が阻害される、利益が吸い上げられるといったビジネス文脈のほか、個人情報やAI、クラウドサービスがGAFAに集中しているがそれで大丈夫かといった、知識知的財産文脈がある。市場原理による競争が起こらない場合には、GAFAに対してなんらかの規制や国による介入が必要なのではないか、という話が水面下で動き始めた。



 一方でGAFAを通じてサービスを受ける消費者側からすれば、彼らの独占性から来る具体的なデメリットはあまりなく、むしろ大量の消費者を味方に付けて支持を得ているが故に、消費者保護には熱心であるという側面がある。それがゆえに、事業者泣かせであるとの評価にもなってくる。



 デジタルプラットフォーマーの問題を語るには、それらを利用してビジネスを行なう事業者の保護と、GAFAを通じてサービスや商品提供を受ける消費者保護の両方のバランスで見ていく必要がある。



●「デジタルプラットフォーム取引透明化法」の立ち位置



 デジタルプラットフォーマーの透明性や公平性の向上を測るため、令和2年に「デジタルプラットフォーム取引透明化法」が制定された。所管は経済産業省である。これはデジタルプラットフォーマーに対して、定期的に運営状況の報告を義務付け、大臣が評価を行なうというものである。その前には、関係者や学識経験者からなる「モニタリング会合」から意見を聴取し、それを参考に組み立てられるという流れだ。



 法律制定後の令和3年度に、対象となるプラットフォーマーから初めての定期報告書が上がってきた。対象となるのは、総合物販オンラインモールとして、Amazon、楽天市場、Yahoo!ショッピングの3事業、アプリストアとして米AppleのApp Store、米GoogleのGoogle Playストアの2事業である。



 これをレビューしたドラフトが2022年に上がってきて、それに対してのパブリックコメントの募集が始まっている。期限は12月11日いっぱいとなっている。



 特定デジタルプラットフォーム提供者に期待される取組みとは、以下のようになっている。



・デジタルプラットフォームを提供する条件の変更等、利用する事業者に影響を与える行為は、あらかじめ利用事業者に与える影響を考慮して、適切に対応すること(利用事業者からみて分かりやすい内容・理由の説明、時間的余裕を確保した上での通知、一貫性・公平性のある判断等)



・ 利用事業者からの苦情・相談や異議申立て等にしっかりと耳を傾け、適切に対応すること



・ 運営改善につながる仕組みを構築するとともに、継続的に運営改善に努めること



 これらに対してどのように取り組んだか、各事業者がレポートを上げてくるわけだが、ものすごい量だ。Amazon93ページ、楽天26ページ、ヤフー60ページ、Google19ページ、Appleに至っては255ページという超大作である。法に基づいてこれを毎年出せという話だから、大変である。



 これに対して評価し、今後の方向性として以下の3つが示されている。



1. 特定デジタルプラットフォーム提供者による自主的な運営改善



2. 自主的な手続・体制整備に関する「指針」の改定



3. 強制力ある介入方策の検討 透明化法の枠組みや既存法令



 1は、本評価を踏まえて継続的に自主的な運営改善をやってねという話、2は経済や社会情勢に応じて、経済産業大臣が求める指針はどんどん見直されますよという話、3はこの法で対応が難しいものについては、強制力のある介入をしていくかもしれませんよ、という話である。



 ただ3については、まだ法律が動いて初めてのレポートが上がってきて、そのレビューも初めて出るという段階で、もう強制力のある介入、いわゆる法規制を検討するというのはちょっと早すぎるだろう。まだレビューの結果を踏まえて各事業者の自主的改善も行なわれていない。つまり、まだ1回転していない。この法律は独占禁止法のサブセット的に機能するものと想像するが、これではサブセットどころか、第2の独占禁止法になろうとしているという懸念も出てくる。



●「アカウント停止」でさよなら、でいいのか



 11月中旬、違法なAmazonギフトのせいで、Amazonのアカウントが凍結された話がネットで大きな話題となった。これは消費者側に非はなく、誰にでも起こりうる話で、多くの利用者が恐怖した。



・違反アマギフのせいでAmazon関連サービスが全滅した話



 この件を、単純に違反ギフトを使ったならアカウントが凍結されるのは当然だろうと誤解している人も多い。違反ギフトだと知ってて使ったのならそうだろうが、違反ギフトを誰かからプレゼントされて、それを知らずに使ったという話である。ギフトコードは単なる番号の羅列であり、利用者はそれが違反なのかを判断する材料はない。



 アカウントにギフトコードをチャージする段階でなんらかのチェック機構があるなら、その時点でわかったはずだ。だが、チャージする段階ではそのまま登録できてしまったようだ。



 Amazonで買い物してギフト券から支払いをすると、ギフト券は期限が早い順に消費される。つまり他にもチャージしていたギフト券があり、それから先に消費されると、違反コードはアカウント内に蓄積された状態になる。そしていつの日かそれが使われた段階で、時限爆弾のように破裂して利用者のアカウントが止まるので、利用者はなにが原因で停止されたのか分からない、という話なのである。



 Amazonのアカウントが凍結されると、それまでチャージしてあった他の健全なギフト券残高も没収される。またKindleで購入した書籍は全て読めなくなり、Amazon Photoにアップした写真もアクセス不可となる。つまり、購入したり預けてあった個人資産が、一瞬にしてパーになるというリスクがある。



 アカウント凍結によりAmazonとの接点もなくなってしまうため、それ以降の交渉手段がなくなってしまうのも、消費者保護という観点からは問題があるように思える。また消費者センターも頼りにならず、弁護士もさじを投げるようなタイプの案件であるようだ。



 本来処罰されるべきは、違反ギフトを発行した者である。それを消費者に十分な説明もなく、一方的に責任を負わせているという事象が、「デジタルプラットフォーム取引透明化法」の射程に入っていないというのはおかしい。現在この法では、消費者に対しての開示事項として、検索に関しての公平性しか見ておらず、消費者保護とのバランスが非常に悪い。



●消費者がデジタルプラットフォーマーに求めるもの



 個人的な話になるが、筆者は海外の通販事業者からモノを買う際には、可能な限りPayPalを経由するよう心掛けている。もし詐欺やニセモノなど不当な取引に巻き込まれた際に、いち個人がよく知らない事業者に対して、英語や中国語で直接クレームを入れてやりとりするのは、並大抵のことではないからだ。PayPalを経由していれば、苦情を日本語でPayPalに申し立てることで、払い戻しなど事業者との面倒な交渉はPayPalが代行してくれる。



 われわれ消費者がデジタルプラットフォーマーに期待するのは、そういうところも大きいのではないだろうか。例えばアプリにしてもゲームアイテムにしても、何かトラブルがあって払い戻しを求める際に、名も知らぬアプリデベロッパー相手に英語や中国語で何週間もかけてやりとりした揚げ句、日本と現地では法律が違うみたいな話で逃げられるのであれば、おちおちアプリなど買っていられない。



 そこはデジタルプラットフォームが間に入って、払い戻しなどを日本の法と慣習に基づいて保証してくれるからこそ、われわれは多彩な事業者が提供するモノやサービスを購入できる。このあたりの評価も、きちんとなされるべきであろう。



 例えばApp Storeは、消費者からの返金リクエストの受付期間を他社よりも長い60日としている。これはクレジットカード決済だった場合、不当な課金を請求が来て初めて知るといったケースもあることから、消費者保護としては妥当である。もし受付期間が短かったら、請求が来てから気づいてもあとの祭りで、あとは個人でデベロッパーと交渉していくという事になる。



 この点はもっと評価されてもいいはずだが、レビューにはさらりと事実のみが書かれているだけでさらなる改善要求が突き付けられるという、「叩き」になっている。



 こうしたプラットフォーマーに対する事業者保護については、以前もお伝えしたように内閣官房デジタル市場競争本部事務局の「モバイル・エコシステムに関する競争評価」でも行なわれており、同じような規制路線を省庁を変えて二重三重にやる意味がどこにあるのか。もう少し隣で何をやってるのかちゃんと見ろ、という話である。



 レビューとは、良いところもきちんと評価して競争を促すという役割もあるはずだが、基本的に「叩き」にしかなっていない本レビューは、プロレビュワーである筆者が点数を点けるならば、赤点である。まだ1回目で勝手が分からないということかもしれないが、少なくとも「モニタリング会合」の委員に消費者代表がゼロという座組から、もう一度考え直してはどうだろうか。


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