2018年の西日本豪雨で冠水した岡山県倉敷市真備町周辺。最近は保険金が請求しやすくなり、専用アプリやLINEで請求できる会社もある 災害にあったとき、被害の程度に応じて国と都道府県から支援金が支給されるが、保険への加入も検討したい。2022年11月28日号の記事を紹介する。
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公的制度だけに頼らず、保険にも加入しておきたい。ただ、注意が必要だ。岡山県倉敷市真備町の会社員、野瀬珠美さん(36)は身をもって感じている。
18年6、7月に西日本豪雨があったとき、木造2階建ての自宅は新築してたった2カ月。水は2階の床上1メートルまで上がってきた。夫と乳幼児2人と屋根に避難して助かった。
自宅は全壊と判定され、公費解体した。土地代、建設費を合わせて3500万円の住宅ローンだけが残った。
火災保険には加入していたが、水災補償を付けていなかった。
大きな川は近くないし、家まで水が来るとしたら町中が水浸しになる──。まさかと思っていたが、現実になった。
保険金は一切下りなかった。ローンを返済しながら、新しい生活を始めるのは無理。「被災ローン減免制度」は年収制限など厳しい条件がある。利用は難しいと覚悟したが、弁護士らが借入先と交渉してローンを980万円に減らすことができた。
「ローン減免できなければ、自己破産するしかないと思っていました。保険にしっかり入っておくべきでした」(野瀬さん)
一般的な火災保険では火災だけでなく、落雷や風災、水災による損害も補償することが可能だ。だが、野瀬さんのように補償を選択しなければ保険金は支払われない。ファイナンシャルプランナーの清水香さんは言う。
「生活基盤に深刻なダメージを与える恐れのある風水災や地震には、保険で十分な補償を確保する必要があります」
ただ、水災被害が増えて甚大になったのに伴い、水災補償の保険料は値上がりしている。
「保険料を安く見せるために、補償を小さくした商品もあります。価格だけで選ぶと自分に必要な補償を得られない可能性があります。リスクが正しく認識されておらず、ここ10年は水災補償を付帯する人が減っているという統計もあります」(清水さん)
公的な支援制度も保険も内容が複雑だ。大分大学減災・復興デザイン教育研究センター長の鶴成悦久教授は言う。
「災害が発生したとき、ニーズが高まるのが弁護士や専門家への相談です。防災を徹底するのは難しいのですが、平時に行政の支援制度や保険の契約内容を知って被害を最小限にとどめることも減災の一つです」
(編集部・井上有紀子)より抜粋