『silent』目黒蓮のハグシーンが回収する温かさ、視線の会話と“まっすぐ”な言葉

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2022年11月28日 18:10  ドワンゴジェイピーnews

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声も、手話も、どちらでもなくても…

1週お休みとなった木曜劇場silent』(フジテレビ系)。第7話ラストシーンの突然のハグというドキドキする余韻を残しているが、このラストシーンもまた、第7話で描いてきたことの一つの答えのように感じている。




「開始1分」をトレンド入りさせた第7話冒頭には、青羽紬(川口春奈)、佐倉想(目黒蓮)、桃野奈々(夏帆)がいた。セリフはない。想の前で泣く奈々。少し離れたところからそれを見ている紬。紬はつらそうな顔で想を見つめ、想が気付いて紬に目をやる。その視線に気づいて、奈々が紬の方を向く。奈々の視線を受けて、紬は気まずそうに目を逸らし、去っていく。紬の背中を想がやるせない思いで見つめながら、反対側に歩いていく奈々を目で追いかけるものの、奈々が振り返って見たのは、紬のもとに駆け寄る想の背中だった。悲しい視線を落として歩き出す奈々の背中。この1分30秒間で視聴者が号泣してしまうほど、三者それぞれの飲み込んだ思いや届かない気持ちが視線と背中で表現されていた。


そんな始まりから、第7話で描かれたのは、想と奈々の関係の着地点のようなもの。第6話で想と奈々の出会いが描かれ、耳が聞こえなくなった想に「音のない世界は悲しい世界じゃない」と未来を照らし、「聴者もろう者も同じ」と言って“同じ”という意味の手話を教えた奈々の存在の大きさを理解する。しかし第6話ラストで奈々は、聴者もろう者も中途失聴者も「誰も分かり合えない」と言い、叶わない夢や聞こえない現実に涙していた。それをもう一度、丁寧に、あたたかく修復してれたのが第7話。サブタイトルは「自分にだけ飛んでくるまっすぐな言葉」。


序盤は“まっすぐ”ではなかったように思える。
公園のベンチで紬は想に「(奈々と)何話したの?」と聞かれ「大丈夫」と答える。奈々が泣いていたのは「私のせいかもしれなくて。分かんなくて」とつぶやくものの、想には伝わらない。「関係ない」と言われ、想は巻き込んで申し訳ないという気持ちで言った言葉も、紬にはどこかひっかかる。ファミレスでは、想がメニューを見ている時に「よく話したよね…」とつぶやく紬。想に「声でしゃべらないの 何で?」と尋ねると、空気が変わる。紬は理由があるのか気になっただけだが、想はスマホに「声が好きなんだもんね」と打って、紬には見せずに打った文字を消去する。届けるのをやめて引き返したり、思ったように届かなかったり。それが聴者とろう者の“同じでない”難しさにも見えた。

しかし紬は、湊斗(鈴鹿央士)や真子(藤間爽子)と話すなかで「嫌なことの理由って わざわざ言いたくないこともある」「少ないって“いる”ってこと」という客観的な視点を素直に受け取って、まっすぐに言葉を届けようとする。


6分以上カットをかけることなく一気に撮影されたという、紬と奈々がカフェで向き合って話すシーン。


わざわざ授業のない日に手話教室の春尾先生(風間俊介)を訪ねて手話に訳してもらった言葉たちは、まさに紬が奈々に話すためだけの言葉。紬が、奈々がどんな人か想に聞いて出てきた言葉や、奈々にとっては嬉しくないかもしれない紬からの感謝の言葉も。


「でも 伝えたくて」

その思いが、正面に座っている奈々にまっすぐ飛んでいく。それはどんなに下手であっても伝わるもの。逆に「質問受け付けます」という紬に奈々が可愛く挙手をして質問するが、それも奈々から紬にだけ飛んでいる言葉であることを表しているように感じる。「想くんとたくさん話したほうがいいよ」と言った奈々はとても穏やかで優しい表情をしていた。手話で話すとき、想の声を聞いていないのは紬も奈々も同じ。最後に想のよく読んでいる本について「私には難しかった」と言った紬に、奈々が「私も」と少し笑って“同じ”の手話をする。奈々が想に最初に教えた手話で、紬と奈々の会話が終わることがとても温かかった。


そのカフェのシーンが紬と奈々で描いた答えだとすれば、想と奈々の関係で描いた答えは図書館のシーンだろう。
小さな男の子が想に「あれ取って」と棚の高いところにある本を取ってほしいと訴える。「赤いやつ」と言っているが想には分からない。その時、想は男の子を抱き上げ、本に近づいて指さすとお目当ての本のところで男の子がうなずく。目黒蓮が演じる無条件に幸せを感じられるような想の屈託のない笑みと、子供の無邪気な笑顔。奈々が愛おしそうに見た景色は、聴者とろう者が「分かり合えない」と言った世界を温かく打ち消す。


「何話したの?」想が紬にしたのと同じ質問を奈々にしたとき、奈々は水をかけるような仕草をして冗談を言った。「水かけられたりしていない」と言った紬と思考が同じ。そして「気持ちを伝えようって必死になってくれる姿ってすごく愛おしい」と紬のことを話し、手話が伝わっていくことを「プレゼント使いまわされた気分」から「おすそ分けしたって気持ち」に変化したと明かす。


第6話で奈々が叶わないと涙した夢は、想の夢の中で叶っていた。夢で話すときは二人とも耳が聞こえて「奈々の声が聞こえる」のだと。「奈々 声でもすごいよくしゃべるよ」と想が言って二人がクスクス笑い合っていると、本を取ってもらった男の子が来て人差し指を口にあてて「シーッ」と注意する。第6話に出てきた回想では、図書館でおしゃべりをして注意されている子供たちを見て、想と奈々が「こうやって(手話で)しゃべってても怒られない」とクスクス笑っていた。そんな穏やかなシーンは、聴者とろう者が入れ替わっても同じ状況で、奈々が本来の優しい笑顔をうかべる世界はこんな世界であって欲しいと願ってしまう。


こんなふうに、温かく裏返されていった紬(川口春奈)、想(目黒蓮)、奈々(夏帆)の関係。奈々が“分かり合えない”と言った世界にあった“同じ”。「伝えたい」という思いが溶かしていく境界線。それが、ラストシーンのハグに集約されていたのではないだろうか。


冒頭でセリフのないシーンについて触れたが、終盤は特に、視線や表情だけで会話するシーンが続いた。
紬と想が路上で待ち合わせをして、想が高校生の時に書いた作文を紬がまだ持っていると言い「読み来る?」と自然と誘ってしまう場面。主題歌『Subtitle』は止み、想が「行こうかな」と手話で伝えたあと、紬は驚き、想が優しい笑顔で意志を伝え、紬が戸惑いながらも受け入れる。12秒間、2人は表情や空気だけで会話している。その後に映された、奈々と春尾先生(風間俊介)が出会うシーン。目を合わせた瞬間、街頭の音も消え、奈々が手話で「久しぶり」と言うまでの約8秒も二人は視線で会話をしている。その静寂を引き継いで、静かなラストシーンへ。静かな世界が、これから何が起こるのかとドキドキさせる。


紬の家で、作文を取りにいこうと立ち上がった紬の手を掴み、もう片方の手も掴んだ想は、唾を飲みこみなんとか声を出してみようとしている。少し涙ぐみ、紬のために声を出そうとする想の気持ちがまっすぐに紬へ。紬はその気持ちを受け取った上で、「声好きだったけど それはホントだけど  でも声以外も好きだから。だから 大丈夫。無理にしゃべんなくていいよ。しゃべんなくても好きだから。大丈夫」。想が紬の両手をつかんでいるから、手話はできない。紬は「好きとか言っちゃったけど 手話してないし セーフ」と笑ったが、想にはちゃんと伝わっていた。想が紬を抱きしめ、紬が想の背中を指でトントンたたくと想の思いがこみ上げる。「うん。伝わったね」。紬が高校生のとき、想がイヤホンをしていて聞こえていないと思ってした告白を想が聞いていたように、今回も想にちゃんと思いは伝わっていた。想は、声が聞こえていなくても、手話がなくても、紬のまっすぐな言葉を受け取った。そして自分も、声も手話も使わず、ハグでストレートに気持ちを表した。


第2話で、想と紬が別れる前に最後に会った公園で、想は耳の病気のことを伝えようとするが言わずにしまい込んだ。そんな想に「佐倉君の声聞くたびに思うんだよね。好きな声だなーって」と紬が言った。第7話のファミレスで、想は「声が好きなんだもんね」とスマホで打って紬に見せずに消去した。しかし、ラストシーンでは、紬が「しゃべんなくても好きだから」と想がしまい込んでいたものを分かって打ち消す言葉を言う。


紬と奈々、奈々と想、想と紬。それぞれが向かい合って、まっすぐに伝えたい思いが伝わり、温かく着地した第7話だった。


次回第8話は12月1日(木)15分拡大で放送。関東ローカルでは、第6話が29日(火)14:45〜、第7話は30日(水)25:40〜再放送される。第8話を迎えるまでに、もう一度これまでの放送を思い出しながらじっくり『silent』の世界を味わいたい。


文:長谷川裕桃


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