余計なひと言で人間関係崩壊も 令和の世で注意すべき“4Hワード”

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2022年11月29日 11:20  AERA dot.

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※写真はイメージです (GettyImages)
 余計なひと言を発したばかりに、場がシラケたことはありませんか? 逆に言われて嫌な思いをしたこともあるでしょう。なぜ人は言わなくてもいいことを言ってしまうのか……。


【図で確認】「余計なひと言」を好かれるセリフに言い換えてみると*  *  *


 定年後も嘱託として働く60代の男性が、夕食後にテレビを眺めていたときのことだ。ソファでスマホのニュースを見ていた妻が、大声を上げた。


「えー、大変よ。あなたと同じ年のあの映画監督。昨日、病気で急死したんだって!」


 ……と言われたところで知り合いでもないし、「ふーん」としか言いようがなかったが、とりあえずこう返す夫。


「同い年が亡くなるニュースは嫌なもんだって、死んだじいちゃんがよく言ってたな」


 すると妻はこう言い放った。


「あなたは心配ないわよ。この監督、あなたと違って、東大卒だもの」


 いったい急死と東大卒に何の関係があるのか。余計なひと言に反論しようとしたが、これまた余計なひと言の上塗りになることを案じて、言葉をのみ込む夫だった。


 というわけで「余計なひと言」とは、言わなくてもいいことをわざわざ言って、場の空気を凍てつかせたり、相手に嫌な思いをさせたりしてしまうセリフのことを言う。


 さまざまな「○○ハラスメント」への注意喚起が叫ばれ、言葉を慎重に選ぶ人が増えているはずだが、いまだにこうした「余計なひと言」は世の中にあふれている。週刊朝日がおこなった「余計なひと言」アンケートなどにも、さまざまなエピソードが寄せられた。


「天然系のため、思ったことをすぐに口にしてしまうクセがある」という40代男性は、「沈黙が怖くて、間を埋めるために焦ってしゃべってしまう」と自己分析する。ただ、「そういうときはたいてい失言をしていることが多い」とか。


「例えば学生時代、大学2年から入ったサークルでのことです。入学時に入った部員たちはすっかり人間関係ができていて、自分だけが疎外感があった。ある日酔った勢いもあって、飲み会の席で『お前ら、閉鎖的なんだよ』と、余計なひと言を言ってしまい……。その後半年ほど、誰も口をきいてくれませんでした」



 自身も「場を盛り上げようと余計なひと言を言ってしまうクセがある」という50代の女性の場合は、こうだ。まわりに「自分を大きく見せたいのか、他者を攻撃するために余計なイヤミを言うタイプの人」がいるとか。


 それで思い出したのが、筆者が取材したことがある評論家の先生だ。コメントについて疑問点を聞いたところ、「うーん、わかってもらえないだろうね。キミとは住んでる世界のレベルが違うから」と、まさかのツッコミ返し。だいたい「住んでる世界のレベル」の話は、余計だって!


 まあ、言う人のキャラクターにもよるだろうが、その昔、この手のタイプの人は「皮肉屋が入った、ちょっとおもしろいヤツ」と、多少好意的に受け入れられることもあった気がする。


 ところが、そんな皮肉屋キャラを演出していた「余計なひと言」のほとんどが、令和の世では「百害あって一利なし」。円滑なコミュニケーションを阻害する、NGワードになりつつある。


 ここで整理してみると、余計なひと言を言ってしまう理由も、決してひとつではないようだ。


 冒頭に登場した60代男性の妻のように、“天然系”ゆえ、思ったことを精査せずに言ってしまうタイプも多いだろう。昭和時代にはキラキラ見えることもあった皮肉屋を引きずって、わざと余計なイヤミを言うタイプや、ウケ狙いで余計なひと言を発してしまうお調子者タイプもいそうだ。


 いずれにしても、その余計なひと言が及ぼす影響は、日に日に大きくなっている。著書『よけいなひと言を好かれるセリフに変える 言いかえ図鑑』(サンマーク出版)が、シリーズ累計50万部以上のヒットになっているカウンセラーで、日本メンタルアップ支援機構の代表理事を務める大野萌子さんはこう話す。


■とっさのひと言で人間関係崩壊も


「産業カウンセラーという仕事を通して、2万人以上の悩みに耳を傾けてきました。そうしてわかったことは、働く人の悩みの9割は、身近な人間関係の問題であるということ。そしてその人間関係は、とっさに出た余計なひと言が元になって、壊れてしまうこともあるのです」


 また、余計なひと言が積もり積もって、上司のパワハラとして受け取られたり、はたまたご近所やママ友などのコミュニティーからはじき出されたり。「あの人、いつもひと言多いよね(笑)」では済まされない、人間関係の深刻なトラブルにつながることも少なくないという。


 だからといって、トラブルを避けて、無口な人になってしまっては意味がない。


「今はハラスメントの問題もあって、余計なひと言どころか、他人と関わらないようにしている人も増えている印象です。ただし関わりがなくなると、逆に人間関係が悪くなると私は思っていますし、実際に会話がない職場は、ハラスメントが起こりやすいという実感もある。トラブルを避けようと言葉をのみ込んでしまうのは、余計なひと言の防止法にはなりません」


 そうならないために、まずは、無意識に余計なひと言を発してしまわないように、自身の気持ちを、考えなしに発しないのは鉄則。とくにこんな言葉は、さらなる精査が必要になりそうだ。


「トラブルを起こしがちな言葉を、私は4Hと呼んでいます。否定、批判、非難、比較の四つです。これに分類される言葉は、余計なひと言になりやすいと思います」


 ただし大野さんは、余計なひと言を言ってしまいがちな、もうひとつのタイプにも注目している。相手への気遣いから、本音をはっきり言わずオブラートに包み、かえって相手を嫌な気持ちにさせる余計なひと言を言ってしまう、けっこうやっかいなタイプだ。


「はっきり言えばいいことを、遠回しに言ったり、かと思えば相手を傷つけないようにやんわり伝えたり。または遠慮がちに言ってしまったことが、結局、余計なひと言になることは多いんです」


 わかりやすい例が、何かのプレゼントをするときに、いまだに使う人がけっこういる、ザ・社交辞令といえるこの余計なひと言、「つまらないものですが(受け取ってください)」だ。


 実は謙遜しているだけで、こう言って、本当につまらないものをプレゼントする人はいないが、それを知っているのは、もはや一部世代だけ。若い世代や、ましてや外国人に言ってしまった日には、「なんで、わざわざつまらないものをくれるんだ」と怒りだす人もいそうだ。


 ほかにも気遣いから、遠回しに言ったがために墓穴を掘って、余計なひと言になってしまう例は多い。『言いかえ図鑑』にも、こんな例が紹介されている。ある日、残業を頼んだ部下から、こう言われたらどうだろう。


「断ってもいいですか?」


 たしかに上司の采配に任せるという意味の言葉になってはいるが、それでも「断らないで残業して」と言える会社は、今どきないだろう。部下はそれをわかっていて、「できるわけないでしょ。それくらい察してよ」という本音をわざわざ遠回しに言ってるだけ……そう掘り下げていくと、かなり感じが悪い。


 こういうシーンでは、部下は妙な小細工はせずに「今、別件の締め切りが近いので、お断りさせてください」と言い換えて、シンプルに意思を伝えるのが正解。こねくり回して言うより、きちんと意思表示をするほうが、信頼関係につながっていくことも多いという。


 さらにここ数年で登場した、ニューフェースの余計なひと言もある。テレワークが増えたため、リモート会議などでつい言ってしまう言葉だ。


 例えば、オンラインの打ち合わせ中、相手の部屋の人の気配が気になったときの「誰かいるんですか?」。リモート会議でプライバシーに言及することは、リモハラ、テレハラ(リモートハラスメント、テレワークハラスメント)とも呼ばれ、禁句となっているからだ。


「家庭は会社と同じ環境ではありません。『ご家族のことで何かあれば、遠慮なく言ってください』と言い換えることで、お互い様の気持ちを伝えるのがいいですね」


 こうして、余計なひと言を言ってしまうために、会話クラッシャーや、“場”の瞬間冷却器になってしまいがちな人が、一転好かれる人に変わる方法、それは余計なひと言を、好感ワードに言い換えることだ。


 大野さんに教えてもらった言い換え例を頭にたたき込んで、ひねくれキャラを返上、好かれる人を目指そう。あ、余計なひと言ありました?(ライター・福光恵)

※週刊朝日  2022年12月2日号


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