スローでイージーな低速モビリティで見直す”移動”の可能性

1

2022年12月01日 08:21  ITmedia NEWS

  • 限定公開( 1 )

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

ITmedia NEWS

トヨタは歩くスピードで移動できるモビリティの実用化を進めている(写真提供:京都トヨタ、トヨタ・コニック・プロ)

 歩くような早さでゆっくり移動する低速モビリティをご存じだろうか。国は環境への負荷が少なく、狭い路地も通行が可能で、高齢者の移動手段の観光客の周遊に活用できる移動サービスの総称を「グリーンスローモビリティ」(グリスロ)と名付け、9月から7つの実証調査地域を選定している。その多くはゴルフカートや小型電気バスをベースにしたもので、タクシーやバスの代替品という印象だ。



【その他の画像】



 個人的に注目しているのはそれらよりもっと低速で、移動そのものの可能性を広げてくれる低速モビリティたちだ。



●ロボティクス技術でフレキシブルに運用する



 例えば、シニアカーや電動カートと呼ばれる低速モビリティは、ロボティクス技術を取り入れて進化している。その一つ、パナソニックがロボティックモビリティとカテゴライズする「PiiMo」(ピーモ)は、次世代型電動車イスのWHILLの技術をベースにしている。手動もしくは遠隔で運転する車両に追随して複数の車両を自動運転でけん引する機能を搭載している。



 車両同士は物理的に連結されていないので途中離脱や参加が自由にできる。シチュエーションとしては空港内で荷物を載せて移動したり、観光地や展示会でガイドツアーに利用できる。車イスと聞くと福祉車両のイメージが強いが、機能的には活用できる範囲は広く実用性も高い。



 ロボットベンチャーのロボリューション(大阪府高石市)が開発するロボット「ROBOLUTION」シリーズでも、ロボティクスを活用した低速モビリティがある。ただし、電動車イス型のモビリティはジョイスティックで運転できるが自動運転機能は持っておらず、誘導ロボットを追従するフリーハンド走行を実現している。車両のタイプもいろいろあり、荷物を載せて運ぶカーゴタイプなどと自在に組み合わせて運用できるのが特徴だ。



●人と並んで移動するために不可欠な低速度と安全性



 もっとロボットらしい低速モビリティでは、ホンダが2012年から開発を続けている「UNI-CUB」(ユニカブ)がある。ステップの付いた座イスを体重移動だけで操縦するという手軽さで、22年3月まで日本科学未来館でβ版が運用されていた。



 著者も以前に広い展示会の移動で体験したが、操作はそれほど難しくなく、歩くよりははるかに便利でスピードもちょうどよかった。ただし、体を下半身で支えるだけなのでやや不安定に感じるところがあり、目線が低いので肝心のブースが見えにくく、他の見学客の視野にも入りにくいといった問題点も感じた。やはり低速での移動となると視界が広い立ち乗りタイプの方が便利かもしれない。



 トヨタは歩行領域の新たなモビリティを提供するBEV(Battery Electric Vehicle)として「C+walk T」(シーウォーク、Tは下付き)を開発している。立ち乗りタイプの「C+walk T」はセグウェイに似ているが安定感のある3輪車で、ステップを低くフラットにすることで乗り降りしやすく、サイズもコンパクトだ。人と同じ歩道を走行するため速度抑制や障害物検知機能など安全性への配慮が高められており、急斜面の前に減速するなど運転もしやすい。



 そのため用途は電動キックボードのような目的地への移動より、観光地をゆっくり見て回ることなどに向いている。先日実施された、京都の宇治市にある「お茶と宇治のまち交流館・茶づな」での体験乗車では、音声ガイドを聞きながら敷地内にある茶畑を普段とは違う視点で見てもらう機会を提供していた。



 現時点では公道は走行できないため販売は未定。しかし宇治の観光スポットは最寄り駅からやや距離があり、歩道もあまり広くない。そのため他の観光客らと合わせてゆっくりとしたスピードで移動できる「C+walk T」は、規制の変更次第で利用が拡大するかもしれない。



【訂正:12月1日午後8時5分  掲載当初、「販売は未定」と記載しておりましたが、立ち乗りタイプはすでに発売しておりました。お詫びし訂正いたします。】



 体験会のアンケートでは、観光施設や街中を走行できる有償シェアサービスとして導入される場合に利用したいと思う人は、「とてもそう思う」と「ややそう思う」と回答した人を合わせると80%近いという結果だった。



【訂正:12月1日午後8時5分  掲載当初、「ライトはない」と記載しておりましたが、ライトは装着されておりました。おわびして訂正いたします。】



●街の回遊性と価値を高める機能として注目



 低速モビリティを人の移動をサポートするだけでなく、移動そのものを楽しくしたり、街の回遊性を高めたりすることに取り組む会社も登場している。



 「時速5kmで自動走行するモビリティサービス」を提案するゲキダンイイノ(大阪府大阪市)は、どこでも乗り降りできる“HOP ON HOP OFF”スタイルの自動運転車両「iino」を開発しており、ソファや畳を搭載したタイプや、ディナーやヘッドスパができるサービスなど、ユニークな移動体験をトータルに開発している。



 先日、兵庫県にある神戸ウォーターフロントでは、海沿いの歩行エリアを自動走行するiinoを運用し、人を回遊させる実証実験が行われた。停留所や時刻表は設けられず、スペースが空いていれば自由に乗り降りできるようにしており、いわばオンデマンドで設置された”動く歩道”のようなものだ。乗り物とは異なるため利用料も無料にしている。



 そのため乗車賃にあたる収益をどうするかを検証している。今回はルート沿いに飲食スポットやストリートファニチャーを設けたり、夜は夜景を楽しむ有料のパーティーカーとして走らせたり、ポップコーンの移動セルフ販売などを試していた。



 モビリティの検証というと乗車人数をカウントするものだが、今回の実証実験では車両に搭載したセンサーで人流を測定し、にぎわいを創出できるかを分析。3日間の実施だったがかなり手応えが得られたようだ。



 このようにモビリティは人の動きを変える力があり、スローなライフスタイルを取り戻そうとしている欧米の都市では、低速モビリティを街の中心機能にしようという動きもある。



 日本でもスマートシティー計画において街をデザインする重要な機能として位置付けられており、2023年4月にレベル4が解禁される自動運転車と組み合わせた運用も提案されている。それにあわせた新しい車両のアイデアもこれからまだいろいろ出てきそうなので、機会があればまた紹介したい。


    ランキングIT・インターネット

    前日のランキングへ

    ニュース設定