高級アイスクリームの根幹支える”ご褒美バニラ”の研鑽、安くないからこそ「お客様は裏切れない」

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2022年12月01日 10:30  ORICON NEWS

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ハーゲンダッツ ミニカップ『バニラ』
 毎度“新フレーバー”が話題になるハーゲンダッツのミニカップ。季節を感じられる味、濃厚なキャラメル味、ソルベやジェラートなど種類は多様に広がるが、それら新フレーバーが際立つのは、根幹となる“バニラ”の存在があるからだ。良くも悪くも一般的だったバニラの味に“高級感”を与え、ご褒美の味に変えさせたのは同社の功績といえる。だからこそ価格設定の高さが購入時のハードルとなりうるが、ブランドイメージを維持し続けるためにどのような研鑽があるのか。同社経営戦略部広報チーム・田村苑子さん、経営戦略部マネージャーの北山直子さんに話を聞いた。

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■“ご褒美感”ブランディングで、夏より冬の方が売れる稀有なアイスクリーム

 2020年、全世界を襲ったコロナ禍。日本でも4月に緊急事態宣言が発令されたが、当時アイスクリーム業界も打撃を受けたという。「アイスクリームというのは嗜好品の要素が強いので、お客様の購入の優先順位としては低くなる。当社のアイスクリームは“ご褒美”という要素を付与しておりますので厳しい時期を迎えたのですが、20年5月頃、その“ご褒美”という付加価値がプラスに転じていきました。家中需要、お家で過ごす際の楽しみとして購入される方が増えまして、今もその需要が売上を後押ししている傾向があります」(田村さん)

 実際、ハーゲンダッツの売上高は528億円、前年比10%増と過去最高売上を更新。特に複数のフレーバーが入ったアソートボックスが、家にいる時に外出せずともいつでも子どもに食べさせてあげられるよう購入され、そうしたストック需要がこの売上高の一助となったという。

 ハーゲンダッツならではという話で言えば、売上のボリューム時期も他社とやや違いがある。基本、夏であったり、天候が良い、暑いという状況であればアイスクリームの売上は伸びるが、ハーゲンダッツがもっとも売れるのは“夏よりも冬”。1年頑張ったご褒美として、12月の売上がもっとも高くなることは、昨今のニュースでも度々取り上げられている。この“ご褒美”感は、創業にまで遡る。ハーゲンダッツの原点である“バニラ”フレーバーの開発秘話だ。

 「ハーゲンダッツがアメリカで誕生したのは60年。日本には84年に上陸しました。当時、アメリカのアイスクリームはカラフルで多くの添加物が入っていたところ、ハーゲンダッツは“キッチンフレンドリー”というキャッチフレーズで家庭にあるような身近な素材だけでバニラを開発した。ミルクと砂糖、卵、バニラ。安心の素材にこだわってバニラアイスクリームを作る。その企業理念が受け、開業当時に海外のセレブが買い付けに来るなど、元々ラグジュアリー感があった。それを日本法人でも受け継いでいるという形です。いわばバニラ味が弊社のブランドを象徴するフレーバーとなります」(田村さん)

■安くないからこそ、掲げられる信念「お客様を絶対に裏切ることはできない」

 その“バニラ”は今のトレンドにも呼応している。「時代が落ち込む時こそ、アイスクリーム市場でも定番回帰が起こるんです」と田村さんは解説する。「近年では斬新な商品や食事に近い味のフレーバーが他社さんから販売されたりしていたと思うのですが、もちろんまだそういった商品も出ている中で、お客様のマインドとして“失敗したくない”“絶対外れない”という気持ちがさらに高まってきているように感じられます。弊社で言えば、バニラ。元々通年人気のフレーバーなのですが、ここ数年は特にお客様が定番へと向かっているようです。弊社としてもそれを好機ととらえ、“美味しさ”で選んでいただける活動を展開しているところです」(田村さん)

 また売上は当然、景気や社会情勢に合わせて変化していく。消費税が10%になるなど、やや日本の明るさが沈んだ18年、19年には、売上がダウン。その頃に開発が始まったのが前出の「悪魔のささやき」だ。開発には実に3年を要した。ハーゲンダッツらしからぬネーミングで、味についても“悪魔的な誘惑に誘われる”と反響があり、購入者数は今年発売されたミニカップ新商品の約1.8倍を記録したという。変わり種フレーバーの多様化が進み、定番回帰の流れもある中、なぜこの商品は今、ヒットしたのか。

 「ハーゲンダッツのメインターゲット層は20〜30代の女性。昔と違い、現在の若い女性は本当にあまりテレビを観ていないらしく、昔のようにテレビCMを打っても届かない。ゆえにweb広告やSNSの施策。またティーザー広告では、SNS上で声優さんが美味しさを訴求するナレーションの入った動画を展開して、“この声優さんが誰なのか”を明かさず、当ててもらうような仕掛けを打ちました。商品そのもののクオリティーが高いのももちろんですが、そうした仕組みがじわじわと効いてきたのではないかと考えます」(田村さん)

 とは言え、その価格は319円。アイスクリームとしては決して安くはない。そもそも80年代に日本で展開を始めた際も(ミニカップ価格)約200円という高級アイスクリームとして登場した。当時、日本がバブル前夜ということもあったとは言え、やはりアイスクリーム1つに200円という価格は衝撃であり、そうそう手が伸びるものではない。

「だからこそ、お客様の期待を裏切ることはできない。せっかく購入していただいたのに『外したな〜』とは絶対に思ってほしくないんです。その一心で当社は新フレーバーの開発に取り組んでいます。今年ヒットした『悪魔のささやき』の“3年”という開発期間は一般的な商品に比べて長く取られています。開けた時の感動やワクワク感まで計算し、ねっとりしたソースやクッキーが蓋にくっつかないよう何回も何回も試作を繰り返して、相当なこだわりのもと作られたものでした」(田村さん)

■レシピ変更は「元より“美味しい”と断言できるとき」だけ 変わらない味を届ける気概

 「ただ、昨今は他のアイスクリーム会社さんの技術も向上し、低価格ながら、私たちが食べても“これは美味しい”と思う商品が出てきているのも事実。弊社もブランドにあぐらをかいている場合ではありません」(北山さん)

 それでも、バニラやストロベリーといった定番商品に関しては開発当時からあえてレシピを変えていないという。少し味が変わる程度のマイナーチェンジに意味はなく、唯一レシピを変えるタイミングがあるとするなら「元のレシピより“美味しい”と断言できるとき」。原料に徹底してこだわり、変わらない味を提供することに価値があるという考えだ。

 アイスクリームのミルクは北海道の根釧地区のミルクを仕様。その牛が食べる牧草が育つ土壌からも分析して牛1頭1頭の体調に応じて餌の配合も考えるなど徹底している。ストロベリーに関しても、着色料は使わずにきれいなピンク色を出している。その理由は、ハーゲンダッツ独自のいちごを使用しているからだという。普通のいちごは切ると中身部分が白いが、同社が使ういちごは、その中身までもが赤い変わり種の品種。社内では“ハーゲンダッツ種”と呼ばれている。

 「レシピは海外と同じでも、日本人は日本産のミルクで作ったアイスクリームを美味しいと思う傾向にあるようです。ゆえに日本産にこだわり、お客様にとって間違いない、期待通りの美味しさを追求してきた。お値段が高めということもありますが、それでもほぼ全国のコンビニエンスストアで定価で売ってくださっている。そのおかげで値崩れが起こらず、現在のブランドを保てているという現状もございます」(北山さん)

 さらに管理栄養士いわく、3大栄養素を含むハーゲンダッツ『バニラ』のような高脂質なアイスクリームは、運動によって失われた栄養素を補給することができるためおすすめなのだという。「お仕事で疲れた後、運動をされた後、山登りをした時の売店などなど、様々な場面で、心の“ご褒美”、体の“ご褒美”としてハーゲンダッツを召し上がっていただければ」と田村さん。

 「アイスクリームという枠にとらわれず広い視点で。皆さんに寄り添えるアイテムとして選んでいただきたい、そんなマーケティング戦略で今後も、皆様に美味しいアイスクリームをお送りしたいと思います」(北山さん)

(取材・文/衣輪晋一)

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