W杯コスタリカ戦で山根に声を荒らげた鎌田の「真意」 最強スペインを相手に日本が取るべき戦略

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2022年12月01日 11:30  AERA dot.

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最強スペインとの戦いで活躍が期待される鎌田大地(写真/アフロ)
 日本は、ドイツ戦で得たアドバンテージをコスタリカ戦で失った。数字を見れば2試合で勝ち点3を手にし、グループEの2位につけているのだから、それほど悪い結果ではないのかもしれない。ラウンド16進出の可能性も残されている。


【写真】「ケガがなければ…」日本代表の歴史を変えられた“未完の逸材” ただ、誰もが認める強豪国から初戦で3ポイントを奪っておきながら、そのアドバンテージを続くコスタリカ戦で失った。試合内容を見ても、勝てるチャンスがあっただけに、多くの人が「もったいない」と感じたのは事実だろう。


 むろん、北中米予選を勝ち抜いたコスタリカは、2014年大会でベスト8に進出しており、過去3大会でベスト16止まりの日本よりも「高い場所」を知っている実力国だ。しかしながら現在のFIFAランキングでは日本が格上であり、ドイツに比べれば、グループの中では勝ち点を計算できる相手だった。


 なぜ日本はポイントを奪えず、0−1で敗れることになったのか――。「ワールドカップという舞台では何でも起こり得る」と、日本はドイツを破ったことで自ら示したはずだった。日本とドイツほどの差がないとすれば、なおさらだろう。


 試合に臨む過程でも、実際の試合でも日本に慢心があったとは思わない。当然勝ち点3の獲得を目指していた。あったのは、ドイツ戦に勝利したという状況に対応する難しさだ。連勝できればそれがベストだが、コスタリカ戦はシンプルに勝ち点3を取りに行く状況から、最低“勝ち点1”を得られればいいとも考えられる状況に変わった。チームに求められたのは試合展開を見つつ、しっかりリスクを考えてプレーすること。勝ち点3を目指しながら、勝ち点ゼロで終わることだけは避けようという考え方だった。


■ところどころで生じたズレ


「勝ち点1を初めから狙っていることはないですけど、1を最低限取るということはチームとして共有できていた。だから守備の部分でも攻撃の部分でもどうやってプレーするのかっていうのは、90分を通してやれた」(浅野拓磨)


「もちろん勝ち点3を目指してましたけど、じゃあ全部が全部リスクを負って勝ち点3を求めにいったかと言ったら、チームとしてはそうではなかった」(伊藤洋輝)


「最低でも引き分けたかったというのが正直なところ。そんなに守備に関しては悪いとは思っていなかったというか、最後のところで守るということで、相手にボールを持たれても我慢してブロック敷いていればやられないなという感覚は前半からあった」(遠藤航)


「0−0で終わるのは悪くないと思ったし、最悪、この試合自体が0−0で終わっても別に悪くはないよねっていう感覚ではあったと思います。もちろん3はほしいですけど、最低勝ち点1取れれば」(鎌田大地)


 選手たちが口にしていたように、どうプレーすべきかはしっかり共有されていた。とはいえ、その瞬間瞬間の判断には難しさがあり、ところどころでズレが生じていたように映った。


■鎌田が山根に叫んだ真意


 前半の終盤、鎌田がピッチ上で山根視来に対して声を荒らげた。「もっと前に出ていいんじゃないか」と考えたからだ。前から守備に行けば相手をはめられる状況だったが、山根のポジションが深く、堂安律との間隔が空いてしまって、それができなかった。「なんでそんなに後ろに余ってるのって感じだった」と鎌田は振り返った。山根も山根でリスクを考えてポジションを後ろに取っていたのだろう。


 コスタリカの堅い守備の前になかなか攻めの形をつくれない状況の中、日本の選手たちは、勝ち点3を手にするための攻撃意識と、勝ち点1を獲得するためのリスク管理の狭間でバランスを取る難しさに直面する。鎌田と山根のやりとりは、意識をすり合わせる行動であり、大歓声の中で意思を伝えるために鎌田は叫んだのだった。


 吉田麻也も「もちろん勝ちにいきますけど、時間帯によっては例えば81分ぐらいに失点しましたが、あのまま85分になって最悪引き分けという可能性もあるし、逆に相手が前に出てきたところをカウンターということも考えられる。それはピッチの中で相手のリズムや自分たちのテンポや状況で判断しないといけない」と、この試合のスタンスについて話している。刻一刻と変わる試合状況の中で、チーム全体の意識を合わせ、プレーを調整していくのはかなり難しいものだ。


■挑むは“最強”のスペイン


 ケガ人がいて、中3日という試合間隔でもあり、日本はドイツ戦からメンバーを5人代えてコスタリカ戦に臨んだ。「勝ったチームには触れない」というセオリーそのままに、ケガ人を除き、ドイツ戦に臨んだベストメンバーで戦う選択もあったはずだが、森保一監督はそうはしなかった。結果、主力とサブの組み合わせとなり、このチームの積年の課題である『状況に応じた意思統一』が難しくなったのかもしれない。


 コスタリカ戦のメンバー選考は、タイトなスケジュールの中、主軸選手を起用し続けて決勝トーナメントで力を発揮できなかった東京五輪の反省もあって決断されたものだろう。初戦を終えたあとの各選手の疲労度をデータからも分析し、メンバー選考を行ったと思われるが、とはいえ、今回も吉田、遠藤、鎌田ら主軸は連戦になった。遠藤は右足を負傷し、翌日の練習は不参加。結果論とはいえ、スペイン戦も軸となる彼らは起用せざるを得ないだろう。


 スペインはグループ内最強の相手と言えるかもしれない。しかも彼らは第2戦でドイツと引き分けたために、日本戦にラウンド16進出がかかる。ボールポゼッション率の高さは大会でも屈指だが、ドイツ戦で目を引いたのは、ハイプレスの強力さと切り替えの早さだ。ドイツのお株を奪うハイプレッシャーで相手を押し込み、ボールを回収しては2次攻撃につなげていた。沸き出すようにボールホルダーを追い越す選手が現れて、敵陣に攻め込んでいた。


 日本としては、あのスピード感に飲み込まれないことが重要になる。ボールを持たれることを覚悟した上で、いかに戦っていくか。ここ2戦、日本は試合途中からフォーメーション変更したが、最初から3バックに両ウイングバックを加えた5バックを敷いて、カウンターを狙うことが最も得点の確率を上げるのではないか。2列目から走り込んでくる選手に対してのケアもボランチがしっかり担当することが必要だろう。遠藤が間に合うかという心配があるものの、森保監督が繰り返し選手に伝えてきた「粘り強い守備」が求められる。


■直近2戦と何が違うのか


 スペインの地元メディアが初戦でコスタリカに7−0と大勝した後、細かいパスをテンポよくつなぐスタイル「ティキタカ」復活と称賛し、2戦目のドイツ戦ではハイテンポ、ハイプレッシャーを可能にする強度と、その中でも全くブレない技術を示した。大会前は優勝への期待感がそれほど大きくなかったものの、今は2010年W杯南アフリカ大会以来の優勝を期待する声も聞かれるようになったという。そんな相手と日本はラウンド16進出をかけて戦う。


「W杯に臨むにあたって、このグループを突破していくことを想像したときには、3戦戦って初めて突破できる想像というか、想定をしていました。なので次のスペイン戦に向けても、準備という部分は変わりませんし、スペイン戦だけの準備と考えると、スペインの選手であったり戦術的な部分においては、すでにW杯の前から準備してきました。直近の2戦と何が違うのかということを確認し、われわれが何か準備した方がいいのかは新たに考えていきたいと思います」


 コスタリカ戦翌日の囲みの中で、森保監督は3戦目に臨む意気込みを問われてこう答えている。また、スペイン対ドイツを見た印象を求められ、


「うまくてテクニカルなチームだとは思ってましたけど、その前に激しく厳しく、本当にその中で技術を発揮できる、お互いが連携連動できるという、世界最高峰のチームだなと見て思いました。日本が激しく厳しく戦う中で技術力を発揮する、連係・連動の組織力を発揮する意味で学ぶことも多いなと思いつつ、このチームと戦えることが楽しみな気持ちになりましたし、試合に勝ってそこを越えていきたいという気持ちになりました」


 と話した。


 日本は自力でラウンド16進出を決められる状況にある。スペインに勝てば、無条件。引き分けでも可能性があるものの、それはドイツ対コスタリカ戦の結果次第で、その試合が引き分けか、ドイツの1点差以内の勝利という条件を満たす必要がある。


 コスタリカ戦とは違い、目指すものはシンプルだ。勝って、突破。それだけでいい。


(ライター・佐藤 景)


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