子どもの近視がコロナで増加 対策は? 医師が警鐘「進行すると将来的に目の病気のリスク高く」

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2022年12月02日 17:00  AERA dot.

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※写真はイメージです(写真/Getty Images)
世界的に増加の一途をたどっている近視。子どもの近視も急増している。子どもの近視は将来、目の病気にかかるリスクを高めることなどから、近視の進行を抑制する対策について、世界中で研究が進んでいる。


【データ】「子どもの近視」患者数は?かかりやすい年代は?*  *  *


 子どもの近視が大きな問題となっている。文部科学省の「令和3年度学校保健統計調査」によると、裸眼視力1・0未満の小学生は約37%、中学生は約60%。統計を取り始めた1979年は、小学生約18%、中学生約35%で、急増していることがわかる。2021年からは「児童生徒の近視実態調査」がスタートし、視力だけではなく、近視の程度を示す「眼軸長」(眼球の前後の長さ)の調査が実施されている。


 眼球はカメラのような構造になっていて、各部位が連携することでものが見える。眼球の表面にある「角膜」から入った光が、その奥にある「水晶体」でピントを合わせ、さらに奥の眼底にある網膜で像を結ぶ。眼軸長が長いと、網膜よりも前方で像が結ばれ、近くのものは見えるが、遠くのものが見えにくくなる。


 眼軸長が長いほど近視が進行していることになるが、小中学生約8千人を対象とした調査(21年)では、小学6年生の平均の長さが、すでに成人の平均に達していることがわかった。眼軸長は身長の伸びと同時に長くなりやすいので、さらに近視が進行する危険性がある。東京医科歯科大学病院眼科教授の大野京子医師は警鐘を鳴らす。


「子どものうちに近視が進行すると、将来的に白内障、網膜剥離、緑内障を発症するリスクが高くなります」


 近視が急増、低年齢化しているのはなぜか。


「世界的に認められている原因は二つあります。一つは『近業の増加』、二つめは『屋外活動の低下』です」(大野医師)


 近業とは、目から近い距離で作業をすることだが、近年はパソコンやスマートフォン、ゲーム機などの影響が大きい。小さい画面になるほど、近視の進行に影響するという報告もある。



■屋内でも明るい光が近視の予防に


 屋外活動の低下については、複合的な要因が考えられているが、有力なのは照度の高い光が視力に及ぼす影響だ。


「照度が高い場にいると、網膜の中でドーパミンという神経伝達物質が産生されます。ドーパミンには、眼軸長の伸びを抑制する作用があると言われています」(同)


 近視の発症や進行を予防するためには、近業を減らすこと、屋外活動を増やすことがカギとなる。


 米国では近業の際の対策として「20−20−20」ルールが普及している。スマホなどの画面を20分見たら画面から目を離し、20フィート(約6メートル)以上離れた先を20秒間見る。


 屋外活動については台湾で実施された「1千ルクス以上の光を1日2時間以上浴びている子どもは近視になりにくい」という研究結果に基づき、1日2時間屋外で過ごすことが世界的に推奨されている。屋外は日陰でも1千ルクスあるが、屋内では窓際で800ルクス程度だ。台湾や中国の学校では教室の照度を上げる対策を取り入れている。


「新型コロナウイルスの流行で近視の増加に拍車がかかりましたが、台湾は近視対策を徹底した結果、コロナの流行以後も近視の子どもが増えていません」(同)


■近視の進行を30〜50%抑える


 近視の進行を予防する治療についても研究が進んでいる。世界的に普及している治療の一つが「オルソケラトロジー」だ。近視を矯正するハードコンタクトレンズを使用する治療のことで、通常のハードコンタクトレンズとは異なるデザインのレンズを睡眠前に装着する。すると角膜の形状が平らになり、ピントが合う位置を後方にずらせる。角膜の形状は一定期間保たれるので、翌朝はレンズを外しても裸眼で過ごせる。レンズの装用をやめれば、角膜の形状は徐々に戻る。


 オルソケラトロジーはメガネやコンタクトレンズとは異なり、日中の裸眼視力を向上させるレンズだ。さらに近年は、近視の進行を抑える効果も注目されている。小中学生を対象とした複数の研究では、メガネを使用したグループと比べて、オルソケラトロジーを使用したグループは、近視の進行が30〜50%抑えられたといった報告がある。



 日本眼科学会の「オルソケラトロジーガイドライン(第2版)」では、対象は近視度数−4D(ジオプトリー)まで、乱視度数−1・5D以下と定められている。さらに20歳未満は「慎重処方」となっている。ガイドラインの作成に携わった吉野眼科クリニック院長の吉野健一医師はこう話す。


「近視抑制効果を期待するなら眼軸長が伸びやすい小学校低学年から高校生くらいまで使用するのが効果的です。ただし、小学生の場合、治療を希望するのは主に保護者です。子ども自身はこのレンズの意義を理解できていないことが多いので、眼科医が本人に効果や方法をわかりやすく説明することが大事です」


 使用にあたって注意したいのは角膜感染症だ。重症になると視機能に影響を及ぼすこともある。


「角膜感染症を防ぐために重要なのは、レンズの適切なケアと定期的な受診。保護者が責任をもって管理する必要があります」(吉野医師)


 トラブルを防ぐためにも、治療はオルソケラトロジーの処方などに関する講習を受けた眼科専門医のもとで受けたい。


 自費診療のため、費用は病院によって異なり、初期費用は両目で10万〜25万円程度かかる。定期健診やレンズ交換時(レンズの寿命は1〜2年)にも費用が発生する。


 ほかに進行予防の方法として普及しているのが「低濃度アトロピン点眼」だ。1日1回点眼する方法で、オルソケラトロジーとの併用で効果が高まると言われている。世界的にはさらに予防効果が高い方法の試験も進行中で、注目が集まっている。


(文・中寺暁子)


※週刊朝日2022年12月9日号より


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  • 要因はスマホを親が買い与えているから。
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