やっぱり走行距離が不安! 日産の軽EV「サクラ」を買った人の見解は?

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2022年12月05日 11:41  マイナビニュース

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電気自動車(EV)を購入する場合、やっぱり気になるのが走行距離だ。フル充電で180kmしか走れない軽自動車タイプのEVならなおさらである。もっといえば、日本ではまだまだ充電設備が足りないとも聞く。実際のところ、不便はないのか。軽EVの日産「サクラ」を買ったモータージャーナリストの御堀直嗣さんに聞いた。


○走行距離を比べてみる



私が購入した日産自動車「サクラ」も、同じく軽EVの三菱自動車工業「eKクロスEV」も、一充電走行距離はWLTCモードで180kmだ。



EVで比較すると、日産「リーフ」は標準車で同322km、バッテリーの大きい「リーフe+」で450km、SUVタイプの日産「アリア」は「B6」で470km、「B9」で640km。輸入車のEVも軒並み400〜600kmだから、軽EVの航続距離は相対的に短いといえる。


エンジン車を満タンにして走れる距離は、ガソリン車なら300km〜400kmといったところ。ハイブリッド車やディーゼル車の場合は1,000kmを超える車種もある。これらと比べ、EVの一充電走行距離はまだ不十分との声があることは承知しているし、ましてや軽EVの走行距離は、あまりにも短く思えるかもしれない。


ただ、クルマで出掛ける際、家を出てから目的地まで、休憩なしに200km以上運転し続けるという人はどれほどいるのだろうか? そういう運転ができるかできないかではなく、そういうクルマでの移動を日常的にしているかどうかという視点もある。



休みなしに一気に何百kmも移動するのが当たり前な人には、サクラやeKクロスEVは必ずしも向かないかもしれない。あるいは、日程に制約のある仕事で利用するなど、できるだけ短時間で目的地に到着したいというような人には不向きだろう。でも、日常的には近場への移動が多く、週末など休暇に遠出をするといった利用であれば、サクラやeKクロスEVを使える可能性は高まる。


一般論だが、世界的に、1日にクルマで移動する距離は40〜50km前後が多いとの統計もある。それであれば、軽EVでも3日に1度のフル充電で使っていけることになる。自宅で充電すれば、ガソリンスタンドに立ち寄ったり、給油のためにわざわざ出かける手間も省ける。

○単なる移動手段ではないEVの利点



ただし現状では、マンションやアパートなどの集合住宅に住む人は、併設される駐車場に普通充電(200V)のコンセントを設置しにくい傾向にある。理由は、管理組合などの合意が得られないためだ。



月極駐車場も、まだまだ充電設備の整備は進んでいないのが現状だ。駐車場を借りている人は今のところ、EVを利用しづらいだろう。充電インフラの整備状況が日本におけるEV普及の足かせになっている。



幸い私は戸建て住宅なので、充電の心配がない。また、戸建てであるがゆえに「VtoH」(ヴィークル・トゥ・ホーム)の設置も進めている。昨今、停電や電力供給の逼迫がめずらしくなくなり、系統電力に依存することへの不安が高まりつつある。しかし、自宅にEVがあれば、VtoHの装置を設置することで、EVから自宅に電力を供給することが可能となる。万が一の場合でも、EVのバッテリーに溜めた電気でスマートフォンを充電したり、冷蔵庫や電子レンジなどを普段通り使い続けたりすることができるのだ。



VtoHの装置を製造販売するニチコンによれば、太陽光発電の設備などを設置した家であれば、EVを所有することで、系統電力を使わない「電気代ゼロ」の暮らしもできるという。



サクラとeKクロスEVに限った話ではないが、自宅でクルマを充電できるか否かによってEVの購入意欲も違ってくるだろう。

将来的な話として、軽EVの好調な販売によりEVの普及が進めば、充電環境が改善していくことも期待できる。



例えば、トヨタ自動車の販売店は全国に5,000店ほどあるが、その全てに急速充電器が設置されればどうだろうか。現在、全国の急速充電器の設置数は約7,900カ所といわれているが、これが一挙に1.5倍以上の規模に拡大することになる。



日産の販売店は2,000店ほどだが、それでも日産は、2010年の初代リーフ発売時に急速充電器の設置を進めたことにより、日本各地で40km圏内に充電拠点が生まれ、EVでも安心して移動できるようになったとしている。急速充電器の数が7,900まで増えた今でも、日産の販売店にある設備は頼りになる存在だ。



クルマの販売店に急速充電器が増えれば、自宅に普通充電のコンセントがなくてもEVを利用できる人が出てくるだろう。


テスラの急速充電器である「スーパーチャージャー」は全国に約60カ所あるが、複数の充電口を持つ拠点が多く、自宅に「ウォールコネクター」という普通充電器がなくても不自由しないと語る所有者もいる。テスラ車は大容量リチウムイオンバッテリーを車載しているし、スーパーチャージャーがテスラ専用の充電設備であるため充電時間が短いというメリットもある。


さらに時代が先へ進み、出先の目的地でも容易に充電できるようになれば、EVの利便性はより高まる。



例えば買い物や食事で立ち寄った店に普通充電のコンセントがあれば、用事を済ませている間にクルマを充電できる。急速充電器のように短時間で大量の電気を入れられなくても、次の移動先(帰宅することも含め)まで行ける電力が充電できればよいのである。ここが、EVとエンジン車の大きな違いになる。



エンジン車はガソリンスタンドでの給油を前提とするので、できるだけ満タンの方が安心できる。EVは、出掛ける先に普通充電コンセントさえあれば、電気をつぎ足しながらつないでいくことで、どこまででも移動できる。それが、EV本来の利用の仕方だ。軽EVのように車載リチウムイオンバッテリーの容量が小さくても、立ち寄り先での普通充電のつぎ足しにより、どこまでも移動できる根拠が生まれる。



大容量のバッテリーを積むEVだと充電した電気を使い切れなかったり、クルマが重くなって電力消費の効率が悪化したりもする。軽EVで電気をつぎ足しながら移動するのが、かえって高効率であるとも思えるのだ。マラソンでも、スタート時に飲み物の入った大きなペットボトルを持つ選手はいない。給水場所でコップ1杯の水をもらいながら走り続けるランナー、それがEV社会の理想像だ。


ただし、理想の世界が近くまで来ているとはいえないのが正直なところだ。したがって、一充電走行距離180kmの軽EVを購入することに不安を覚える人がいても不思議ではない。



それでも、EVの特徴的なワンペダルのアクセル操作や回生を考慮した加減速の仕方など、EV運転のコツをつかめばけっこう遠くまで移動することができるはずだ。実際、私はその運転手法で、高速道路も含め10km/kWh以上の電力消費率で走っている。そこから試算すれば、サクラが積む20kWhのバッテリーでも200kmは走れる計算になる。カタログ数値以上の実走行距離になるのだ。



EV運転のコツをつかむことを楽しみながら運転できるなら、サクラやeKクロスEVを買う動機となるかもしれない。



EVにエンジン車と違う扱い方があるのは事実だ。しかしそれは、さほど難しいことではない。特徴を飲み込み、それをいかす発想の転換さえできれば、それが間もなく日常になっていくのである。



御堀直嗣 みほりなおつぐ 1955年東京都出身。玉川大学工学部機械工学科を卒業後、「FL500」「FJ1600」などのレース参戦を経て、モータージャーナリストに。自動車の技術面から社会との関わりまで、幅広く執筆している。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。電気自動車の普及を考える市民団体「日本EVクラブ」副代表を務める。著書に「スバル デザイン」「マツダスカイアクティブエンジンの開発」など。 この著者の記事一覧はこちら(御堀直嗣)

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