これが電気自動車の最高峰? メルセデス・ベンツ「EQS」に乗った!

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2022年12月06日 11:51  マイナビニュース

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画像提供:マイナビニュース
「Sクラス」といえばメルセデス・ベンツのフラッグシップモデルであり、ラグジュアリーカーの中でもトップオブトップといえる存在だ。このクルマが電気自動車(EV)になったら、いったいどうなるのか。メルセデスの新型EV「EQS」に試乗して仕上がりを具合を確かめてきた。


○空気抵抗の少なさは驚異的!



「人間の視覚、聴覚、触覚、嗅覚を通じて、次世代のラグジュアリーが感じられる電気自動車」。こんな触れ込みのEQSなのだから、乗る前から期待は高まっていた。試乗したのは高性能版「メルセデスAMG EQS 53 4MATIC」とスタンダードな「EQS 450+」の2台。まずは内外装と走りの印象からお伝えしよう。



独特のエクステリアデザインには目を奪われるし、驚かされる。「ワンボウ」(ボウは弓のこと)と呼ばれる半月形のラインを持ったショートオーバーハング&キャブフォワードなデザインが、長いボンネットを備えていたこれまでのSクラスのイメージとは大きくかけ離れているからだ。


この形が、内燃機関とおさらばしたことを明確に伝えてくる。フロントにエンジンやトランスミッションを縦置きする必要がないから、半月系のフォルムが可能となったのだ。「EQ」(メルセデスのEV)シリーズで初の専用プラットフォームを採用したEQSが、その効果を最大限に発揮したデザインといえる。これだけで新しさがビンビンと感じられる。



空気抵抗を示すCd値は0.20。量産車では世界最高値だ。例えば、フロント部をグリルではなく「ブラックパネル」と呼ぶ穴のない曲面で構成していたり、AMGモデルが採用する専用の「パナメリカーナグリル」も縦バーの出っ張りを最小にしていたりして、エアロダイナミクスに最大の力を注いだことがよくわかる。


手を伸ばすとフラッシュサーフェス状態からすっと出てくるドアノブをつかみ、車内に乗り込む。出迎えてくれるのは「MBUXハイパースクリーン」だ。


ダッシュボード全体をほぼ埋め尽くす全幅141cmのスクリーンユニットには、1枚のカバーガラスの中にコックピットディプレイ(対角12.3インチ)、センター用有機ELメディアディスプレイ(17.7インチ)、助手席用有機ELディスプレイ(12.3インチ)の3つが埋め込まれている。AMGモデルでは標準装備だが、ノーマル版では「デジタルインテリアパッケージ」というオプションとなっており、価格はなんと105万円(!)。これを使ったEQSの車内体験についてはネタが多いので別項でお伝えすることにしたいが、EQSに乗るのであればオプションであっても装着しない手はない。



ステアリングには各種マニュアルスイッチが多数。スクリーンの機能も多いので、どちらで何ができるのか操作にまごつきそうだけれども、各所にあるホームボタンで初心に立ち返り、それぞれの階層に入っていけば目的の場所に間違いなくたどり着けるので、すぐに慣れそうだ。メルセデス・ベンツ日本の広報によると、「既存のSクラスユーザーにとって、操作ロジックがそれほど変わっているわけではない」そうなので、それほど負担にはならないのだろう。


インテリアの完成度、特に見たり触れたりする部分の仕上がり具合は、さすがはSクラスといったところ。ドライバーズシートから後ろを振り返ると、リアシートははるか後方にある。センタートンネルの出っ張りがないので、たとえリアセンターに座っても足元は広々としている。


ラゲッジルーム容量は610L〜1,770Lを確保。セダンではなく、長いハッチバックゲートを持つ5ドア車になったこともEQSのトピックだ。フロントのボンネットは自分では開けられない仕組みになっているのだが、内部には600gの活性炭を使用した「HEPAフィルター」を標準装備。微細粉塵フィルターの吸着面積はサッカー場換算で約150面分というからなかなかすごい。防菌効果もあり、車内を快適でクリーンな状態に保ってくれるそうだ。


○AMG版は5人乗りスポーツカーだった?



最初に乗った「メルセデスAMG EQS 53 4MATIC」はフロントに最高出力174kW(236PS)/4,858〜6,937rpm、最大トルク346Nm/0〜4,858rpm、リアに310kW(420PS)/4,918〜6,886rpm、609Nm/0〜4,822rpmという2つの永久磁石同期モーターを搭載。総合出力は484kW(656PS)、総合トルクは950Nmで、レーススタートモード時には最大560kW(761PS)を発生するという圧倒的な動力性能を誇る。



AMGモデルらしく、ステアリングのセンターポスト右側には「S+」まで選べるドライブモードセレクトのダイヤルが。左側には足回りなどのダイナミックセレクトダイヤルが備わる。

ワインディングではS+を選択。アクセルを床まで踏み込んでみると、室内のアンビエントライトが瞬間的にレッドに変わり、ドライバーをその気にさせる。あっという間に制限速度に達してしまうのは、0-100km加速3.8秒を実現している証拠だ。ただし、その加速感に唐突感はなく、角が取れたジェントルな感覚なのは「S」らしいところ。緻密なチューニングが施されていることがよくわかる。


5mを超える長いクルマではあるが、最大9度まで曲がるリアアクスルステアリングのおかげでよく曲がるので、狭いコーナーも問題なし。フロントガラスが低く、適度にタイトなドライバーズシートと短い鼻先によって、まるで小型のスポーツカーを運転しているような不思議な感覚が味わえる。


一方で、荒れた路面は連続可変ダンピング「ADS+」とエアサスペンションを組み合わせた「AIRMATIC」システムを備えた足回りのおかげで、何事もなかったかのように静かにスルリと通過していく。ここは、そんじょそこらのスポーツカーには真似できない部分だ。



下り坂ではパドルシフトを引き、最大限の回生を効かせるモードに。21インチのミシュラン「パイロットスポーツEV」を装着したマットブラックのAMGクロススポークホイール内には、レッドに塗られた高性能ブレーキキャリパーが付いているのだが、これをあまり使用しなくても、アクセルペダルのオン/オフだけで思い通りに加減速がコントロールできて、気持ちよく連続コーナーを駆け抜けていける。



専用のサウンドエクスペリエンス(電子音)は、AMGだと「オーセンティック」と「パフォーマンス」の2種類から選べる。無音の状態よりは、音があった方が走りのリズム感がつかめて運転しやすい気がする。


オプションの「エクスクルーシブパッケージ」(12.3万円)を含む試乗車の価格はトータルで2,384.3万円。フル充電での走行距離は601km(WLTCモード)、最高速度は250km/hなので、本国ならアウトバーンの追い越し区間を延々と走っていける性能だ。


もう1台の「EQS 450+」は245kW(333PS)/568Nmのモーターを搭載した後輪駆動モデル。0-100km/h加速6.2秒、最高速度210km/hという性能だ。「ソーダライトブルー」のエクステリアは、凹凸のないEQシリーズ共通のフロントブラックパネルや空力の良さそうな21インチ10スポークアルミホイール(タイヤはグッドイヤー・イーグルF1)でまとめられていて、さらに滑らかな印象である。


インテリアは、例の100万円を超すデジタルインテリアパッケージ(105万円)や「MBUXリアエンターテインメントシステムパッケージ」(48.9万円)、「リアコンフォートパッケージ」(34.8万円)などの付いた豪華仕様。これなら乗員全員がディスプレイを堪能できる。価格はトータルで1,779万円。内装はマキアートベージュ/スペースグレーの明るいカラーで、まさにSクラスらしい世界観が味わえる仕上がりだ。


走りはさすがにAMGモデルに敵わないけれど、速さは必要十分。サウンドエクスペリエンスは「シルバーウェイブス」「ビビッドフラックス」「ローリングパルス」という3種類の電子音から選べる。2つを試したが特にエンジン音に似せているわけでもなく、文字で書けばシルバーウェイブスはシュワワワーン、ビビッドフラックスはビョビョオオーンといった感じ。


床下に107.8kWhのリチウムイオンバッテリーを敷き詰めた450+は走行可能距離もスゴい。フル充電で700kmという数字は日本で売っているEVで最長だ。EVでは標準となりつつある「V2H」(クルマから家に給電する機能、約7日分)や「V2L」(クルマから家電などに給電する機能)などにも対応できるという。


さすがはEQシリーズのSクラス、内外装のデザインと走りはさすがの一言だ。ちょっと気になる部分もあったデジタル面や使い勝手のインプレッションは別項で。


原アキラ はらあきら 1983年、某通信社写真部に入社。カメラマン、デスクを経験後、デジタル部門で自動車を担当。週1本、年間50本の試乗記を約5年間執筆。現在フリーで各メディアに記事を発表中。試乗会、発表会に関わらず、自ら写真を撮影することを信条とする。 この著者の記事一覧はこちら(原アキラ)
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