
国民健康保険料と国民健康保険税はどこが違うのか
一般的に健康保険料といった場合、自営業者等でいうと国民健康保険に加入、給与所得者でいうと、社会保険が給与から天引きされ、それを納めているというパターンが勤労世帯でいうと多いのではないでしょうか。一方、徴収する側の市区町村側から見た場合、国民健康保険は各市区町村によって、国民健康保険料とするか国民健康保険税とするかを選択することができ、そのどちらを選択するかによって根拠法令が異なるので、当然取扱いも異なるのです。
国民健康保険料でも国民健康保健税でもそれを支払った場合、所得税や住民税の計算上、社会保険料控除として所得控除項目となります。したがって、本来、公的な医療保険の性格を持つものといえるでしょう。国民健康保険料といった場合、その根拠法令は国民健康保険法となり、2年を過ぎてしまうと徴収権がなくなります。
一方、国民健康保険税といった場合、公的な医療保険の性格を持つものであり、社会保険料控除として所得控除できるといった取扱いは一緒ですが、根拠法令が「地方税」となるので、徴収可能期間が5年となり、差し押さえの優先順位や手続きについても国民健康保険料とは異なってきます。これらをとりまとめると以下のようになります。
■徴収可能期間
国民健康保険料……2年
国民健康保険税……5年
■差し押さえ等の優先順位
1位:国税および地方税(国民健康保険税もココに含まれる)
2位:抵当権
3位:国民健康保険料
これを見てもわかるように「国民健康保険税」のほうが「国民健康保険料」より、徴収可能期間および差し押さえを行う場合の優先順位が厳格に扱われていることがわかります。
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督促状がきたら、まずは分納の相談
国民健康保険税を期限通りに納めていないと、まずは市区町村から「督促状」という封筒が届きます。これが届いていたら、いわゆる「イエローカード」が提示されているといっていいでしょう。そのような状況にあるなら、まずは「督促状」を持って、市区町村の担当課(※)に出向き、分納、つまり「督促状通り一括で納めることはできないので、なんとか分割で納める方法」で折り合いをつけるという話し合いの場を持つことをまずは勧めます。
※前述のように国民健康保険の取扱いは「保険料方式」と「地方税方式」があるので、総合案内等で確認するのがいいでしょう。
滞納すると延滞金というペナルティが
ただし、分納するとデメリットがあります。「督促状」が届いている段階で本来の納付期限を過ぎていることが考えられるので、本来の納付期限から実際に納付した日までの日数、税金の納付が遅延したということになるのです。
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なお、令和3年1月1日から令和3年12月31日までの特例基準割合は1.5%、令和4年1月1日から令和4年12月31日までの特例基準割合は1.4%とされています。
ちなみに、納付期限の翌日から1カ月を経過する期間までの延滞金の割合は、上記特例基準割合に1%を付加したものなので、令和4年1月1日から令和4年12月31日の延滞金の割合は、以下のようになります。
・納付期限の翌日から1カ月を経過する日までの期間の場合
1.4%+1%=2.4%
・納付期限の翌日から1カ月を経過した日以降の期間の場合
1.4%+7.3%=8.7%
したがって、早めの対応をしたほうがペナルティも軽減されることになります。
給与や加入している保険などに差し押さえがかかることも
また、「どうせ大したことはないだろう」と「督促状」が届いたけど放置していると、ある日突然、「国民保険税の未払いが勤務先にばれた」「民間会社と契約している保険が差し押さえられた」などということもあるのです。
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ちなみに前者の場合、滞納期間前、半年間くらいの給与台帳を持参して、その市区町村の税務課に出向くことになります。給与の一部差し押さえとなるので、場合によっては勤務先の担当課の方にも同席してもらうこととなるケースもあります。
通常、そのような状況になると何といってもその従業員の社会的信用が落ちることは避けられず、収入が減り、さらに国民健康保険税の滞納額が増えるということにもつながりかねません。
国民健康保険税の対応方法は、まずは「督促状」が届いた段階で分納の相談、できればここで、直近3カ月から半年の給与明細や収支がわかるもの等を持参し、「この手取りの中から○○万円払います」という「支払いの意思表示」をすることです。これが国民健康保険税の滞納に対応するための最初の一歩となります。
文:田中 卓也(税理士)
都内税理士事務所にて13年半の勤務を経て、開業。事業計画の作成・サポートを中心に、経営相談、キャッシュフロー表の立て方、資金繰りの管理、保険の見直し、相続・事業承継対策など多岐にわたる業務をおこなう。
(文:田中 卓也(税理士))