ベスト8で敗れた森保ジャパン ベスト8の壁は厚かった。カタールW杯の決勝トーナメント1回戦。日本代表が前回大会準優勝のクロアチア代表と対戦し、1−1の同点でPK戦に突入し、1−3の末に敗れた。グループリーグでドイツ、スペインと優勝候補を撃破したが、史上初のベスト8進出はならなかった。
【写真】2026年W杯で日本代表の中心となる選手たち 相手は格上だったが、一方的に主導権を握られたわけではない。ドイツ戦やスペイン戦と比較すると、より多くチャンスを演出していた。前半43分に右サイドのコーナーキックからショートパスをうけた堂安律がクロスボールを入れ、前田大然が左足で押し込んで日本が先制。今大会4試合目で初めて先制した。
スポーツ紙の記者は悔しさを押し殺して振り返る。
「正直、勝てるチャンスがあっただけにもったいなく感じました。クロアチアは前回大会のハイプレスで攻守の切り替えが速いイメージだったが、この試合はそこまで圧力を感じず、攻撃の起点だったモドリッチもうまく封じ込めていた。同点に追いつかれても勝機があると感じましたが…」
リードしたことで受けに回ってしまったか。後半10分にイバン・ペリシッチのヘディングで同点に追いつかれると、後半19分に三笘薫、浅野拓磨を投入。ドイツ、スペイン戦の時のように運動量で相手を上回り、試合の流れを引き寄せるかに見えたが、クロアチアは日本の攻撃を徹底的に研究していた。三笘が前を向いてボールを持たせないようにパスコースを遮断。パスが渡っても2、3人が囲んで自由にさせなかった。互いに体力を消耗し、プレーの精度が落ちていく中でPK戦は1人目の南野拓実、2人目の三笘が連続で相手ゴールキーパーに防がれ、1対2で迎えた4人目の主将・吉田麻也もゴールを決められなかった。
大会前の下馬評は決して高くなかった。その中で目標のベスト8進出は届かなかったが、ドイツとスペインを撃破し、グループリーグ首位で決勝トーナメントに進出したことは日本のサッカー史に刻まれる快挙と言っていいだろう。不安視された森保一監督の采配も光った。3バック、4バックを試合展開や相手の力関係によって使い分け、途中から切る交代カードもズバズバ的中した。今大会終了後、次のW杯に向けて監督続投を望む声が高まっているが、スポーツ紙デスクは「森保ジャパンは最善を尽くしたが、もう1ランクステップアップするためには監督を交代するべきだ」と強調する。
「この4年間で選手たちは大きく成長しました。守備はプレスに行くタイミング、選手同士の距離感に注意を払いながら、豊富な運動量で世界の強豪国の攻撃を摘んできたが、攻撃は戦術のレパートリーが少なく、三笘、堂安、伊東純也の個人技頼みだったことを忘れてはいけない。南野、久保建英、鎌田大地を含めてあの中盤の陣容だったら、もっとバリエーションに富んだ攻撃ができるし、セットプレーも工夫の余地がある。今回の日本の快進撃を見て、世界の名将と呼ばれる監督たちも興味を持ったでしょう。守って耐えて、ショートカウンターの戦術だけでは強豪国に何度も通用しない。ベスト8以上を目指すなら、世界のトップレベルの戦術を落とし込める監督を招聘するべきだと思います」
日本代表の激闘を、未来につなげればいけない。日本サッカー協会は次期監督の選定でどのような決断を下すか。(今川秀悟)