冷凍自販機でフードロス削減へ! 地域飲食店がシェアリング販売の実証実験

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2022年12月09日 07:02  マイナビニュース

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画像提供:マイナビニュース
フードロスの課題解決の観点から、新たな購買行動と購買ニーズの掘り起こしが求められている。NTT東日本は冷凍自動販売機「ど冷えもん」を埼玉支店のある高砂ビル1F前に設置。埼玉県さいたま市に本社を置き、同地を中心に事業を展開するノースコーポレーションとアクアの協力のもと、地域飲食店の冷凍商品をシェアリング販売する実証実験を11月より開始した。


今回はノースコーポレーション社長の北康信氏とアクア専務の徳永泰正氏、NTT東日本 埼玉事業部の大木亮氏に、実証実験の実現の経緯や展望などを聞いた。

○フードロスに注力する地元有名企業が協力



過疎化や買い物難民の増加、商店街の空き店舗の増加、コロナ禍による非接触ニーズの高まりや、営業自粛による店舗売上の減少、原料高騰など、地域飲食店に関わる社会課題が顕在化している昨今。これらの課題解決で注目を集めているのが冷凍技術だ。



NTT東日本 埼玉支店は地域飲食店に特殊冷凍技術の認知拡大を目指し、8月上旬に「特殊冷凍技術体感セミナー 〜『凍眠』の事例紹介〜」をさいたま市と開催。冷凍技術やICT /IoTサービスによる地域飲食店のフードロス削減と地域活性化に取り組んでいる。



「先のイベントでは調理加工工程での冷凍技術などについて紹介しましたが、地産地消にこだわった冷凍ビジネスを推進する上で大切な販路として、冷凍自販機の可能性を検証する実証実験に着手することになりました」(大木氏)


本実験に協力企業として参加したノースコーポレーションは、さいたま市を中心に「エッコラ」などのイタリアンレストランを県内で9店舗運営。SDGs ・フードロス削減の観点から、同市の名産であるヨーロッパ野菜を活用した商品開発・販売事業を展開してきた。



物流・流通業者と連携し、各レストラン店舗がハブとなって地域飲食店に地元生産者の食材を供給できる仕組みを構築するなど、地産地消に長年取り組んできたという。



「通信事業者であるNTT東日本さんからの意外なお申し出でしたので、そこに少し驚きがありました。コロナ禍の影響を多方面で受けた農業や飲食業界ですが、我々の業界が新たなステージに向かうための何かヒントになればいいなと思い、今回の実証実験に参加させていただきました」(北氏)


アクアは埼玉を中心とする関東圏で「ブーランジェベーグ」など20店舗のベーカリーを手がける。北欧フィンランドを軸とする輸入販売などの事業も展開する同社だが、ベーカリー事業では生地づくりから焼き上げまでの工程を一貫して職人が行う"スクラッチ製法"による焼き立てのパンを提供。売り切りや二次加工への転用などを駆使し、創業以来、食品ロスを極力発生させないビジネスモデルを続けている。



「完全にロスとなる商品は1%未満で、ベーカリー業界全体で比較すると低い水準ですが、日保ちして製造計画も立てやすい冷凍商品なら、さらなるロス低減につながると期待しています。冷凍事業に関しては当社も先行して投資していたんですが、コストや人員などの課題もあり、具体的な販路の開拓に動き出せていなかったタイミングで、今回のお話をいただきました」(徳永氏)


○売上の相乗効果にも期待



「私どものレストランではさまざまな調理の工夫をしているための食材ロスはあまりない一方、コロナ禍では飲食店の需要が消失し、収穫しないまま業務用野菜が廃棄される事態にも陥りました。コロナ禍を経て冷凍食品のネガティブなイメージも大きく変容しましたが、今回の実験を通じ、これまでニーズがあっても我々の商品をお届けできていなかった方々にも、冷凍の品質の高さや魅力をお伝えしていきたいです」(北氏)

今回の実証実験ではフードロスの削減効果だけでなく、冷凍自動販売機でシェアリング販売することによる売上の相乗効果の検証も目的としている。



「店舗ではクリームパンやあんパンなど、親しみのある商品がメインですが、今回はフィンランドのオーツを練り込んだパンで少しヨーロピアンな雰囲気に寄せてみました。特にチーズのフロマージュは北さんのミネストローネによく合います」(徳永氏)


ノースコーポレーションのヨーロッパ野菜を使ったミネストローネは、規格外野菜やコロナ禍で出荷先のない食材を活用して開発された商品で、同市のふるさと納税でもトップ5に入る人気商品。他にも獣害とされている秩父鹿など、レストランで仕入れた食材の在庫を使った冷凍パスタソースも提供している。


NTT東日本は、冷凍自動販売機の設置・管理、商品の保管・補充等のメンテナンスなどの運用管理を支援。利用客の性別や年齢層の分布などを分析する画像分析用カメラを設置の上、販売データなどの解析・考察を含むマーケティング分析を行う。



カメラは店内カメラとして主に利用されているもので、自販機に取り付けたのは社内では2事例目。導入実績のあるサンデンリテールシステム製の冷凍技術を採用し、3カ月弱で実証実験の実施に至った。包装パッケージの選定には苦労もあったという。



「北様と徳永様にも商品の落下試験に立ち会っていただき、2社のご協力をいただきながら微調整を重ねました。サイズ感が揃っていなかったり、重量が軽すぎたりすると、落下する際に中で引っかかってしまうケースもあるので。地味な裏方のところですが、こればかりはやってみないとわからないところでしたね」(大木氏)

○食分野でサステナブルな地域循環を構想



それでも24時間365日非接触/無人販売でき、販売期間・保存期間の長期化によるフードロスや廃棄コストの削減、店舗やSDGs貢献に関する認知拡大を見込めるなど、冷凍自販機を使った販売の利点は大きいようだ。



「昨年から弊社の宮城事業部でも仙台の牛タン弁当を販売する同様の実証をしており、好調な売れ行きで、女性が早朝や深夜に買っていくなど少し意外なマーケティングデータも出てきています。今回の実験も大勢の地元ファンを持つ2社様の商品を冷凍で楽しめるとあって、喜んでいただけるお客様は多いと感じています。昼夜で人通りの差が大きい立地で当初は少し不安もありましたが、出足は上々の売れ行きで深夜や早朝にも購入されています」(大木氏)


今後、NTT東日本ではリモートワークで利用率が減少した社員食堂や学生食堂に向けて、地域グルメの冷凍商材が味わえる無人のスマートストアの運営など、地産地消・地産他消のビジネスモデルを模索していくという。



「通常、冷凍自販機は自店舗の前などに置かれることが多く、冷凍ということで管理の温度帯も異なるため、社内はもちろん実は一般的にも遠隔での冷凍自販機の運用はまだまだノウハウが蓄積されていない領域。将来的には地域飲食店の代行業務のサービス化を検討していきたいと思っています」(大木氏)



冷凍商材はオンライン販売とも相性が良いため、地域飲食店の新たな販路としてNTTタウンページ社のWebサイト制作サービス「Digital Lead」のEC機能など、トータルでの支援サービスを訴求していきたいとも語った。



「グループ会社のNTTアグリテクノロジーでは、次世代園芸農業や陸上養殖に取り組んでおり、ゆくゆくは生産から販売までのバリューチェーンを創造して、サステナブルな食の循環を地域に生み出していきたいです。また、食育などの地域教育の分野にも注力していますので、グループ会社や通信事業者の強みを活かしながら、小学生のみなさんとの取り組みなども推進していきたいと考えています」(大木氏)



伊藤綾 いとうりょう 1988年生まれ道東出身、大学でミニコミ誌や商業誌のライターに。SPA! やサイゾー、キャリコネニュース、東洋経済オンラインなどでも執筆中。いろんな識者のお話をうかがったり、イベントにお邪魔したりするのが好き。毎月1日どこかで誰かと何かしら映画を観て飲む集会を開催 @tsuitachiii この著者の記事一覧はこちら(伊藤綾)

このニュースに関するつぶやき

  • 『フードロス削減』を前面に掲げてしまうと、捨てる前の余り物で冷凍商品を作ったように思えてしまうな。
    • イイネ!9
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