桐谷美玲が受けて視力回復した新手術「眼内コンタクト(ICL)」とは? 費用は両目で60万〜100万円

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2022年12月09日 17:00  AERA dot.

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写真はイメージ(GettyImages)
近視が強くなると、さまざまな目の病気にかかりやすくなる。また、視力を回復するレーシック手術は、近視が強いと合併症のリスクが高まる。近視が強くてもできる手術として、眼内コンタクトレンズ(ICL)が注目を集めている。今年10月には女優の桐谷美玲さんが自身のInstagramでICL手術を受けたことを報告している。近視が進行することによるリスクとICL手術について、専門医を取材した。


【イラスト図解】ICLの手術はこちら!*  *  *


 近くのものははっきり見えるのに、遠くのものがぼやけて見える近視。眼球の前後の長さである「眼軸長」が正視の人よりも長いのが特徴だ。眼球の表面から入った光は、正視の人の場合、眼底(眼球を真上から見た場合の底の部分)にある網膜で像を結ぶが、眼軸長が長いと、網膜よりも前方で像が結ばれてしまう。このため、近くのものにしかピントが合わなくなる。


 近視の程度は、屈折異常の度合いによって、「弱度」「中等度」「強度」に分類される。屈折異常の度合いを示すのがジオプトリー(D)という単位で、メガネの処方箋やコンタクトレンズが入っている箱に表示されている。正視は「0」、近視はマイナス、遠視はプラスとなる。


 日本では一般的に、マイナス0・5D以上マイナス3D未満の近視を「弱度」、マイナス3D以上マイナス6D未満の近視を「中等度」、マイナス6D以上の近視を「強度」と分類している。


 正視の人の眼軸長は23・7〜23・8ミリと言われ、1ミリ伸びるごとに近視になり、27ミリ以上になると強度の近視に、30ミリ以上になると合併症が生じている可能性が高くなる。


 眼軸長は身長が伸びる時期に長くなりやすく、からだの成長が止まると眼軸長の伸びも止まるため、近視も進行しにくいと言われてきた。しかし、東京医科歯科大学病院眼科教授の大野京子医師はこう話す。


「近年はスマートフォンなどの普及によって、大人になってから近視を発症したり、進行したりするケースが増えています」



■中等度の近視でも合併症は起こる


 近視であっても、メガネやコンタクトレンズで視力を調整できれば問題はない。しかし、近視が強くなると、合併症を起こすリスクが高くなる。


 近視が強くなるほど眼球が前後に伸び、網膜が薄くなったり、はがれやすくなったりするほか、視神経が障害されやすくなる。


 大野医師は「中等度の人は特に網膜剥離に注意」と話す。網膜剥離は、網膜がはがれて急激に視力低下を起こし、失明することもある病気だ。強度になると、網膜はさまざまな組織と癒着を起こすため、逆にはがれにくくなる。


 一方、強度の人が注意したいのは、黄斑変性や緑内障だ。黄斑変性は、網膜の中心部である「黄斑」が萎縮したり、出血したりする状態だ。緑内障は、視神経に障害が起こり、視野が狭くなっていく病気で、失明原因として最も多い。


 こうした近視の合併症は、40代以降で発症しやすくなる。異変に気づいたら、できるだけ早く治療することが大切だ。網膜剥離は進行すると視野が欠けるが、初期は、視界に小さなゴミのようなものが見える「飛蚊症」が表れやすい。黄斑変性は、ものがゆがんで見える、視野の中心が黒く見える、視野が欠けるといった症状がある。


「両目で見ていると気づきにくいので、片目ずつ見え方をチェックしてください。近視の人は月に1回程度、カレンダーなど同じ対象物を見て確認するのがおすすめです」(大野医師)


 緑内障の場合は、かなり進行するまで自覚症状はない。


「緑内障は、40歳以上の20人に1人が発症する病気です。症状がなくても40歳を過ぎたら、定期的に検診を受けましょう」(同)


 近視の人は、一般的にメガネやコンタクトレンズで視力を矯正するが、「メガネをかけると頭痛がする」「コンタクトをつけるとドライアイがひどくなる」など、不具合を感じる人もいる。そうした場合に役立つのが、「視力回復手術」で、代表的な手術がレーシックだ。しかし、レーシックの場合、近視が強くなるほど、合併症のリスクが高くなる。さらに、強度になるほど近視の戻りも起こしやすくなる。このため、日本眼科学会が作成した「屈折矯正手術のガイドライン(第7版)」では、レーシックの対象を原則マイナス6Dまでとしている。



■強度の人も安心な眼内コンタクトレンズ


 一方、マイナス6D以上の人もできる視力回復手術として、注目されているのが眼内コンタクトレンズ(ICL)だ。黒目の表面にある角膜に小さな穴を開け、ソフトコンタクトレンズに似たやわらかい素材のレンズを虹彩(角膜と水晶体の間の薄い膜)の下に埋め込む。一度入れたら洗浄や交換の必要はないが、不具合などがあれば手術で取り出すこともできる。


 ICLは2010年に厚生労働省に認可されたが、当初は白内障や眼圧上昇といった術後合併症が問題となっていた。しかし、現在使用されている新しいレンズにより、合併症が大幅に減少している。レンズの開発にも携わった北里大学病院眼科・医療衛生学部教授の神谷和孝医師はこう話す。


「現在スタンダードとなっている新しいレンズは、中央に小さな穴が開いているため、目の中の水の流れがよくなり、白内障や眼圧の上昇を予防できるようになりました」


 ICLが推奨されている年代は、21〜45歳だ。40代になると目の調節力が衰え、老眼を発症しやすくなり、さらに50代以降になると白内障も起きやすくなる。


 ICLはレーシックと同様自費診療となるため、手術費用は片目で30万〜50万円程度、両目で60万〜100万円程度かかる。


 なお、ICLのような視力回復手術によって、眼軸長が短くなるわけではないので、近視による合併症のリスクもなくならない。メガネやコンタクトレンズなしに見えるようになっても、合併症対策には気を付けたい。


(文・中寺暁子)


※週刊朝日2022年12月16日号より


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