今季二軍で左打者の被打率.099の成田翔、現役ドラフトでヤクルトへ 新天地で一軍定着を!

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2022年12月09日 19:10  ベースボールキング

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現役ドラフトでヤクルトへ移籍した成田翔
◆ 現役ドラフトでヤクルトへ

 「自分の中では少しあるかなという想いはありました。これまで、なかなか一軍でチャンスを掴めなかったので、この新しい制度で新しいチームに移籍をして、しっかりと結果を出すことで7年間、お世話になった千葉ロッテマリーンズに恩返しが出来ればと思っています」。

 ロッテの成田翔が9日、現役ドラフトでヤクルトへの移籍が決まった。

 ロッテでプレーした7年間は常に手薄な左腕事情ではあったが、一軍での登板機会が少なかった。プロ4年目の19年は、同年4月12日の日本ハムの二軍戦で失点するまで、春季キャンプから実戦16試合連続無失点。「やることは変わらないと思う。いつチャンスがきてもおかしくないと思うので、そのチャンスをモノにできるように下で準備したいと思います」。6月に疲労から失点する場面も目立ったが、下半身の使い方を見直した7月以降は再び安定した投球を披露。一軍昇格に向けてアピールを続け、8月18日に昇格したが、登板の機会がなく8月22日に一軍登録を抹消された。

 成田がファームに落ちた8月22日は、ファームはロッテ浦和球場で練習日だった。悔しい気持ちがあったはずだが、常に成田が口にする「やるべきことは変わらない」といつもと変わらずグラウンドで汗を流す姿があった。同年、ファームで51試合に登板したが、一軍登板なしに終わった。

 「一番は悔しい思いがあるので、その悔しい思いを忘れずに、しっかりやって、来シーズン(2020年)にぶつけないと意味がないと思う。この思いを忘れずに1日1日やっていきたいと思います」。

 シーズン終了直後の19年10月2日の取材で、「一番は来シーズン(2020年)に合うフォームを見つけること。1年、1年フォームは誰もが違うと思うので、そこを早く見つけて自分のモノにしなければと思っています」と話し、早速同年10月に行われたみやざきフェニックス・リーグの終盤からやや腕の位置を下げたスリークォーター気味の新しい投球フォームに挑戦。

 同年11月12日の秋季キャンプではシート打撃に登板。「(球の力は)ブルペンのときのほうが全然良い」と話しながらも、「今日(12日)は、バッターが入って力が入った部分がある。それでも、自分のなかでは今日みたいな内容は、かなり収穫があったかなと思います」と手応えを掴んだ。

 秋季キャンプ終了後の11月23日〜12月4日にかけて、アメリカ合衆国ワシントン州シアトルのトレーニング施設「ドライブライン・ベースボール」に派遣され、モーションキャプチャーによる動作解析を行った。

 「フォームに関しては自分の投げ方があるので言われなかった。体の向き、胸の位置、腰の位置だったり、細かいことは言われました。変に意識したら投げられないと思うので、教わったメニューをやりながら、対応していきたいと思います」。


◆ 試行錯誤した2020年

 2020年に入ってからは中村奨吾、小島和哉らと沖縄で自主トレを行い、「中村さんだったり、実際に(打席に)立ってもらって色々とアドバイスをもらえたので、自主トレはいい感じで投げられたと思います」と好感触を得た。

 「やるだけだと思っているので、とにかく結果を求めてやっていきたいと思います。去年の気持ちだけは忘れずに、1年間投げ抜きたいと思っています」と、2月1日から始まる春季キャンプに向けて準備は整った。

 しかし、2月14日の広島との練習試合に9回から登板するも、0回1/3を投げて、1被安打、4四死球、2失点と制球に苦しんだ。「欲というか、抑えようとしすぎて、自分の打ち取る感じを見失ってしまいました。四球から崩れるのは久々。自分でも珍しいケースだと思ったので、ああいうケースにならないように、ある意味いい経験ができたかなと思います」と振り返った。

 「しっかり反省する部分は反省して、次のゲームと切り替えるようにしています」。続く19日のDeNAとの練習試合では、1イニングをわずか9球、三者凡退に打ち取った。「DeNA戦でしっかり修正できて、考えて投げられた。あの広島戦は、もったいなかったと思います」と悔しがった。

 春季キャンプ、オープン戦と肘を下げたフォームで投げていたが、新型コロナウイルス感染拡大で開幕が遅れ、6月に登板したときには肘を上げたフォームとなっていた。そして、同年シーズン最終盤の11月には再び肘を下げたフォームに戻した。

 成田は「シーズン中はうまくいかなかったので、そこで肘の位置を少しあげたんですけど、フェニックス・リーグあたりからチームの戦力になることを考えたときに下げた方がなれるかなと自分なりに考えた」と、2020年は投球フォームに試行錯誤した1年だった。


◆ 新たな武器を手にした2021年

 2021年は新たな武器を手にした。それが“シュート”だ。

 「左のインコースにシュートもしっかり投げられていますし、シュートとスライダーのコントロールを思うようにできている」。ストレートと同じ球速帯で投げるシュートが、左打者だけでなく、右打者を打ち取る上でも鍵を握るボールになった。

 そのシュートについて成田は「(21年の)キャンプぐらいから投げています。ずっとツーシームを投げていたので、その延長戦で投げている感じですね」とのこと。「握りをさらに変えて腕を下げたぶん、いい感じにシュートを投げられている。自分のモノになっていると思います」と自信を見せた。

 「左バッターを抑えないといけないと思っているので、そのなかで角度のあるまっすぐ、遠く見えるようなスライダー、さらにインコースのシュートで食い込ませる。その3つを軸に投げています」。それまでは外角に逃げるスライダーが中心となっていたが、シュートを覚えたことで投球の幅が広がった。

 成田は同年ファームで左打者に対して被打率.161(62−10)と抑えこみ、3月23日の日本ハム戦で難波侑平に安打を打たれたのを最後に、左打者を18打数連続で抑えたということもあった。一軍では3試合の登板にとどまったものの、左打者に対しては.143(7−1)。20年セ・リーグ首位打者の佐野恵太(DeNA)を右飛、19年に首位打者に輝いた森友哉(当時西武)を122キロの外角スライダーで空振り三振に打ち取り、自分のスイングをさせなかった。左打者を抑えるという“結果”を見せ、2022年に突入した。


◆ 左打者を抑え続けた2022年

 プロ7年目の今季、2月の石垣島春季キャンプをA組でスタート。練習試合、オープン戦も一軍に帯同し、3月11日の西武戦では0−1の6回一死満塁の場面で先発・二木康太の後を受けてマウンドに上がり、左打者の栗山巧を1ボールから2球目のストレートで投併に打ち取った。しかし、3月15日の広島戦で8−2の6回二死二、三塁の場面で登板するも、左の林晃汰に2点適時二塁打を浴びた。

 開幕は二軍スタートとなり、ファームでも3、4月は球が高めに浮き、3月28日のDeNA戦から3試合連続で失点するなど、打ち込まれるケースが多かった。「春先はシュートが自分結構得意だったので、シュートを多投していた。シュート一辺倒になったら簡単に打たれていた部分がある」。特に3.4月は左打者の被打率が.188に対し、右打者には被打率.400と苦戦。

 5月以降は安定した投球を披露し、4月27日の巨人戦から7月6日の楽天戦にかけて17試合連続無失点、8月14日のヤクルト戦から9月25日の巨人戦にかけて14試合連続無失点と安定感抜群だった。

 左打者に対しては5月29日のDeNA戦で森敬斗に中安を打たれてから8月14日のヤクルト戦で岩田に右安を許すまで25打数連続で被安打0に抑えた。

 6月30日に行ったオンライン取材で成田は「左バッターをずっと抑えるということは変わらずに、一軍に呼ばれたときは左バッターだけは確実に抑えるというつもりで、練習はしています」と決意を述べていた。そのなかでファームでは“左打者”を完璧に抑え続けた。

 与四死球の多さが気になるところだったが、死球に関しては「左バッターに対してはインサイドは死球でもいいかなというくらい投げている。死球率は今年高いんですけど、そこは気にせずに特徴だと思って投げています」と徹底的にインサイドを攻め続けた。

 課題にしていた右打者も外から入ってくる大きなスライダーに、インコースのカットボールで勝負ができるようになってきた。今季はファームで46試合に登板して、防御率2.27、左打者の被打率.099(71−7)とアピールしたが、一軍から声がかかることはなかった。

 近年は毎年一軍定着を掲げてきたが、一軍で居場所を掴むことができなかった。そして、現役ドラフトでヤクルトへ移籍することになった。

 「東京ヤクルトスワローズは今年もリーグ優勝をしており、若手、中堅、ベテランが切磋琢磨しながら勝っているイメージがあります。自分もその中に割って入ってポジションを勝ち取れるようになりたいです」と決意。ロッテファンに向けて「ここまで応援をしてくださったファンの皆様には感謝の気持ちしかありません。本当にありがとうございました。新たにセ・リーグで自分らしいピッチングをお見せできるようにしっかりとアピールして頑張ります」と感謝した。

 ロッテで過ごした7年間、取り組んできたことが無駄でなかったことを新天地となるヤクルトで証明してほしい。それがマリーンズ、そしてファンにとっての恩返しとなるはずだ。

▼ 成田翔の今季ファーム成績
46試 3勝0敗1S 39回2/3 振27 与四死21 防2.27

<右打者>被打率.227(66−15)
3・4月:被打率.400(20−8)振1 与四死1
5月:被打率.200(5−1)振3 与四死0
6月:被打率.000(12−0)振2 与四死2
7月:被打率.250(12−3)振1 与四死3
8月:被打率.200(5−1)振1 与四死1
9月:被打率.167(12−2)振4 与四死1

<左打者>被打率.099(71−7)
3・4月:被打率.188(16−3)振6 与四死5
5月:被打率.111(9−1)振2 与四死1
6月:被打率.000(8−0) 振1 与四死2
7月:被打率.000(8−0)振1 与四死2
8月:被打率.059(17−1)振2 与四死1
9月:被打率.154(13−2)振3 与四死2

取材・文=岩下雄太

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