PK戦は「運」か「技術」か論争に決着? データ分析から見えた“ほぼ100%”決まるコース

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2022年12月10日 10:00  AERA dot.

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クロアチア戦のPKで最初のキッカーとなった南野拓実(写真:新井賢一/アフロ)
サッカーW杯カタール大会で、クロアチアにPK戦で敗れた日本代表。試合後、日本の3選手のシュートがキーパーに阻止されたあのPKをめぐっては、「練習不足」「運だから仕方がない」などさまざまな意見が飛び交った。敗因はさておき、PK戦をどう戦うかを考えるヒントとして、JリーグのPKデータをもとにその傾向を見てみよう。


【PK成功率「100%」のゾーンはここ!】*  *  *
 PK戦でクロアチアに敗退し8強入りを逃した日本。3人がシュートを止められたその内容に、試合直後には「PK下手」「PKの練習」がトレンドワード入りした。


「PKは運」との声もあるが、日本に続きスペインもPK戦で格下のモロッコに敗退。スペインのルイス・エンリケ監督が選手1人につき1000本のPK練習を指示していたことが報じられると、今度は「PKの練習は必要」「練習1000本でも負けるのか」などの声が上がり、PK戦の難しさを物語った。


 さらに、準々決勝でもクロアチアーブラジル戦、オランダーアルゼンチン戦がPK決着となった。


 サッカーや野球競技などスポーツのデータを分析する「データスタジアム」によると、W杯でPK戦が導入された1978年の大会以降、PK決着となった試合は今回の日本戦までで31試合ある。


 PKでは先攻チームが有利という説もあるが、結果を見れば先攻が15勝、後攻が16勝と拮抗している。ちなみに日本ークロアチア戦の前までは先行チームが6連敗しており、日本で7連敗となった。だが、それ以前は先攻が9連勝している。また、クロアチアは前回ロシア大会で、2試合をPK戦の末に勝ち抜いている。


 果たして、PKは運次第なのか。はたまた、練習で技術を磨くことにより勝つ確率が上がるのか。


 データスタジアムのサッカー担当アナリスト・滝川有伸(とものぶ)さんは「PKは運に左右される部分もありますが、データから考えると技術の要素の方が大きいと思います」と話す。


 W杯の数字ではなくあくまで参考ではあるが、Jリーグオフィシャルスタッツ「J STATS(ジェイスタッツ)」をもとに、データスタジアムが分析したPKに関するデータを見てみよう。



 現在のJリーグではPK戦は採用されていないので、試合中のPKデータになるが、それによると2018〜22年の5シーズン、J1〜J3で計5314試合が行われ、PKの機会は1002回あった。


 うち、成功したのは806回(GKがはじいたボールやバーに当たり跳ね返ったボールを味方が得点したケースは除く)。最も成功率が高いのは20年の83・4%(総数187回・成功156回)で、最も低いのは21年の78・5%(総数163回・成功128回)。成功率はおおむね80%前後で推移している。


 では、キッカーは枠内のどこに蹴っているのかを見てみよう。


 ゴールを「上下」と「左・中央・右」の6つのゾーンに分けたデータでは、


・左上 88回(8・8%)
・中央上 50回(5・0%)
・右上 66回(6・6%)
・左下 390回(38・9%)
・中央下 77回(7・7%)
・右下 291回(29・0%)


 枠外に蹴ってしまったり、ポストやバーに当ててしまったのは40回(4・0%)だった。


 次は、蹴った回数と成功数、成功率を並べてみる。


・左上  88回−成功88(100%)
・中央上 50回−成功48(96・0%)
・右上  66回−成功65(98・5%)
・左下  390回−成功310(79・5%)
・中央下 77回−成功55(71・4%)
・右下  291回−成功240(82・5%)


 これらのデータを基に、滝川さんはこう指摘する。


「上のゾーンは100%に近い成功率です。5年間で、たったの3本しかセーブされていません。選手もそれは分かっていると思いますが、やはりバーに当てたり、その上に外してしまうという重圧から避けてしまうのでしょう」


 さらに細かく、右足のキッカー、左足のキッカーに分けたデータを見ると、蹴る方向に顕著な傾向があることが分かる。


 6つのゾーンのうち最も多く蹴っているのは、右足はゴール左下(総数848回のうち344回、40・6%)で、左足はゴール右下(154回のうち58回、37・7%)。左右ともほぼ4割をそこに蹴っているのだ。また、右足が右下に蹴った割合は27・5%、左足が左下蹴ったのは29・9%で、逆サイドとの差も大きい。


「ボールの強さや、真ん中寄りかポスト寄りかなどの違いを考慮しても、4割というのはかなり高い確率だと言えます。早く動きすぎるとキッカーに読まれてしまいますが、キーパーにとっては一つの根拠になる数字だと考えます」(滝川さん)


 各ゾーンの成功率を見ると、


・左上  右足76回で成功76 左足12回で成功12回(いずれも成功率100%)
・中央上 右足41回で39回(95・1%) 左足9回で成功9(100%)
・右上  右足55回で成功54(98・2%)左足11回で成功11(100%)
・左下  右足344回で成功274(79・7%) 左足46回で成功36(78・3%)
・中央下 右足67回で成功48(71・6%) 左足10回で成功7(70・0%)
・右下  右足233回で成功195(83・7%) 左足58回で成功45(77・6%)


 となっている。


 滝川さんはこう締めくくる。


「Jリーグのデータを見る限り、練習によって上に蹴る技術力を高める必要もあるでしょう。また、これは難題ですが、外すのが怖いというPK特有のプレッシャーをどうクリアしていくかも重要になります。特にW杯のような大会では様々な方法でPK戦に対する準備をして臨んだ方が、勝ち抜ける確率は高まると思います」


 南アフリカ大会に続き、PKに涙をのんだ日本。「PK力」の獲得にどう向き合っていくのか、今後に注目が集まる。(AERA dot.編集部・國府田英之)


このニュースに関するつぶやき

  • 普段の練習は必要だろうけど、いくらデータを揃えてもW杯のノックアウトラウンドのPKに100%はないよ。バッジョだって外すんだ。
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