家族のための認知症介護ガイド まずはどこに相談?

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2022年12月10日 11:11  ノーツマルシェ

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ノーツマルシェ

まさか自分の親が認知症になるなんて…

2022年に総務省統計局から発表された日本の高齢者(65歳以上)人口は、3627万人(※1)。そのうち6人に1人が「認知症」で、2025年には5人に1人が認知症になるという推計があり、認知症は超高齢化社会で暮らす私たち誰にでも起こり得る状況です。「まさか、自分の親が認知症になるとは思っていなかった」という話もよく聞きますが、もう他人事ではありません。この記事では、筆者が健康管理士・ケアクラークとしての知識と自分の家族の介護経験をもとに「家族のための認知症介護」についてお伝えします。


 


認知症って実際どういうこと?

認知症は、脳の病気や障害など様々な原因により認知機能が低下し日常生活全般に支障が出る状態をいいます。代表的な認知症は4種類あり、アルツハイマー型認知症、血管性認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症です。その中で最も多いのは、アルツハイマー型認知症で、脳神経が変性して脳の一部が萎縮していく過程で起きる認知症です。


 


もしかして、うちの親は認知症かも?

実際に「うちの親は認知症かも?」と感じたら、次のことに気をつけてみてください。たとえば、朝食に何を食べたか忘れる「加齢によるもの忘れ」と、朝食を食べたこと自体を忘れる「認知症によるもの忘れ」は大きな違いがあります。「認知症によるもの忘れ」は、何度も同じ話をしたり聞いたりします。新しいことを覚えられなかったり、料理や掃除など順序立てて行動することが難しくなります。また、今日が何月何日何曜日かが分からなかったり、季節に適した服装が選べないなど、様々な症状がでたりします。


 


まず、どこに相談すればいい?

親が認知症かもしれないと感じたら、まずは頼れる相談先を見つけることをお勧めします。筆者の今までの経験から「どこに相談すればいい?」と聞かれた時には、「まずは地域包括支援センターに相談するのがいいと思います」と回答しています。


「地域包括支援センター」は各自治体にあり、認知症に限らず高齢者の暮らしに関わることに幅広く対応してくれるはずです。その他、かかりつけ医や市町村役場に相談するのもよいでしょう。 また、認知症コールセンターという電話相談ができる制度があり、全ての都道府県指定都市に認知症コールセンターが設置されているそうです。


 


介護保険制度を利用するためには「要介護認定」

同居家族や離れて暮らしている家族のために「介護保険制度」を利用するためには、要介護認定が必要です。市町村役場(高齢者福祉課など)で、介護保険制度を利用するための要介護認定の申請ができます。また、経済面の負担を軽減する各種制度の申請もできるそうです。


 


やってはいけない対応、うまく収まる具体例

例えば、「自宅にいるのに家に帰りたいと言い出す」ケースについて。そのような発言に対して、驚いたり戸惑ったりしながら「変なことを言わないで」など、現在いる場所が自宅だと説得しようとしていませんか? 筆者が実際に成功した対応例は、まずは相手に「今どこに居るのかと、どこの家に帰りたいのか」を聞きます。そして「では、家に帰りましょう」と声をかけ、外に連れ出して5分ほどドライブしてから、もといた場所(自宅)に帰るという対応でした。なぜ、この対応ができたかというと、筆者がケアクラークとして仕事をしていた時に、認知症の人には帰宅願望があること、そしてよい対応例を聞いていたからです。


認知症といっても種類は多く、様々な症状が出ることがあります。また本人の生活習慣や環境によっても対応は変わってくると思います。よい対応方法を知っていると困らずに済むので、まずは認知症を知ることをお勧めします。認知症介護については参考になる本がたくさんあるので、図書館で借りて読んでみるのもいいですね。


 


介護する自分の心と身体のケアも忘れずに

介護を毎日続けていると、どんな方でもしんどくなってきます。「この状態がいつまで続くの?」という気持ちが大きくなり、介護相手に優しく接することが難しくなります。実際、筆者も義父母の介護経験をしました。当時は介護保険制度もなく、頑張りすぎた結果一週間入院(食事とトイレとひたすら眠る)をして、小学生だった自分の子ども達にも大変な思いをさせたり、いろいろなことがありました。今現在は、当時の経験と介護保険制度によって、老齢の父母の介護を姉家族と協力して行うことができています。


長期にわたる親の介護を続けるためには、介護から離れて心も身体も休む時間も必要です。介護する側の自分自身が、少しでも「しんどいな」と思った時はケアマネージャーさんなど信頼できる人に相談して、一時的に介護から解放される時間を作るレスパイトケア(※2)も検討してみてくださいね。


[執筆:林 裕美(健康管理士/心理カウンセラー)]


【参考】
※1. 総務省『統計からみた我が国の高齢者』2022年9月18日発表
※2. レスパイトケアとは、介護にあたる家族が一時的に介護から解放されるよう、公的サービスなどが介護を行うさまざまな支援サービスのこと。レスパイトとは「休息」「小休止」「息抜き」を意味する言葉です。


※画像: A_Team / PIXTA(画像はイメージです)


このニュースに関するつぶやき

  • 外に連れ出して5分ほどドライブしてから、もといた場所(自宅)に帰る 徘徊や家にいて帰宅でよく言われるが、沢山面倒を見る人がいないと度重なって確実に潰れますから。それが負担ってわからんか?
    • イイネ!9
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