スマホ高騰 これから日本は「修理して長く使う」が主流になる?

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2022年12月10日 11:52  ITmedia NEWS

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Appleも2022年4月から米国で「Self Service Repair」をスタート

 スマートフォンの価格も、ハイエンドモデルの10万円オーバーは珍しくなくなった。「iPhone 14 Pro」の約15万円は、昨今の傾向からすれば、わからなくもない。だが、いわゆる“並”モデルである「iPhone 14」の約12万円は、ちょっと待って、と腰が引ける。



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 下の娘のスマホが5年目を迎え、そろそろ限界ということでiPhone 14 Proをねだられたが、ごめんちょっと無理、ということで、iPhone 14で「妥協」してもらった。とはいえ、延長保証などを入れたら、14万円以上である。子供へのプレゼント(?)としては、破格の値段だ。



 営業や打ち合わせなどで外に出る機会の多い社会人なら、スマートフォンは社会活動を営む際の最重要ツールであり、使用頻度からしても10数万円のデバイスを2年ぐらいでどんどん買い換えて行くというのはわかる。だが日中のほとんどを学校で過ごす子供たちや、社内勤務、在宅ワークがメインの人達にとって、スマートフォンはそれほど利用時間が長いわけではない。



 筆者は2年ごとに買い換えれば残額の支払いが不要となる「au アップグレードプログラムEX」で、「iPhone 12 mini」を購入した。先日その2年が経過するので、買い換えを促す連絡が来たのだが、見送る事にした。



 2年前には、スマホなんてバンバン買い換えるだろと思っていたわけだが、よくよく考えると、これ永遠に2年ごとに機種変していくのかと。そもそも今のスマートフォン、2年で買い換えて正解と感じられるほど、進化するのか。



 どこかで2年ごと買い換えの終わりが来るのだとしたら、最後には全額支払いとなる。このままiPhoneの値上がりが続くなら、最後はものすごく高いモデルを全額支払いすることになるのではないか。それだったら、本体価格が安いモデルのうちにこのプランを終わらせた方がいいのではないか。



 「スマホはバンバン買い換えるのが正解」は、もう違ってきているのではないか。



●米国で始まった「修理する権利」



 「購入した機器を自分で修理する権利」というのをご存じだろうか。始まりは2012年、米国マサチューセッツ州で、「自動車所有者が修理する権利法」が制定されたことである。車検制度がない米国では、自動車整備は所有者の選択と責任であることが、権利の制定に繋がっていった。



 電化製品の場合、その修理はメーカーに委ねられる。メーカーが修理不能といえば買い換えるしかないわけだが、そこに消費者の多彩な選択肢の1つとして、「自分で修理する」が権利として認められるべきという考え方は、SDGs的視点でも歓迎された。



 2021年7月に米連邦取引委員会(FTC)が「修理する権利」に関する法律の施行を可決、続く2022年には電子機器を対象とした「修理する権利」を定める法案がニューヨーク州議会で可決されると、Appleなどスマートフォンメーカーは購入者が自分で修理する「セルフリペアサービス」を提供し始めた。



 iPhone 14も設計が変わり、ガラスパネルやバッテリーの交換がしやすいようになった。もっともこれは、生産拠点が変更になったため、製造の難易度を下げる目的という説もある。



・「iPhone 14」をiFixitが分解 「数年に1度の大改善」と高評価



 一方日本でも、スマホの自己修理は、権利として認められていくのだろうか。これには、かなりのハードルがある。



 まず第1に、現行法では技適マークのあるスマートフォンなどを分解すると、改造とみなされて電波法違反となる可能性があることだ。たとえ分解前とまったく同じように組み立て直しても、一旦中を開けた以上、改造していないという証拠がない。また純正部品からサードパーティ製部品への交換は、改造とみなされる可能性は高い。電波法違反は非常に罪が重く、1年以下の懲役、または100万円以下の罰金が科せられる。



 法的に修理が可能なのは、メーカーか、メーカーから委託を受けた正規修理事業者に限られる。街の修理屋で、格安バッテリー交換などと謳う事業者もあるが、メーカーからの委託を受けていない事業者に依頼した場合は、その利用者が修理品の電源を入れて電波を発した時点で違法となり、利用者が刑罰の対象となり得る。例え技術的に問題がなくても、法解釈としてはそうなるという事である。



 ましてや自分で分解して修理するなどは、当然アウトという事になる。自動車の車検制度みたいに、資格を持った事業者が検査して技適マークを張り直すみたいな仕組みも考えられなくもないが、検査費用を考えると自分で修理した方が高く付きそうである。



 しかしその一方で、古いiPhone向けに自分で修理するためのパーツがAmazonなどで普通に手に入るという現実もある。まずは技術的に可能かどうかの前に、電波法の改正を行なわなければ無理というのが、日本の現状だ。



 もう1つは、修理の難易度である。スマートフォンのパーツは、それぞれがかなり小さく、指でつまむと中まで指が入らないので、ほとんどはピンセット作業である。電源は切ってあっても、バッテリー自体は生きているため、触る場所に気をつけないとショートする恐れがある。また先端の尖ったピンセットでバッテリーの表面を傷付けるといった事になれば、リチウムイオン電池の安全性は大きく下がる。



 実際問題として、メカ的、電気的知識に加えて手先の器用さが問われるため、普通の人が誰でもできるものではない。もちろん、修理に失敗しても誰の責任でもなく、自分のせいである。修理する権利は、これを受け入れられるかとのセットになる。



●修理して長く使うという選択肢



 実際、スマートフォンの耐用年数は何年と考えるべきだろうか。パソコンでは、10万円を超えて減価償却となる場合、法定耐用年数表では4年と決められている。一方スマートフォンは税法上とくに決められているわけではないが、パソコンのような電子計算機であると考えれば4年、電話設備その他の通信機器と考えれば10年という事になる。製品寿命として考えれば、4年が妥当なところであろう。



 一方GoogleのPixelシリーズにおけるセキュリティアップデート保証を1つの期限として考えれば、耐用年数は5年という事になる。使用するアプリのアップデートの射程範囲ということを考えても、4〜5年は妥当なところかもしれない。



 これまで我々はケータイ時代からの習慣として、新機種がでるたび毎年買い換えていたり、キャリアの2年縛りで購入してきた。だがすでにキャリアから買うという必然性もなくなり、ましてや並モデルでも10万円超えれば減価償却の対象になる事から考えれば、今後は2倍以上の期間使う人が増えてくるだろう。



 こうした動きに備えて、すでに修理業務を行なう事業者は、修理の需要増加に備え始めている。NTTドコモでは、従来預かり修理で2週間程度要していたところを、店舗に修理スタッフを常駐させることで、最短60分に短縮するという。最初はGalaxyのみだが、これは修理パーツの供給ルートが確保できたからで、他の機種も順次始まっていくだろう。家電量販店でも、スマホの修理受付を上階から1階へ移す、受付時間を延長するなどの動きも見られるところだ。



 一番大きなポイントは、日本はもはや十数万円の機器を毎年や2年ごとに買い換えられるほど、裕福な国ではくなったということである。スマホを買うときは、修理を前提で延長保証や修理保険に加入するというのが当たり前になってくるだろう。



 加えてスマートフォンの進化も、2年程度ではたいして違わなくなってきている。筆者も今年Pixel 4aからPixel 6aに買い換えたが、それは下取り価格がなかなか良かったからであり、Pixel 4aが遅くてどうにもならなかったかというと、そういうわけでもない。カメラもこれ以上高画素になったらファイルが重たくなって、内部ストレージやクラウドバックアップ領域を圧迫することになり、メリットがない。ネット上で拡散される画像として、どのみちハンドリングのよい画素数にシュリンクされるだけだ。



 搭載カメラ数も、結局はズームレンズがないことから、画角違いのカメラを複数搭載しているだけの事である。広角方向はもう一段落して、あとは望遠がどれだけ必要かという事になっている。実際ワイド方向は歪みの関係から必然的に限度があるが、望遠側はいわばキリがない。そんなに望遠が必要ならば、ちゃんとしたカメラを使うべきだろう。



 サイズ感、持ちやすさなどの評価軸もあるが、所詮は平たい板である。画面が折りたためることも1つのトレンドとなりそうだが、スマホがここまで丈夫になったのは、稼働部がほとんどないからである。稼働部が増えれば、堅牢性は下がる。したがって耐用年数も下がる。



 また新しい付加価値も生まれてくるのかもしれないが、今のスマホは、これはこれである意味完成してしまったとも言えるのではないか。電車通勤がなくなった昨今、使用スマホを人に見られる機会もめっきり減った。日本における「修理する自由」は、マインド的には「長く使う自由」に転嫁されていくのかもしれない。


このニュースに関するつぶやき

  • 何でバンバン変えるのか、意味が分からない。どうせ大した機能もないのに。使えるのなら30年くらい使いたいのだが
    • イイネ!121
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