3連覇を目指すオリックス・湊通夫球団社長「新しいチームに生まれ変わるのが楽しみ」

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2023年01月05日 05:13  ベースボールキング

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オリックス・湊通夫球団社長 [写真=北野正樹]
◆ 猛牛ストーリー【第51回:湊通夫さん】

 2023年シーズンはリーグ3連覇、そして2年連続の日本一を目指すオリックス。今年も監督・コーチ、選手、スタッフらの思いを「猛牛ストーリー」として随時紹介していきます。

 新年のスタートとなる第51回は、球団社長の湊通夫さん(60)です。社長就任後の5年間で長く低迷していたチームをフロントとして改革。リーグ連覇、26年ぶりの日本一を果たしました。

 今季は主砲・吉田正尚のメジャー移籍で戦力ダウンも懸念されますが、「どのチームもメンバーが替わり横一線。その中で素質のある若い選手が多く楽しみ」とチームの進化に期待。そのうえで、山本由伸のメジャー挑戦にも「夢を持ち、実績を積んでいる選手にはしっかりと考えてあげたい」と理解を示しました。


◆ 「謙虚さだけは忘れないように」

 「2023年、球団は追い風に乗って、恐れることなく攻め続けなければいけないと思っています。ただし、私たちは様々なファンと向き合っていかなければならない仕事です。謙虚さだけは忘れないようにしましょう」

 仕事初めの4日、オリックス本社執行役(グループ戦略部門)で、本拠地の大阪シティドーム社長も兼ねる湊さんは、球団職員とシティドーム社職員に呼び掛けた。


 「昨年はクライマックス、日本シリーズの効果もあり、球団として過去最高の売り上げを記録しました。ファンの方も増えて下さり、グッズ売り上げも含め大きな数字になっています。そこには大きな自信を持っていいと思いますが、我々としては謙虚さを持たなくてはいけないと考えています。『自信』と『調子に乗っている』というのは違います。自信を持ちながらも、ファンの方々と変わらない向き合い方をすることで、ファンの皆様のご期待に応えていきたい」と湊さん。

 リーグ連覇、日本一で伸ばした業績に慢心することなく、「ファンファースト」で仕事に向き合ってほしい。オリックス本社から2011年にオリックス野球クラブ株式会社に異動。2018年1月に社長就任するまで事業本部長などを歴任し、ファン獲得策などに力を注いできた湊さんらしい訓示だった。

 「これだけチームが頑張ってくれているので、ファン獲得を伸ばす努力をしなければいけない。球場でのファンの声援は監督、選手がプレーする時の力になります。やらなきゃいけないことはまだまだあります。私も含めて一番、フロントがしなければいけないことなのだろうなと考えています」とつづけ、さらなるファン獲得にも意欲を示した。


◆ 「チームがどのような変化をしていくのか」

 これまで7年間、打撃でチームを引っ張った吉田がポスティングシステムでメジャーに移籍。国内FAで西武から森友哉を獲得したが、チーム力は未知数。そんな中で、今季は11球団から追われる立場になる。

 「私自身、初体験で楽しみだと思っています。どのチームもメンバーが替わって新しいチームになり、どの監督さんも戦い方を変えてくると思う。新たなシーズンと共に、新たな戦いが始まる。追われるというより、横一線でスタートしてその中で頂点を極められたらいいと思います」

 湊さんはこの状況に楽しみを見出しながら、「チームがどのような変化をしていくのか、という戦いになると思うので、我々としては中嶋聡監督がどのようにやっていくのか期待しています。吉田選手が抜け、森選手が加入し、新しいチームに生まれ変わろうとしていることを、前向きに指揮を執ってもらえる監督だと思っています。監督とチームがうまくシンクロしてやっていける体制だと思います」と、指揮官の手腕に期待を寄せた。


 社長就任後、5年間で2度の優勝と26年ぶりの日本一。チーム強化が成功しているが、「先日、計算してみたのですが4位→6位→6位→首位→首位で、平均すれば3.何位とBクラスなので反省しました。失敗してもオリックス本社が我慢して社長を続けさせてくれた結果が今につながっているのかもしれませんし、結果的にそうなったのかもしれません」と笑わせる。

 就任後の具体的なチーム強化策については「どうすればチームが強くなるのかを考え、指示的なものを簡略化して分かりやすくしました。現場と編成部門の決定メカニズムもすごく明確に簡略化をしました。そういうことをすれば強くなるんじゃないかという、必要条件だと自分では思っていますが、十分条件ではないと思います。それをやったから絶対に優勝できるわけではありませんが、それをしないと勝てないのではないかと思っています」と説明。「だから、そういう人を監督とGM(ゼネラルマネジャー)に置いてやっています」とし、中嶋監督と福良淳一GMのコンビに言及した。


◆ チームを蘇らせた“要因”

 二軍監督を経て、2021年から指揮を執る中嶋監督については「監督、コーチ、選手の軸の中で中嶋監督が上手く軸作りをしてくれている。そこがブレないんですね。選手もブレないところを理解していることが、安心感にもつながっているのかなと思います。軸がブレずにしっかりしているので、動きやすいんじゃないでしょうか」と分析。「選手起用も分かりやすいとかではなくて、こういうチームを作りたい、こういう野球をしたいんだというのが分かりやすいと思います」と印象を語る。

 そして元監督でもある福良GMは、社長就任2年目の2019年6月に就任。オリックスの二軍コーチや日本ハムの二軍監督も務めており、「お二人とも(指導者として)育成からスタートをしている。その後、全体を見る立場になっていただいた結果が、今につながっている」と強調。「そこの配置は成功したな、と思います」と振り返った。


 FAやトレード、外国人の獲得などチーム強化策に関わる部分は、監督とGMが話し合い、球団社長はそれをバックアップする。

 「チームの関係でいえば、私が直接言うのではなく、福良さんに任せています。福良さんと監督がしっかりと話をして、チーム作りをしてくれればいい。私がそこに入っていくわけではありません。私が出来ることは、言われたことに対してバックアップをしていくこと。福良さんの要望があれば、しっかりと応えるということです」

 監督とGMによる一体的なチーム強化策を尊重するというのが基本的な考え。現場と編成部門の決定メカニズムの簡略化が、長期低迷したチームを蘇らせた大きな要因であったといえる。


◆ 「アスリートとしての思いを尊重」

 選手のメジャー挑戦にも、湊さんの考えは柔軟だ。

 メジャー移籍を希望する山本由伸には、「100%が世の中に存在していないので」と前置きし、「ポスティングシステムは、球団との関係や選手本人のアスリートとしての思いを尊重してあげたいということを、判断材料にしている。やはりある程度やることをやって、実績をしっかり積んだ本人が夢をしっかりと持って我々、フロントや監督も含めて理解できるのであれば、考えを尊重してあげたい」と、最大限の理解を示した。


 オフに実現した吉田のレッドソックスへの移籍には「結果的に(譲渡金は)大きな額になりました。きれいな言い方のようですが、お金のためにポスティングを行ったのではなく、アスリートとしての夢を叶えてあげることを優先事項として高いと考えました。実績を積んでいる選手にはしっかりと考えてあげたいということを前提としました」と説明。

 また、「アスリートとしての選手の思いを尊重することで、オリックスでプレーしたいという選手も増えてくるのではないかと考えています」と、ドラフト戦略など人材獲得にプラスに働くことにも期待した。

 20億円以上とみられる譲渡金については、「オフに選手たちが、恩返しをしたいと野球教室で野球のすそ野を広げる活動をしてくれています。チームの強化や施設改善も当然ありますが、野球振興につながるものにも使っていきたいと考えています」とした。


 オリックスとして初めて挑むリーグ3連覇。

 「中嶋さんを二軍監督に招へいした時から同じ考えなのですが、一番はドラフトで獲得した若手が育つことが、強いチームになるために必要だと思います。夢を持ってしっかりと育ってほしいですね。素質のある選手が非常に多く楽しみです」

 常勝チームとして球界をリードしていくことができるか。真価が問われる2023年でもある。


取材・文=北野正樹(きたの・まさき)

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