「逃げずに自分と向き合う」オリックス・宮城大弥がフォーク習得と新たな試み

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2023年01月08日 07:34  ベースボールキング

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WBC公式球でキャッチボールをする宮城大弥[写真=北野正樹]
◆ 猛牛ストーリー【第52回:宮城大弥】

 2023年シーズンにリーグ3連覇、2年連続の日本一を目指すオリックス。今年も監督、コーチ、選手、スタッフらの思いを、「猛牛ストーリー」として随時紹介していきます。

 第52回は、左腕・宮城大弥投手(21)です。2年目の一昨年から先発ローテーションを守り、リーグ連覇、26年ぶりの日本一に貢献しました。

 高卒4年目の今シーズンは、15勝と防御率のタイトルを目標に掲げました。また、フォークボールを習得するとともに、好不調の波をなくそうとこれまで精神的に落ち込むために避けて来た調子の悪かった試合のビデオも見て研究するなど、「逃げずに自分に向き合う」ことを誓いました。


◆ あのツイートに「お礼を言いたいです」

 今季にかける意気込みの表れなのだろう。7日、大阪市内の球団施設で宮城がWBCの公式球を使ったキャッチボールで、フォークを試投した。

 「出来れば出たいと思っています」。前日に先行発表された日本代表・侍ジャパンの12選手に名前はなかったが、「ブルペンにはまだ入っていませんが、遠投もして短い距離でも投げています。公式球は毎日使っていて、キャッチボールでは違和感はありません。早めに仕上げてアピールをし、出られるように頑張りたい」と、シーズン開幕より早く開催されるWBCに照準を当てた調整をしていることを明かした。

 代表に入れば、ダルビッシュ有(パドレス)や大谷翔平(エンジェルス)というメジャーで活躍する投手から多くのことを学べる。ダルビッシュには、興南高時代に「興南の宮城投手いいわぁ。投げ方、球筋、総合的に好きすぎる。俺あんなピッチャーになりたかったわぁ」とSNSで高く評価してもらったことがある。投手として自信をつけることになる大投手からの言葉。

 「ダルビッシュさんにはお会いすることがなかったので、出来たら直接、『ありがとうございました』とお礼を言いたいです」。世界の舞台で、さらに成長した姿を見てもらいたい思いも強い。


◆ 目標に近づくための挑戦

 フォークは完全習得を目指す。「遅いチェンジアップだけでは打者に対応されるので、もう少し速く落ちるボールが欲しかった」と練習を重ねて来た。これまでも試合で投げる機会はあったが「まだつかめていない感覚をつかみたい」という。

 そんな中で、WBC公式球は「いつも使っているボールより、よく落ちると感じた」といい、「そんな球種もあるよ、と打者に思わせることが出来る」と自信を見せる。

 さらに「いつも打たれる時はワンパターンになってしまう。もう一つの球種があればカバーすることが出来て、打者に対して優位に立てる。初球からでも、2ボールからでも投げられるのが理想のフォーク」と、シーズンを見据えて投球の幅を広げることに意欲を示す。

 個人の目標は、15勝と防御率のタイトル。自分でコントロールすることが難しい勝ち星と違い、投球内容が反映される防御率にこだわる。昨季1.68で2年連続して防御率のタイトルを獲得した山本由伸に対し、宮城は3.16。「毎年、1点以上離されているので、勝負が出来るように頑張りたい」と日本のエースに挑む。


◆「嫌な試合は一切見なかった」

 新たな試みも取り入れる。これまで避けて来た調子の悪かった試合の映像を見るという。

 13勝(4敗)を挙げた21年は8月下旬から1カ月以上、勝ち星から見放され、11勝(8敗)の22年は6月下旬から8月中旬まで勝てなかった。データ全盛のプロの世界。勝てない理由は自分が誰よりも分かっている。

 ただ、試合を振り返らなかった理由は、別のところにあった。

 「昨年、一昨年は、失敗をしたら気持ちの切り替えに2、3日かかったりするなど、どうしても切り替えられない部分があったんです。落ち込んでしまう性格なので、嫌な試合は一切見なかったし、野球自体を見ることが出来ませんでした」

 「でも、素晴らしい投手の方たちは、どの試合も見ていると聞きますので、自分もいい時と悪い時のどこが違うのかなどを研究して、もっといい方向に進められたらと思っています。今までは逃げていましたが、今年はそれを見て学ぼうかなと。もう少し自分のことを分かって成長するため、もっと自分と向き合おうと考えています」

 弱い自分をさらけ出し、現実を直視することで弱点を克服し強く生まれ変わる。1メートル71の小さな左腕が、大エースに羽ばたこうとしている。


取材・文=北野正樹(きたの・まさき)

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