
冷え性と睡眠障害…血液循環が悪く深部体温を下げにくい
脳や内臓など体の中心部の体温を深部体温といいます。深部体温は1日のうちで、1〜1.5度ほど上下します。夕方から夜にかけて最も高くなり、そのあと次第に下がって早朝に最低になります。眠気が強くなるのは、深部体温が下がるときです。さらに眠りにつく前に一旦体温を上げておくと、そのあと体温が急激に下がるタイミングで入眠しやすくなります。ところが、冷え性の人は血液の循環が悪いため、深部体温を効率よく下げられません。これが冷え性による睡眠障害の大きな原因です。
解決法は、ゆっくりとお風呂に入ること。入浴により深部体温が上がるだけでなく、手足の血管が開いて血行がよくなります。体の中心の熱が血液で手足に運ばれ、手足で放熱されることで、深部体温が下がりやすくなるというわけです。
できれば寝床につく1時間ほど前にお風呂に入ると、寝つくときにちょうど体温が下がってきて眠りやすくなります。お湯の温度は、38〜40度のぬるめがおすすめです。お湯が熱すぎると交感神経が刺激されて、眠気が減ってしまうからです。浴槽に10〜20分ほど入っていると、体がポカポカしてきて手足の血行が良くなります。
連続して20分以上入っていると、のぼせてしまうことがあります。そんなときはかけ湯をしてまず入り、頭を洗ってまた入り、体を洗ってまた入るようにするとよいでしょう。全身浴でなくても、半身浴でもかまいません。ただし、冬には体を冷まさないために、浴室を暖めておく必要があります。
|
|
布団の中では大きな筋肉を温める…湯たんぽも効果的
電気毛布は手っ取り早く布団を温めてくれますが、睡眠の質の点から見ると、使い方に一工夫が必要です。眠っている間は体温が下がることで、眠りが深くなります。ところが、電気毛布をつけっぱなしでいると体温が下がらず、眠りの質が悪くなってしまいます。
眠る前に電気毛布で布団を温めておき、寝床につくときには電気毛布を切るか、タイマーで1時間後に切れるようにしてください。プログラムタイマー機能がある電気毛布なら、目覚める1〜2時間前から再びオンになるようにしてもよいでしょう。
最近では省エネの観点から、湯たんぽを愛用する人が増えてきました。湯たんぽで体を温めると免疫力が上がる、という研究もあります。冬の風邪・インフルエンザ対策にもなりますね。湯たんぽは電気毛布と違い、時間とともに温度が低くなります。そのため、体温の自然な低下を妨げず、睡眠の質を悪くしません。
|
|
体を温める食品・香辛料で、冷え性体質の改善を目指す
基本的に、体温より温かいものを食べましょう。冷たいものを食べると、それだけで体温が奪われてしまうからです。サラダより温野菜、冷奴より湯豆腐がおすすめです。少なくとも、冷蔵庫から出したものは常温に戻してから食べましょう。よくかむことも大切です。かむとあごの筋肉で熱が作られ、胃腸の働きも活発になります。また、リズムよくかむと脳のセロトニン神経が活発になり、日中の眠気も抑えられます。早食いで肥満ぎみの人は、一口に30回かむことでダイエットを目指しましょう。
また、次に挙げる体を温める食材をとるように心がけてください。ただし、塩分はとりすぎると血圧を上げるので、注意が必要です。
・冬が旬のものや根菜類: レンコンやゴボウ、ニンジンなど
・寒い地域でとれるもの: サケやタラ、リンゴなど
・色が黒いもの: 昆布や黒ゴマ、玄米など
・乾燥したもの: 高野豆腐や干しシイタケ、燻製(くんせい)など
・塩分が多いもの: 漬物や味噌(みそ)、塩辛など
・発酵したもの: 納豆やぬか漬け、チーズなど
調理法でも、温めること以外の工夫が必要です。唐辛子やショウガ、コショウなどの香辛料を使ったり、片栗粉(かたくりこ)や葛粉(くずこ)でとろみをつけたりすると、体を温める料理に変わります。
|
|
坪田 聡プロフィール
日本を睡眠先進国にするため、正しい快眠習慣の普及に努める専門医。日本医師会、日本睡眠学会、日本コーチ協会所属。医師とビジネス・コーチという2つの仕事を活かし、医学・生理学と行動計画の両面から睡眠の質の向上に役立つ情報を発信している。(文:坪田 聡(医師))