紅白は「若者偏重」なのか? NHKチーフプロデューサーは「否定」キャスティングの裏側

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2023年01月26日 11:30  AERA dot.

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紅白のエンディングでは、アーティストらが一堂に会する。「2022年がどんな1年だったかを音楽を通じて伝えたい」と加藤さん(photo NHK提供)
 昨年の大みそかの「第73回NHK紅白歌合戦」は、第2部の平均世帯視聴率が35.3%と、前回より1ポイント上がった。数字が上向いた一方、若者に人気の出場者が目立ったことから、「若者偏重」という声があがっている。「紅白」の制作統括を務めたNHKの加藤英明チーフプロデューサーが、その裏側を語った。AERA 2023年1月30日号の記事を紹介する。


【写真】加藤さんが実際に使っていた昨年末の「NHK紅白歌合戦」の台本はこちら*  *  *


──若い世代に人気のアーティストが多数出場することから、若者偏重になっているという指摘もあるが、きっぱりと否定する。


 僕としては、若返らせたいと思ったことは一度もないんです。キャスティングを決めるときは、CDなどのフィジカルから配信、合算と複合的に指標を見ます。それに加えて、電話とネットで世論調査をやって、見たいアーティストと世の中で売れているアーティストのリサーチもしています。ただ、そうしたときに突出して売れているのが若い方だというのは事実で、その結果を無視することはできません。


 一方で、数字を上げるためにというと生々しいですが、紅白に関しては40代以上の方にも見ていただかないと、満足いく結果が出せないということもわかっています。



■平和と愛を掲げた理由


──だが、反省もある。


 最初の発表で若いアーティストの名前ばかりを並べてしまいました。若者偏重だという指摘はここ数年言われていて、世の中にそうしたイメージが広がっている。特別企画としてユーミンや安全地帯、桑田佳祐さんの企画や加山雄三さんといったベテランアーティストの発表もしましたが、世間のイメージをふまえると、事前の打ち出し方も工夫できたんじゃないかと思っています。


 バランスよく年代をとって作ったつもりですが、若者偏重だと言われてしまうイメージが定着してしまったのは残念ですね。


──今回の紅白は、3年ぶりに渋谷のNHKホールに満員の観客を迎えて開催した。


 これまでアーティストのなかには、コロナ禍で活動ができず、年末にみんなで歌を歌いましょうという気持ちになりづらいという方もいたんです。それが今回は「LOVE & PEACE」というテーマも含めて、「自分たちが1年間のなかでやってきたことを伝える場があるとうれしい」という方が増えました。



──「LOVE & PEACE」には、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻に向けての思いも込めた。


 去年の一番大きなニュースの一つであるウクライナ侵攻について、音楽番組でどう伝えるかというのはすごく難しかったですが、そこに賛同してくれるアーティストもいました。


 今の音楽番組では、あまり使わない言葉ですよね。でも、1960年代から言われてきたこの言葉をあえて掲げて、音楽が伝えてきた平和の尊さや愛というメッセージを再確認する紅白にしたかった。


■紅白は「時代の絵巻物」


 今回の紅白には、軍事侵攻など世界中で起きている悲しい出来事を受けて歌を作ったアーティストが2組出ています。一人はMISIAさんで、「希望のうた」という楽曲をNYに暮らす矢野顕子さんに依頼して作ったそうです。


 そしてもう一人は桑田佳祐さんで、佐野元春さん、世良公則さん、Charさん、野口五郎さんという同級生4人と一緒に「時代遅れのRock’n’Roll Band」という曲を作った。「この頃『平和』という文字が朧げに霞んで見えるんだ」という歌詞で始まる曲ですが、この曲に込めた思いやシンガー・ソングライターが果たすべき役割についての話を桑田さんから聞いて、「LOVE & PEACE」のテーマを思いついたと言っても過言ではありません。


 紅白は一見お祭りに見えるのですが、時代の絵巻物だと思っています。2022年は桑田さんのようなアーティストが平和への思いを新しい作品に込めた年でもあり、そこにあるメッセージを届けずしてどうする、と思ったんです。なので、何がなんでも桑田さんには出ていただきたかった。ご出演いただけて本当によかったです。


──今年の大みそかには、第74回紅白歌合戦が控えている。どんな紅白であってほしいかを問いかけると、やはり数字への思いが返ってきた。


 デジタルであれ放送であれ、より多くの人に見てもらえたという結果を追求していかないとダメだと思います。視聴率が下がっても、デジタルが劇的に伸びる可能性もあります。紅白を楽しんだと思う人が減っていくようなら、その使命は終わりに近づいていきますから。


 テレビだけではない楽しみ方ができるだけに、何が結果なのか、時折わからなくもなります。ただ、今回は少し上向いたという手応えはあるので、視聴者の紅白への期待を裏切らないということを忘れずにあってほしい。


 次もチーフプロデューサーをやりたいか、ですか? サラリーマンなので、やれって言われたらやりますけど、言われないと思います。もういいですよ(笑)。


(構成/編集部・福井しほ)


>>【前編の記事】紅白「終わるかもしれない危機感あった」 NHKチーフプロデューサーが明かした数字への思い

※AERA 2023年1月30日号より抜粋


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  • NO JAPANの韓国勢を多く起用した事について、金出してる受信者の不満に対してどう責任を取るのかを示してくれ。責任を取らないのなら観たくないので解約させてくれ。
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