医学生は20年前に比べ勉強内容が倍以上に 真面目にやっていない学生は実技試験で珍回答も

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2023年01月27日 07:00  AERA dot.

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医学部は合格するのが難しいことで有名ですが、医学部入学後も学ばなければならないことがたくさんあります。そのカリキュラムは20年前の倍以上になっていると、近畿大学医学部皮膚科学教室主任教授の大塚篤司医師は語ります。


*  *  *


 いまの医学生は20年前に比べ勉強する内容が倍以上に増えています。私が医学生だったころは、医学部6年間で医学を本格的に学び始めるのは3年生からが一般的でした。1年生、2年生では教養の授業がメインであり、3年生で基礎医学がスタート、5年生から臨床実習という流れです。現在は1年生の段階から基礎医学を学び始めないとカリキュラムが終わらない内容となっています。これは、医学部6年間で覚えなければいけない内容が増えたことのほか、アクティブラーニングや診察技術の習得など、知識を詰め込むだけではない授業ができたことに起因します。



 診療技術の授業ができたことで変わったこともあります。例えば、皆さんは総合病院などの大きな病院を受診した際に、医者から自己紹介をされたことはあるでしょうか?「初めまして、大塚です。よろしくお願いいたします」といった具合にです。


 私が医学生だったころに、患者さんを模擬診察する試験が始まりました。診察の初めには自己紹介をちゃんとしましょう、と年配の先生たちからぎこちなく教わり、この自己紹介は実技試験の採点項目になりました。そのため、若い先生の多くが診察の初めに自己紹介をするようになりました。


 模擬診察は、いくつかの場面を想定して行われます。意識がない人を発見した場合、腹痛を主訴に受診した患者さん、手を切ってしまった患者さんの皮膚の縫合、などです。


 大学の教員となってから、この模擬診察の試験監督をするようになりました。緊張して試験を受ける医学生には申し訳ないですが、この試験監督はとても楽しいものです。


 4年生が行う皮膚の縫合の試験では、人の皮膚によく似た素材を使って学生には実際に縫ってもらいます。準備から糸結びまで一連の流れを採点します。


 試験開始と同時に、手袋のサイズを学生に聞くのですが、この段階でさまざまなハプニングが起きます。手術用の手袋は一般的に使われる手袋とはサイズが違います。S、M、Lという分類ではなく、数字でサイズがわかれるのが手術用の手袋の特徴です。私は6.5か7の手袋を使うのですが、実習を真面目にやっていない医学生は手袋のサイズを聞かれてもわかりません。小さすぎる手袋を選んでキツキツの状態で縫合をする人、反対にブカブカの手袋でやりにくそうに皮膚を縫う人などさまざまです。サイズを聞かれて堂々と「Lです」と答える学生はたまにいるのでこちらも対応可能なのですが、予想していない返事は笑いをこらえるのに必死です。10年以上前の出来事ですが、一度「26.5です」と靴のサイズを答えた医学生がいて、その後の試験は笑いをこらえるのが大変でした。そんな彼もいまでは立派な医者になっています。


 医学部6年間では多くのことを学びます。そして、失敗ができるのは学生のうちだけです。6年間でしっかり学び、良い医者になってほしいと思います。



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