『100万回 言えばよかった』佐藤健の“言わなくていい”台詞が響く、特殊な設定の妙

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2023年01月27日 07:10  ドワンゴジェイピーnews

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「俺が 死んでたとしても 前に進もう」

井上真央佐藤健松山ケンイチがさすがの演技力でストーリーに引き込んでいく金曜ドラマ100万回 言えばよかった』(TBS系、毎週金曜よる10時)。悠依(井上真央)の恋人である直木(佐藤健)は、何らかの事件に巻き込まれ、死んだときの記憶がないまま幽霊になってしまう。直木の姿が見える刑事・魚住(松山ケンイチ)を介して、悠依は直木の存在を感じられるようになった。


直木が幽霊であることは特異な設定だが、それによって生まれるこのドラマならでは魅力はさまざまだ。
悠依には直木が見えないし、声も聞こえない。触わることも触わってもらうこともできない。直木がろうそくに息を吹きかけても炎は揺れない。だからこそ…



先週の第2話。美容師の悠依が職場のロッカーでおにぎりを食べていると、幽霊の直木が「食えばいいってもんじゃ…あ〜あ」と具ナシのおにぎりにあきれ顔。すると「お昼食べてるだけで優秀」と悠依が独り言。会話が嚙み合って、直木は「えっ?」とびっくりする。腰を痛がっている悠依に、直木が「一回座っちゃうとね〜」と寄り添う言葉をかけると「立ち仕事はねぇ」と悠依。また嚙み合ったことに驚き「え…」。直木に影響されずに芝居をする井上真央と、セリフ回しやリアクションでクスッと笑わせる佐藤健が、見えなくても聞こえなくても通じているかのような二人の関係性をコミカルに表現していく。
仕事に戻り笑顔で働く悠依を、店内で頬杖をついて愛おしそうに微笑む直木。彼女の職場で仕事中に堂々と見つめられるのは幽霊くらい?

そんな幽霊のことが見える魚住。刑事の同僚に防犯カメラに映った直木の説明をしながら、「最近 この男の幽霊が見えるんです」と言うと同僚はポカン。真面目なシーンにも一気にオチがつく。
事件について話を聞きたい魚住だが、直木の部屋の前で「やっぱりちょっとここは…」と気まずそう。「傍からみたら二人だけなわけですから 時間も遅いですし」と悠依を帰そうとすると、直木から「あっ!ちょっ…何考えてんすか あなた警察…」とジロリ。「警察官ですから」とカクッと口角を上げて善良な笑顔をキメる魚住。松山ケンイチのひょうきんで豊かな表情が見られるのもドラマの楽しみの一つだ。


事件当日の直木の話を聞いていくなかで、コミカルなやりとりにキュンも絡んでくる。
悠依と魚住がソファに座ると、二人の間に直木が割って入る。こんなに近い距離で3人がソファに並んで座る光景もちょっと滑稽。魚住が「直木さんここに」と悠依に伝えると「言わなくていい」と直木に睨まれる。

そして第1話の冒頭で悠依が怒りながら掃除機をかけていたシーンとつながる。
「直木わざわざ仕事休んでまで その日は部屋に来てって言うから つい…」プロポーズを期待していた悠依がその先の言葉を言いよどむと、魚住が「うんっ?」と聞き返す。悠依はその先を言わなかったが、横から直木が「結婚したいって言うつもりだった」とはっきりと言葉にする。そのまま復唱しそうになった魚住が思わず「えっ?」と聞き返すと、直木は「言わなくていい」。“言わなくていい”心にある直木の気持ちは魚住にだけ聞こえて動揺。言わなくていいのなら言わないでと訴えても、直木からは「言わせてよ」。その思いをくみ取ってただただ頷く魚住はキュートで温かい。


幽霊となっても存在を感じられることが嬉しい。でも体が拒絶する。
身元不明の男性が発見されたと警察から連絡が入り、悠依は所持品と遺体の確認へ向かう。そこで襲ってきたのは、その遺体が直木だったらどうしようという怖さ。「顔も見えない 声も聞こえない 触れない 触ってもらえない」「体がないって つらい」。涙がつたう悠依の頬を直木は触ろうとしてみたが、やっぱり頬をすりぬけ、涙も手につかない。


でもここで直木は言う。魚住に伝えてもらいながら。


「俺が死んでたとしても」
「・・・俺が死んでたとしても」
「前に進もう」
「前に進もう」


魚住が復唱するのをためらっても「伝えてください」と伝えた言葉は、大好きな悠依を信じる言葉。


回想シーンで、里親の勝さん(春風亭昇太)が亡くなって、悠依は絵本の『100万回生きたねこ』を読んだ。
白いねこが死んで100万回泣いたねこが白いねこのとなりで静かに死んだことに対して、「そんなの私は嬉しくない」「100万回泣いたら そのあとは 元気にピンっピン生きてってほしい」と口にすると、となりで聞いていた直木はじっと悠依をみつめて「悠依のそういうとこさ…」と言って言葉を呑み込む。


「すごく好きだって言えばよかった」。これも魚住にだけ聞こえる“言わなくていい”言葉だった。
先立たれて悲しみにくれても、そのあとは前を向いて生きていってほしい。
「俺が死んでたとしても 前に進もう」
悠依の言葉と直木の言葉が重なる。しかも、直木の言葉を魚住が復唱するという特殊な状況だけど、そうすることでその言葉に強さが加わるような気がする。
直木が幽霊であるという特異な設定から、笑いもキュンも悲しみも強さも生む。「前に進もう」という言葉の響き方が、なんともいえず新鮮で、心の奥をじわりと温めてくれた。



事件の真相を探りながら、この気持ちの揺れを描く脚本。インパルスの板倉俊之演じる謎の男は直木と“同類”と言い、笑いを生むやりとり。


シム・ウンギョン演じる宋先生は魚住を見て「ウソでしょ…」。事件のカギを握りそうな莉桜役には香里奈。『恋つづ』ではドS天堂先生の姉を演じていたが、今作では佐藤とどんな絡みを見せるのか。見どころは尽きず、どんな展開になるのか予想がつかない。ただ、今夜も新鮮で温かい感覚になれるのでは…と期待している。


文:長谷川裕桃



その後、譲は悠依に直木が殺人事件に関与している可能性があると説明する。しかし悠依は、直木の全てを知ってはいないが決して人を傷つけるような人じゃないと確信しており、真相を突き止めたいと訴える。


事件解決に向けて捜査が進む中、譲は田島(少路勇介)と一緒に直木の父親を訪ねる。そこで直木の過去を聞いた譲は、田島に直木のことを打ち明けようと決意。そんな中、直木の母親が悠依に会いたいと言い出し・・・。



■金曜ドラマ『100万回 言えばよかった』
毎週金曜よる10:00〜10:54

ⒸTBS

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