90年代漫画の新人賞が不条理ギャグばかりになったのは?『すごいよ!!マサルさん』 の衝撃と影響を振り返る

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2023年01月27日 07:11  リアルサウンド

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うすた京介のTwitterより @k_usuta


 少年漫画雑誌で最大の部数を誇る「週刊少年ジャンプ」は、新人漫画家の登竜門として「手塚賞」や「赤塚賞」などの新人賞を主宰している。漫画雑誌は各誌が競うように主宰して投稿を呼びかけており、新人の発掘に余念がないが、両賞はその権威といい長い歴史といい、漫画界有数の新人賞だ。


 そんな新人賞の投稿作の動向を見れば、興味深いことがわかるのだという。今、「どんな漫画が流行っているのか」が一目でわかるというのだ。すなわち「投稿者が描いてみたいと思った漫画」の傾向でもあり、クリエイターに刺激を与えた作品と言うこともできる。


 かつて、ある新人賞の審査に加わっていた漫画家が語っていたが、例えば『幽遊白書』がヒットしていた時は、「霊界もの」「バトルもの」で応募する投稿者が多かったという。『北斗の拳』や『AKIRA』のような近未来の荒廃した世界が舞台の作品が流行ったときは、やはり同じような世界観の投稿作が増えたのだそうだ。


 それは当たり前のことかもしれない。漫画を読んで感動し、「こんな漫画を描いてみたい!」と思うことは創作の第一歩だからである。


 ギャグ漫画の新人賞に地殻変動が起きたといわれるのが、1995年から連載開始されたうすた京介の漫画『セクシーコマンドー外伝 すごいよ!!マサルさん』が記録的なヒットを飛ばした時であったといわれる。曰く、新人賞が不条理ギャグ漫画ばかりになったというのだ。具体的な数値はないというが、明らかに、『すごいよ!!マサルさん』に影響された投稿作が多かったといわれる。


 なぜ、『すごいよ!!マサルさん』が投稿者に受けたのか。それはもちろんギャグが面白かったためだが、それだけではないだろう。先の漫画家は、「一見すると、誰でも描けそうな内容だったから」ではないかと分析する。ゆるくて脱力した作風、ヘタウマな絵柄。なんとも表現し難い独特のギャグセンス。確かに、「自分にも描ける!」と思った投稿者が続出しても不思議ではないだろう。


 しかし、当たり前だが、うすた京介のギャグセンスは誰もが真似できるわけではない。結果、投稿作のほとんどがボツになったと思われる。追従する作品はほとんど出現することはなかった。


 こうした傾向は漫画界だけでなく、お笑い界では顕著とされる。ダウンタウンがヒットしたときは、ダウンタウンのような漫才をするコンビが続出したそうだが、やはり独自のエッセンスを加えないと単なる模倣に終わってしまい、ヒットは難しいのだろう。


 とはいえ、新人の感性を刺激する漫画が出現すれば、業界の活性化につながるのは間違いない。応募作の多くは日の目を見ずに終わるかもしれないが、なかには雑誌で連載され、ヒットする作品もあるかもしれないためだ。『すごいよ!!マサルさん』のような、世界を一変させる刺激的な作品の登場を楽しみにしたい。


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  • 自分がその当時漫画とは全然接点のない生活を送ってたのでどんな漫画があったのかを知らない。ましてやギャグ漫画なんぞ何も知らなかった。
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