AI・クラウド技術で特殊詐欺を防ぐ! 市川市で「電話de詐欺」防犯訓練

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2023年01月27日 08:01  マイナビニュース

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画像提供:マイナビニュース
固定電話を持つ高齢者を主なターゲットとした特殊詐欺。犯罪を防ぐための取り組みとして、NTT東日本 千葉西支店と千葉県市川警察署は「特殊詐欺対策サービス」と「シン・オートコール」を組み合わせた「電話de詐欺」防犯訓練を行った。


○特殊詐欺被害撲滅への取り組みを進めるNTT東日本



数多くの啓発が行われているにもかかわらず、減少傾向を見せない特殊詐欺被害。千葉県市川市においてもその被害報告は多く、千葉県警察はこれを「電話de詐欺」と名付け、住民に対し注意を促している。電話やインターネットなどの提供を行っているNTT東日本もまた、地域への貢献、安心安全な生活のために千葉県警察に協力し、防犯に力を注いでいるという。



NTT東日本 千葉西支店の松木氏は、「2020年に市川市と協定を結び、お客さまのご自宅を伺った際に特殊詐欺の注意喚起を促すご案内(チラシ)を配るといった活動を続けています。この活動は市川市を皮切り、千葉県のみならず、他県にも広がりを見せています」と、その取り組みについて説明した。


そのような中、NTT東日本は固定電話を利用した特殊詐欺への新たな対策を打ち出している。それが「特殊詐欺対策サービス」と「シン・オートコール」だ。2022年12月14日に行われた「電話de詐欺」防犯訓練では、NTT東日本 千葉西支店と千葉県市川警察署、東京ベイ信用金庫、そして地域住民により、この2つのサービス等を用いたデモンストレーションが実施された。

○既存の電話にアダプタを取り付ける「特殊詐欺対策サービス」



「特殊詐欺対策サービス」は、通話相手が特殊詐欺犯である可能性があった際に、利用者とあらかじめ登録した親族等に自動で注意喚起アラームを出すことができるサービス。電話機と電話回線の間に「特殊詐欺対策アダプタ」を取り付けることで、通話内容が音声ファイルとしてクラウドに転送される。音声ファイルはAIによって解析され、特殊詐欺と判断される特徴的な文言を検知した場合は、注意喚起が行われる仕組みとなっている。


注意喚起は電話だけでなくメールでも行うことができ、親族の電話番号はあらかじめホワイトリストとして登録することで録音や解析を行わないように設定も可能。さらに迷惑電話をブラックリストに登録し、ガイダンスを流して着信を拒否することもできる。


発表会では、この技術を使ったAI検知デモンストレーションを実施。犯人役が銀行員を名乗って行う詐欺の会話を再現し、AIがその音声を解析して高齢者に「12月14日13時50分電話は犯罪の疑いがあります。ご家族に連絡を取るなど、再度ご確認ください」と注意を喚起する。そして気づいたおばあさんがウソの暗証番号を教えるという寸劇が行われた。


○AIによる音声で電話をかける「シン・オートコール」



「シン・オートコール」は、登録した電話番号に対し、AIが自動で電話をかけたり、SMSを送信したりするシステム。たとえば、地域一帯に避難指示や避難状況確認を行わなければならないような状況において、一斉に電話やSMS連絡を行うことができる。

大きな特徴はふたつある。ひとつ目は、AIの音声読み上げを活用し、オペレーターを介すことなく電話連絡が可能なこと。ふたつ目は、電話の応答状況、SMSの開封状況を蓄積できることだ。主に災害時を想定したシステムだが、今回はこれを詐欺被害防止に活用している。


住民と金融機関、警察が連動して特殊詐欺を防ぐ「『電話de詐欺』防犯訓練」も実施された。これは、AIが詐欺電話を検知すると、シン・オートコールを利用して周辺地域に注意を発報するというものだ。


具体的には、先ほどのAI検知デモンストレーションのような詐欺電話がかかってくると、まず市川警察署へメールで通知される。通知を受けて市川警察署がシン・オートコールを開始すると、事前にシステムに登録してある住民のみなさんと、市川警察署地域の金融機関へ注意喚起の電話発信とSMS送信が行われる。その内容は以下の通り。電話の場合、これがAIの音声読み上げで再生される。


この訓練には一般参加者21名が参加し、途中終了した方が6名、電話に出られなかった方が3名、そして訓練を完了した方が12名という結果になった。一般参加者代表として参加した、迎米自治会 会長の板橋治和さんは「最初の説明などに、ちょっと聞き取りにくい場面もありました。うちの町会には年配の方も多いので、こう1〜2回ほどこういう機会をいただいて、皆さんの意識を高めていきたいと思っているところです」と、訓練の感想について語る。



また、東京ベイ信用金庫 本店で営業課 課長を務める伊藤美里さんは、「このシン・オートコールでは、支店に直接情報が伝達されることで、一分でも一秒でも早く情報が入ること、また金融機関だけではなく、地域住民の皆様にも一斉に伝達されることで、各々が詐欺に対して意識を持つことができ、より詐欺の抑止、地域全体で防犯ができるようになるのではないかと思います」と話した。



さらに、市川警察署 生活安全課の大嵩氏は「今回のシステムは官民一体となった新しい対策です。オートコールシステムは、これまでになかった直接的な注意喚起の手段だと思いますので、大変効果が期待できると思いました」とその防犯効果に対する期待を述べた。


○特殊詐欺を防ぐには連携が欠かせない



市川警察署管内では非常に特殊詐欺の発生が多く、2022年11月末の数字は97件、前年と比べて21件増加しており、被害総額は1億4000万円を超えているそうだ。



「電話de詐欺を知らないという人はほとんどいません。それでも騙されてしまう。ではなぜ被害に遭ってしまうのかというと、犯人グループは非常に言葉巧みなんです。ですから、周りの人が『それ詐欺ですよ』って言ってくれるだけで、犯罪被害は激減すると思います。今回の仕組みはそういったものであります。また、周辺地域に対しても注意喚起できます。率直に申し上げますと、画期的だなと。こういったシステムを開発していただいたNTT東日本のみなさまに、敬意を表するところでございます」(市川警察署 齋藤氏)。


特殊詐欺対策サービスおよび特殊詐欺対策アダプタの利用料は、特殊詐欺の被害を防止するために、このサービスを利用される方を対象とした「福祉割引」を適用した場合、月額440円 (適用しない場合は1,430円)。また市川市では、(特殊詐欺対策アダプタはまだ対象になっていないものの)防犯対策機能を備えた電話機などを購入した際に、一部費用を助成する制度もあるという。



「シン・オートコールによる地域注意喚起」は、希望する地域住民全体が利用することで、よりその効果を発揮するはずだ。NTT東日本と警察、地域住民と金融機関に加え、行政がその後押しをすることで、特殊詐欺を防ぐ連携が強まることを期待したい。(加賀章喜)

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