31歳貯金210万円。60歳までにまとまった金額を貯めたい……

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2023年01月28日 12:21  All About

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社内登用制度で正社員になったという31歳の会社員女性。これまでなかなか貯蓄ができず、老後が不安といいます。漠然と5000万円あれば足りるのではと考えているというが……。FP深野康彦さんがアドバイスします。

このままで資金的に老後は大丈夫でしょうか?

皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。

今回の相談者は、最近、社内登用制度で正社員となった31歳の会社員女性。これまでなかなか貯蓄ができず、老後が不安。漠然と5000万円あれば足りるのではと考えているというが……。ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんがアドバイスします。

相談者

やちよさん(仮名)
女性/会社員/31歳
埼玉県/賃貸住宅

家族構成

一人暮らし

相談内容

大学卒業後非正規で薄給激務な仕事についており、貯金がほぼできず、年のわりに貯蓄が少ないため老後が心配です。

転職し今の職場も非正規雇用でしたが、正社員登用制度で数カ月前より初めて正社員になりました(ボーナスは今年からのため、前年の実績をもとにした見込み額です)。

結婚する気はなく、実家に帰る予定も今のところありません。できればこのまま賃貸で70歳過ぎまで暮らして、体に不自由が出てきたら高齢者向けの物件に移りたいです。

年金も減りますし、老後は甥っ子達に迷惑をかけたくないので、60歳までにまとまった金額を貯めたいと思っています。漠然と5000万円貯めれば安心できると考えていますが、このままで老後は大丈夫でしょうか?

家計収支データ

やちよさんの家計収支データは図表のとおりです。
相談者「やちよ」さんの家計収支データ


家計収支データ補足

(1)加入保険の保障内容
本人/医療保険(終身保障60歳払い込み終了、入院5000円)=毎月の保険料2250円

(2)ボーナスの使いみち(今年度予定)
・通勤用定期券の購入(ボーナス支給月に6カ月分ずつ):14万円×2回=28万円
・趣味・レジャー・衣服美容など:10万円
・家電買い換え用貯金:5万円
・余った分は貯蓄:32万円

(3)趣味娯楽費と資格取得について
現在の内訳は読書、映画鑑賞、ゲームの他に仕事に直結する資格の勉強の支出あり。今勉強している資格に受かった後は、さらに上位の資格を目指すか、英語の勉強をしたいと考えている。

ただし、上位資格を取得しても、公的な給付制度や職場の祝い金を差し引いても12万円ほど自己負担となる。英語の勉強の場合は、勉強期間や英会話教室を未定だが、月1万〜2万円はコストが発生。

(4)食費について
勤務先には基本お弁当を持参しているため、昼食代込みの金額。自炊やスーパーで値引きされたものを買うことが多い。大体何を食べてもおいしいと思うので、旅行に行く時以外はあまり食にこだわりはないとのこと。

職場の人や友人と食事・飲み会をした際は、交際費に計上。外食費としては月平均にならすと3000円ほど。

(5)家計管理と節約について(相談者コメント)
節約のため、月の生活費と足りなくなった場合の予備費を決めて、1週間ごとに管理しています。

また、やり方が合っているのか、節約することで特に苦痛はありません。欲しいものを我慢することはありますが、たんす貯金が貯まったら買おうと目標にしています。

(6)定年と退職金について
定年は60歳。再雇用で65歳まで勤務可。ただし、現在の勤務先は人の出入りが激しく、定年まで勤めた社員もいないため、そこまで勤務するイメージは持てないとのこと。退職金はおそらく250万円ほど。

(7)希望する定年後について
60歳以降は週3日ほどのアルバイトで、月5万円ほど収入を得られればと考えている。体調を見つつ、70歳までにはフルリタイアを希望。

FP深野康彦の3つのアドバイス

アドバイス1:5000万円には届かないが資金としては十分
アドバイス2:60歳以降の働き方で不足が出てもカバーが可能
アドバイス3:家計にはまだ「使える」余力がある

アドバイス1:5000万円には届かないが資金としては十分

まずは試算をしてみましょう。

毎月、普通預金に預金、その他積立が計8万6000円。これにボーナスからの貯蓄分を加えると、年間で約135万円。これを定年までの29年間継続すると3915万円(「iDeCo」「つみたてNISA」は元本のみで試算)。

今ある金融資産を合算すると約4130万円。これに退職金を加えると4380万円。これが定年時に用意できる金融資産になります。

もろちん途中、昇給等により貯蓄額は増加するかもしれません。一方、不定期の支出(医療費、資格取得費用など)もあるでしょう。それらを勘案して、普段の生活費が大きく変わらなければ、きびしめに見ても4000万円は用意できると考えていいでしょう。

ご相談にあります「漠然と5000万円貯めれば安心できると考えています」ということで言えば、1000万円ほど足りないことが想定されます。では、やちよさんの老後はこのままでは資金不足に陥るのでしょうか。

結論から言えば、おそらくそうなりません。それどころか、今のペースで準備して十分だと考えます。

アドバイス2:60歳以降の働き方で不足が出てもカバーが可能

試算を続けます。60歳以降ですが、再雇用の選択肢もあるものの、勤務先の状況で不確定とのこと。

ご本人が希望する働き方として、アルバイトで月5万円ほどの収入を目指すと言われていますので、生活費が今と同じなら月9万円の赤字(毎月13万円にボーナスから捻出しているレジャー費や予備費等を月割りで加算)となります。

公的年金支給開始となる65歳になるまでの5年間で計540万円。これを貯蓄=老後資金から捻出すると、手元には少なくとも3500万円ほどが残ります。

年金額は不明ですが、この老後資金なら65歳から100歳までの35年間、計算上は年間100万円まで生活費の赤字(公的年金だけの不足分)を補填できます。

おそらく、実際は毎月3万〜5万円の赤字でしょうから、100歳の時点でまだ1400万円前後は余る計算になります。これは、一般的な予備費(医療・介護費用など)としては十分な金額です。

また、「体に不自由が出てきたら高齢者向けの物件に移りたい」とのことですが、どういう設備、サービス等の住宅もしくは施設かによって、その費用には大きな幅があります。

ともあれ70歳の時点で3000万円程度はまだ手元に残っていますから、選択肢はそれなりにあると思われます。

加えて、60歳以降の収入を月5万円としていますが、7万〜8万円稼ぐことも可能でしょう。

さらに、試算では65歳以降はリタイアとしていましたが、健康であれば65歳以降も働くことは普通の時代になりつつあります。資金不足と思えば、60歳以降の働き方を変えることで、カバーすることもできるのです。

アドバイス3:家計にはまだ「使える」余力がある

老後資金を4000万円超用意できること自体、実は大変優秀です。それを可能にしたのは、堅実な生活としっかりとした家計管理。保険も含め、家計にまったく無駄がありません。感心するほどです。

ただ、個人的にはもう少し「使ってもいい」と思います。無理に支出する必要はもちろんありません。家計的に支出があと2万円程度増えても、老後生活に大きく影響が出ることはないでしょう。それだけ家計にはまだ余力がある、ということです。

例えば資格の勉強、あるいは趣味や交際費で現状の予算では足りなくなることもあるでしょう。健康面を考えれば、食費もしかり。その時、支出増を恐れてあきらめなくてもいいということ。

また、iDeCoによる還付金やたんす預金は貯蓄せず、自分のために使ってください。

老後が心配なのはわかります。独身であれば頼れるのは自分だけですから。そう考えれば、老後資金は多いに越したことはないでしょう。

しかし、必要以上に不安に思うことは今の生活を息苦しくします。老後まであと30年。転職するかもしれませんし、結婚される可能性も0%ではないはずです。

ご相談を受けましたが、やちよさんは将来のこと、家計のことについては大変意識が高いので、そう心配はしていません。

それでも老後を考えるばかりに、定年を迎えるまでの生活、人生を犠牲にすることがもしあれば、それはもったいないと思います。これからも日々健康で豊かに暮らすことを目指してください。

相談者「やちよ」さんから寄せられた感想

いつも拝読している深野先生にアドバイスをいただけて、大変嬉しく思います。以前自分で試算しても、今のままでは5000万円には届かないしどうしたものかと悩んでいましたが、4000万円でも充分という言葉に肩の荷が下りた思いです。

家計も優秀で心配していないと仰っていただけて、さらに嬉しく前向きな気持ちになれました。また、月2万円くらい自分のために使っても老後に大きな影響はないとのこと、今後の資格勉強や交際費のために有意義な使い方をしていきたいです。

先生が仰る通り、実はiDeCoの還付金もなかったものと考えて貯蓄に回していました。母と旅行に行きたいと思っているので、還付金はその時に使おうと思います。

老後までの人生も犠牲にせず、より豊かに健康に。それを心に留めて、これから転職や結婚があったとしても、家計管理を頑張っていきます。このたびは本当にありがとうございました。

教えてくれたのは……深野 康彦さん

マネープランクリニックでもおなじみのベテランFPの1人。さまざまなメディアを通じて、家計管理の方法や投資の啓蒙などお金周り全般に関する情報を発信しています。All About貯蓄・投資信託ガイドとしても活躍中。

取材・文:清水京武
(文:あるじゃん 編集部)

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