
「こりゃ、なんでぇ(これは何?)」と思わずにいられない珍しい風景やスポットが岡山県内には少なくない。ニヤリと笑っているように見えるでっかい岩、丘の上にデーンと構える巨大な桃、ゾッとするお地蔵様。思わず立ち寄りたくなる場所をエピソードを交えて紹介する。
■三つの割れ目で「笑顔」
瀬戸大橋を望む瀬戸内海国立公園にある王子が岳(岡山県玉野、倉敷市)の山頂近く。ごつごつとした白い花こう岩の巨石群の中で、ひときわ大きな岩がでんと居座る。
三つの割れ目が横に入っているだけだが、目を細めてにんまり笑っているよう。海風を受け、心地よいのだろうか。見ているこっちまでほのぼのとした気持ちになってくる。高さ6mの通称「ニコニコ岩」だ。
「たまの観光ボランティアガイドの会」の大倉和法さん=玉野市=によると、王子が岳は古くから修験道の霊山と知られ、今も石の法具などが残る。「巨岩には神様が宿ると信じられてきた。この岩も神聖なものとしてあがめられたはず」と話す。
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近年は若者を中心に写真映えスポットとして人気が高まっているという。記者が取材した日は結婚式の前撮りでカップルが訪れていた。笑顔は時代が変わっても人々を引きつけ、いろいろな縁をつないできたのだろう。
【アクセスメモ】王子が岳山頂付近の観光駐車場までは瀬戸中央自動車道児島ICから東に約9km、車で約20分。駐車場の南西約200mにある王子が岳パークセンターから、南東に300mほど遊歩道を進むと、姿が見え始める。
■丘に立つ巨大な“桃”
岡山県内有数の桃産地・赤磐市鴨前地区。一面に広がる桃畑の先にある丘の中腹に巨大なピンクの“桃”が見える。
岡山ガス(岡山市中区桜橋)が管理する天然ガスの貯蔵タンクだ。直径21m、重さ260t。約1.5km南を走る山陽自動車道からも見え、まさに「桃のまち」のランドマークとなっている。
赤磐市によると、タンクは元々、薄緑一色だったが、「地域おこしに生かしたい」という旧山陽町の依頼を受けて1999年、同社が色を塗り直した。桃をイメージし、薄いピンクに葉っぱの深い緑色をあしらった。
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同地区は環境省の「かおり風景100選」にも選ばれ、春には辺りが鮮やかなピンクの花で染まる。丘にでんと立つタンクとともに写真映えスポットにもなっている。
同市商工観光課の原征吾主任は「観光バスが高速道路を通りながら案内してくれるほどタンクは有名になった。『赤磐といえば巨大な桃があるところね』と言ってくれる県外の人も多いですよ」と話す。
【アクセスメモ】赤磐市役所から西へ約2km。山陽自動車道山陽ICから車で約10分。問い合わせは同市商工観光課(086-955-6175)。
■義民の歴史物語る地蔵
岡山県北部・津山市二宮の「旧出雲街道」沿い。ひっそりとたたずむ5体の地蔵はどれも頭部がない。「初めて見る人はぞっとするでしょうね」。地蔵の世話をする地元の老人会「むつみ会」の東城達彦会長が笑う。
江戸中期、年貢の一部免除などを求めて作州地域で起きた農民一揆を首謀したとして処刑された5人を哀れみ、設けられたという。ただ、いつ誰がこの地に建立したのかなど不明な点が多い。「6体あったが、遺族が1体を持って帰った」といった逸話も残る。
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むつみ会は1996年、地蔵の雨よけに屋根を設けた。それからは2、3年ごとに慰霊祭を行って前掛けを新調。日ごろは水や花を供えて供養し、街道のまち歩きイベントで訪れる人を迎えている。
「見た目は確かに恐ろしいかもしれない」と東城会長。「でも、その裏には地域のために身をささげた義民の物語があることも知ってほしい」と話す。
【アクセスメモ】「美作国二宮」として知られる高野神社(津山市二宮)から西に約200m。JR院庄駅から徒歩で約10分、中国自動車道院庄ICから車で約10分。近隣に観光用の駐車場はない。
(まいどなニュース/山陽新聞)