中日の内野には2人面白い存在 “下位指名ルーキー”定位置奪取を期待できる選手は

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2023年01月30日 18:00  AERA dot.

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亜細亜大時代の田中幹也
 いよいよ今週キャンプインするプロ野球。ルーキーではやはりドラフト1位の選手に高い注目が集まるが、過去にも下位指名ながら1年目から活躍を見せている選手は少なくない。そこで今回はそこまで知名度は高くないものの、今シーズンが楽しみな“無印ルーキー”をピックアップして紹介したいと思う。今回は野手編だ。


*  *  *


 まずチーム事情を考えても、最も一軍定着のチャンスが大きいと考えられるのは田中幹也(亜細亜大→中日6位)と福永裕基(日本新薬→中日7位)の2人だ。同じ内野手だがその持ち味は全く異なる。田中の持ち味は守備と走塁。166cmと小柄だが、とにかく打球に対する反応の速さと軽快なフットワークは抜群で、広い守備範囲とアクロバティックなプレーは菊池涼介(広島)を彷彿とさせるものがある。ショート、セカンドの両方でプレー経験が豊富なのもプラス材料だ。また相手の隙を突く走塁も大きな魅力で、大学野球で最高峰のレベルにある東都一部で、リーグ戦通算75試合出場で48盗塁という数字は見事という他ない。非力な打撃と3年秋に潰瘍性大腸炎を患っただけに体力面は気になるものの、守備と走塁だけでも大きな戦力となりそうだ。


 一方の福永は強打が魅力の右打者。専修大時代までは広角に打ち分ける上手さが光るタイプだったが、社会人で見違えるように長打力がアップし、大学卒4年目で念願のプロ入りをつかんだ。フォロースルーの大きいスイングで打球に角度をつけるのも上手く、フェンスの高いバンテリンドームナゴヤでも柵越えが期待できる。今年で27歳ということを考えても1年目からが勝負になるだろう。中日はトレードで阿部寿樹、京田陽太が移籍し、さらにバックアップ要員だった三ツ俣大樹も自由契約(ヤクルトが獲得)となり、二遊間はかなり手薄な感は否めない。2位指名の村松開人(明治大)ももちろん候補だが、守備と走塁なら田中、長打力なら福永が上回っているだけに、彼らがレギュラー争いに加わる可能性も十分にありそうだ。


 同じ内野手では奈良間大己(立正大→日本ハム5位)、平良竜哉(NTT西日本→楽天5位)、児玉亮涼(大阪ガス→西武6位)も面白い。奈良間は常葉大菊川時代にはU18侍ジャパンにも選出されており、大学でも1年から活躍。3年秋以降は二部リーグでのプレーとなり、打撃に波があることから低い順位での指名となったが、走攻守全てにおいて高いレベルを誇り、プレーに華があるのも魅力だ。キャンプでも一軍メンバーに選ばれており、二遊間のレギュラー争いに加わることも期待できるだろう。


 平良はパンチ力が光る強打者タイプ。上背はないものの全身を使ったフルスイングは迫力十分で、レベルの高い社会人でもコンスタントに長打を放ち、2年目の昨年は不動の中軸として活躍した。守備はそれほど目立たないものの、積極的な走塁も光る。阿部寿樹が加入したことで内野の競争は激しいが、貴重な強打の右打者だけに持ち味を発揮して1年目からアピールしたい。


 児玉は九州産業大時代から抜群の守備力が光っていたショート。166cmと上背はないが動きに力強さがあり、肩の強さも申し分ない。課題だった打撃も社会人の2年間でだいぶ力強くなった。チームは二遊間の控えが手薄で、貴重なバックアップだった山田遥楓もトレードで移籍しているだけに、1年目から一軍定着のチャンスもあるだろう。


 外野手で楽しみなのが杉沢龍(東北福祉大→オリックス4位)だ。東北高校では1年夏に1番、ショートで甲子園に出場。大学進学後に外野手に転向すると、3年春からは4季連続でベストナインを受賞し、4年春には三冠王に輝くなどリーグを代表する打者として活躍した。175cmと決して大柄ではないが、下半身が強く、ヘッドの走るスイングで長打力と確実性を兼ね備えた打撃は大学球界でもトップクラスだ。また外野の守備と脚力も高いレベルを備えている。チームの外野手争いは激しいが、主砲の吉田正尚が抜けただけに、その穴を埋める候補の1人として期待したい。


 プロ入り前に評価の高かった野手も入団後に苦しむケースは多いが、その一方で一昨年の中野拓夢(2020年阪神6位)、昨年の野村勇(2021年ソフトバンク4位)、上川畑大悟(2021年日本ハム9位)のように下位指名でプロ入りした選手でも、いきなり活躍する選手は確実に存在している。今年も彼らのように意外な選手が飛び出してくることを期待したい。


(文・西尾典文)


●プロフィール
西尾典文 1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行っている。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。



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  • 上川畑は年俸が9位のそれじゃなかったから、即戦力で考えられていたと思う。田中幹也は、病気がなければ1・2位で消えていたし、少なくともスーパーサブで一軍定着は堅いと思う。
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