高校生の意欲を奪う7つのNGワード…断定・否定の「助言」は毒になる【公認心理師が解説】

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2023年01月30日 20:52  All About

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18歳で成人になるからといって、プレッシャーを与えるようなネガティブな助言を繰り返すのは逆効果。子どもの決断力を阻害し、社会で生きることへの自信を失わせてしまうかもしれません。

「大人になる」ってどういうこと? 18歳成人を迎える子どもたちに

高校生の年代は、成人になる準備をする年頃です。法律上では2022年4月より、18歳で「成人」とされ、大人としての責任を引き受けることが求められます。しかし高校生の年代の子どもたちは、まだ「大人になる」とはどういうことなのか、自覚するのが難しい面もあるでしょう。

「大人になる」とはどういうことか、心理学的立場から説明すると、「アイデンティティを明確にし、社会的責任を果たしていくこと」といえます。アイデンティティとは、自分らしさや自分らしい生き方のこと。社会的責任とは、社会を構成する一員としての自分の立場を自覚し、社会に貢献する行動をとる責任です。

高校生の年代の子の関心は? 社会的責任の前に「アイデンティティ」を重視

たとえば、憲法には「教育、勤労、納税」という国民の三大義務が定められており、この3つは日本人に求められる代表的な社会的責任です。多くは高校生は免除されていますが、大人になれば、いずれ果たさなければならない義務です。

しかし、社会的責任のためだけに生きるのはむなしいことでもあります。早くからそのような考えに捉われると、自分を「社会のコマ」としか思えなくなり、生きている意味がわからなくなってしまうことさえあります。

たとえば「偏差値を上げれば、いい大学に行けて、安定した会社で働けるよ。納税だって楽にできるよ」などと、「社会的責任の履行に有利な生き方」についていくら力説したところで、子どもは魅力的に感じないでしょう。強調すれば、反発されるだけです。

高校生の年代の子がいちばん大切に感じるのは「自分らしさ」。つまり「アイデンティティ」に根付いた進路や生き方を見つけることです。まずはこのことを理解した上で、社会的責任を果たす方法を考えさせることが大切です。

高校生の子に避けるべきアドバイス…可能性を閉ざす7つのNGワード

高校生の年代の子には、無限の可能性が眠っています。ですが未来の自分像は漠然とし、将来のビジョンを描けていない子の方が圧倒的に多いでしょう。「幸せな大人」になるためには、アイデンティティに根付いた進路を自分で模索することが必要です。そのためにも、大人は高校生の子の可能性を閉ざすような言葉を繰り返さないよう、気をつけなければなりません。

たとえば、次の7つは子どものためを思っての言葉であり、リスクを回避して幸せな人生を歩んでほしいという親心から出てくる助言かもしれません。ですが、こうした言葉を繰り返されると、子どもは自分のアイデンティティを見出せず、何のために大人になるのか、わからなくなってしまいます。

・「あなたの力じゃ、○○(特定の大学、仕事)はあきらめた方がいい」
・「夢みたいなことを言ってないで、現実的な進路を選びなさい」
・「その分野に進んだところで、稼げないからやめなさい」
・「就職に有利だから、○○(大学、理系、医療系など)に行きなさい」
・「あなたは〇〇(特定教科など)が苦手だから、その分野は避けるべき」
・「あなたは〇〇(特定教科など)が得意だから、この仕事に就くべき」
・「女にはその分野は無理。女性が働きやすい分野に行きなさい」

筆者自身の失敗談…大人の助言で進路選択してしまった大学時代の後悔

実際に、筆者自身も高校時代に周りの大人から上のような言葉をかけられ、アイデンティティが曖昧なまま成人になった……という苦い経験があります。

筆者は高校時代から心理学やソーシャルワークに関心があったのですが、大学では英語英文学科に進みました。理由は「心理学には統計学があるから、数学が苦手だと無理」「仕事が少ないからやめた方がいい」といった教師や親の助言に従ったからでした。

一方で受験英語が得意だったため、「英語ができるんだから、その力を活かすべき」「英語を使えれば仕事でも有利」といった助言を真に受けて、メリットの多そうな英語英文学科に進んだのです。

しかし、入学してから非常に後悔しました。たしかに受験英語は得意でしたが、大学で学ぶマニアックな英語英文学にまったく興味がわかず、授業をサボッてはサークルやバイトに逃避する日々。当然、就活もうまくいきませんでした。

結局、30代に入ってから心理学やソーシャルワークを学び、カウンセラーになったのですが、高校時代、他人の助言に惑わされず、自分の心で感じていた「アイデンティティのタネ」をもっと大切にしていたら……。青年時代に意欲的に学び、もっと自分らしい人生を築いていたのかもしれないと、50歳を過ぎた今でも感じているのです。

カウンセリングでも多い「アイデンティティの迷子たち」からの悩み相談

実際、カウンセラーとなった今も、アイデンティティを深めずに進路を選んだ人たちの迷い、むなしさをたくさん耳にしています。

「就職には理系が有利」と勧められて理系の大学に進み、好きになれない授業に辟易しながら、やりたいことが分からず、劣等感を深めていく人。「医療系はどこでも食べていける」と言われて医療職に就いたものの、対人支援に関心を持てずに疲弊する人。「子育てと仕事の両立はなかなか難しいよ」と言われて、キャリアを中途半端に考えた結果、後悔している人。

自分の心で感じる「アイデンティティのタネ」を無視して、「何が有利か」という周囲の助言ばかりに耳を傾けて進路を決めると、いずれはアイデンティティとのミスマッチに悩み、貴重な青年期のエネルギーを将来のために活かせなくなってしまいます。

断定・否定は「呪文」となり、子どもの決断力を阻害してしまうリスクも

だからこそ、大人は子ども自身が悩みながら見出す「アイデンティティのタネ」をまずは大切に受け止め、そのタネの活かし方を子どもが主体的に考え、納得した進路を選べるように導いてあげることが必要なのです。

成績だけを見て「あなたには無理」と断定したり、損得勘定で「その分野では稼げない」などと端から否定したりしてしまうと、その言葉は「呪文」となり、子ども自身が自分らしい人生を見出す力を阻んでしまいます。ぜひ、子どもの可能性を広げるためにも、上記の7つのNGワードをかけないように気をつけましょう。

そして、子どもが進みたい道、子どもが考える人生の展望に耳を傾けて、自活しながらもその道が実現できる方法をじっくり時間をかけて一緒に考えていただければと思います。

大美賀 直子プロフィール

公認心理師、精神保健福祉士、産業カウンセラー、キャリアコンサルタントの資格を持つメンタルケア・コンサルタント。ストレスマネジメントやメンタルケアに関する著書・監修多数。カウンセラー、コラムニスト、セミナー講師として活動しながら、現代人を悩ませるストレスに関する基礎知識と対処法について幅広く情報発信を行っている。
(文:大美賀 直子(公認心理師))

このニュースに関するつぶやき

  • そのNGワードは子供が生まれた時点からNGだと思っていた。高校生なら既に知識や経験として分かっている。そこに意志や意地があるかが問題だ。あえて言う事で踏み台にも地雷にもなる。
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