ミラーレス一眼は今年どう変わる? 4年ぶり「CP+」で見極めたい4つのトレンド

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2023年01月31日 10:02  ITmedia NEWS

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「CP+2019」の様子。このあと、3年間リアル開催が行われなかった

 2月23日から26日まで、横浜市のみなとみらいにある「パシフィコ横浜」で「CP+2023」が開催される。もう忘れてる人もいるかもしれないけど、カメラやレンズや写真用品のメーカーが一堂に介して自由に触ったり質問したり解説を聞いたりできるので、写真好きにはたまらないカメラの見本市だ。



【その他の画像】



 これが実に久しぶりのリアル開催なのである。



 なにしろ2020年は開催直前ギリギリになって、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の影響で中止。あれはほんとにギリギリだった。覚えている人も多かろうが、日本で最初の感染者が確認されたのが1月15日、横浜港に寄港したクルーズ船で感染者が判明したのが2月4日。このときはこの感染症について分からないことが多かったのに、開幕まで2週間を切った2月14日になって開催中止を決定したのである。あれは英断だったと思う。



 CP+は会場で実際にカメラを手に取り、グリップを握り、ファインダーを覗いてシャッターを押してみるという体験が欠かせないイベントなので、感染症に対してより敏感にならざるを得ないのだ。



 翌年の「CP+2021」はコロナ禍の中、オンラインのみの開催。



 昨年の「CP+2022」はコロナ禍も落ち着いてリアルとオンラインの同時開催を目指しつつも、直前のオミクロン株の流行によりまたもやリアル開催が中止になった。だからCP+2023はほんとに久しぶりのリアル開催なのである(正式にはリアル+オンライン開催)。



 久しぶりなので、最近カメラや写真にハマったのでリアル開催を知らない、って人はぜひ体験してほしい。



●CP+へ行く前にトレンドをチェック



 で、CP+2023をにらんでちょいと最近のカメラのトレンドの話でもしたい。



 基本的にデジタル一眼のミラーレス化はほぼ完了。各社ともラインアップには残っているけど、うちはミラーレスじゃなくて一願レフでいくぞ、と明言してるのはペンタックスだけで、そのペンタックスは残念ながらCP+に出展しない。



 なのでミラーレス一眼の話だ。



 ミラーレス一眼全体のトレンドで注目したいのは4点。



・イメージセンサーの進化



・機械学習を駆使した賢いAF



・動画性能の進化の方向



・レンズのバリエーション



 順番に見ていきたい。



●イメージセンサーの進化



 何はともあれ、カメラの心臓部はイメージセンサーだ。画素数だけを観ると大きな変化はないけど、大事なのはそこじゃない。



 その注目ポイントは2点。



 1つはAF。かつて像面位相差AFはイメージセンサーの一部のピクセルを位相差AF用に割り当てていたのだけど、AF用ピクセルが少ないとAF性能が上がらないし、多すぎると画質が落ちる。



 でもそこに出てきたのがデュアルピクセルCMOSセンサー。1つのマイクロチップレンズの下に2つのフォトダイオードを並べた構造を用い、全画素でAFを行うことで暗所でのAF性能やより正確なAFが可能になり、画質も落ちない。



 それをさらに細かくしたのがマイクロチップレンズの下に4つのフォトダイオードを持つ「クアッドピクセルAF」。スマートフォンのハイエンド機でよく使われてるけど(例えばiPhone 14 Proがそうだ)、ミラーレス一眼でそれを明記したのはOMDSの「OM-1」だ。



 スマホのセンサーではもう当たり前のように使われてる。



 もう1つ大事なのは、センサーの読み出し速度。



 これが速いとAF演算の速度も上げられるし、電子シャッター撮影時のローリングシャッター歪みも抑えられる。スペックでは分かりづらい重要ポイントだ。



 特にミラーレス一眼にとって大事なのがローリングシャッター歪みだ。



 電子シャッターでの撮影は、メカシャッターを使わないので、シャッターの動きによる振動が発生しない、シャッター音が出ない、シャッタースピードを上げられる、機械的な動きが発生しないので連写速度も上げられる、というミラーレスのメリットを活かす機能なんだが欠点が2つあった。



 1つは高速な被写体を撮ったときの歪み、もう1つはメカシャッターの音や振動がないから気分が上がらない……まあ気分の問題はおいとくとして、歪みだ。



 CMOSセンサーは順次読み出しという構造上、最初と最後でタイムラグが発生するので、高速に動くものを撮ると歪みが出る。こんな感じ。



 今のCMOSセンサーではこれをゼロにできないけど、読み出し速度を上げれば歪みはかなり減る。それに寄与するのがより高速な信号処理が可能になる積層構造のセンサーだ。



 ソニー「α9 II」の商品説明ページには「回路部を画素領域とは別の層に積層配置することで、高速信号処理回路を大幅に拡張しました。さらに、膨大な出力信号を内蔵メモリーに一時保管することで、信号を滞らせることなく高速に処理ができるため、画素領域からの読み出しスピードは従来モデル比 約20倍以上の高速化を達成」とある。



 ただ、採用してるのはハイエンド機のみで、ソニーなら「α1」やα9II、ニコンなら「Z 9」、キヤノンなら「EOS R3」、富士フイルムなら「X-H2S」、OMDSなら「OM-1」と限られる。



 富士フイルムの場合、積層型センサーを採用したX-H2Sと非積層型で画素数を上げた「X-H2」を比べると、画素数で少ないX-H2Sの方が約5万6000円高いなど、コストへの影響が大きいのだろう。



 実際にどのくらい違うのかというとこのくらい。



 積層型センサーのiPhone 14 ProとOM-1はやはり優秀で、意外にα7RVの歪みは大きい。α7RVの歪みが大きいのは画素数が多いのも関係してるだろう。ほんとはα1やZ 9などでもやってみたいのだが、条件を合わせるための方法を統一したのが最近のことなのでご勘弁を。



 Z 9のように読み出し速度を十分高速にしたことでメカシャッターを廃するという大胆な設計に出たカメラもあるが、それは例外だ。



 当然、電子シャッターなんて使わない、連写なんて秒10コマあれば十分、という人、歪みよりも高画素による画質が重要という人もいるわけだが、デジタルカメラが電子シャッターをより活用する方向に進化していくのは間違いないわけで、この辺も注目していきたいのだ。個人的には、積層型センサーのコストが下がり、ミドルクラスのカメラにも採用される時代が来てほしい。



●機械学習を駆使した賢いAF



 ディープラーニングなんてカメラの世界ではまったく縁遠かった単語や概念が出てくる昨今だけど、要するに、最新のAI的手法を駆使して「AFが賢くなる」技術と思っていい。



 それが被写体自動検出AFなわけだ。



 人体の検出や顔検出、瞳検出までは数年前に出そろい、その後、動物検出、鳥検出と来て、Z 9に至ってはさらに、車・バイク・自転車・列車・飛行機と全9種類である。



 2022年は富士フイルムのXシリーズもOMDSのOM-1も被写体自動検出AFを搭載してミラーレス一眼をラインアップする全社が対応することになった。



 最新モデルでいうと、ソニーのα7RVは昆虫の検出にも対応している。富士フイルムのX-H2Sもファームアップによって昆虫とドローンの検出に対応した。



 でも、いちいち撮りたい被写体を設定しなきゃいけないのはめんどくさいよね。



 というわけで「自動被写体自動検出」……なにいってんだか分かんないけど、検出対象を指定しなくてもOkってカメラも出てきた。



 最初はたぶんニコン。Z 9で「被写体検出設定」に人物・動物・乗り物に加えて「オート」が用意された。



 続いてキヤノン。EOS R6 IIで同じく「オート」で自動認識してくれる。



 オートにしておけばファインダーを覗いたとき、そこに被写体になるものがあれば自動的に合わせにいくのは感動的だ。



 ただ、認識対象が広くなればなるほど撮りたい被写体を100%捕まえるのは不可能になるので、オートで捉えた被写体が意図と違っていたとき、簡単な操作で(スティックを倒すとか)瞬時に次の候補に移れる仕組みは必要になるだろう。全自動認識になったけど「間違ったらごめんね」では現場で使えないからね。



 でもAFが賢く速くなるのはいいことで、こなれてくれば使い勝手はぐんと上がる。



●動画性能は進化の方向が大事



 もはやどのカメラも動画性能を強化してるわけだが、面白いのはハイエンド機がガチの映像作品撮影系に向かう中、その真逆のカジュアルな動画撮影に力を入れたモデルがでてきて人気なこと。



 筆頭がソニーの「VLOGCAM」だが、ちょっと前になるけどパナソニックの「G100」、その後に出た富士フイルムの「X-S10」もその系統に入るかと思う。ニコンの「Z 30」はいわずもがな。



 動画はユーザーによって必要な機能性能が変わってくるのだけど、ミラーレス一眼のエントリー機はソニーのVLOGCAMが切り開いた市場に向けた動画モデルになっていくのだろうなという感じがある。



 動画はスペックよりも自分が必要とするものをちゃんと持っているかが重要だ。



●レンズラインアップの多様化に注目



 フルサイズミラーレス一眼が続々と登場したときは、まずはクオリティ重視ということで大きくて重くて高性能で高画質なレンズがずらっと出てきた。



 でもここ数年は機動力を重視した軽くて扱いやすくてリーズナブルなレンズが続々と出てきて面白くなってきてる。



 カメラ内での収差の補正技術が上がって補正ありきの設計ができるようになったことや、高感度時の画質が昔よりぐんと上がったことで、レンズが多少暗くても速いシャッタースピードを維持できるようになったのが大きい。ちょっと前までは躊躇してたISO6400やISO12800なんて感度でも使えるようになったからね。



 レンズに関してはサードパーティーも含め、バリエーションがどんどん増えてるし、ソニーも20-70mm F4という広角に振った標準ズームレンズを出すなど、一眼レフ時代の慣習にとらわれない焦点距離のものが出つつある。特に広角系が面白い。



 大きくて重くて高性能なレンズから、小さくて軽くてお手頃なレンズまで幅広く揃ってきたのである。



 カメラ好きにとっては、cp+はそういう新しい試みのレンズを片っ端からチェックできる良い場になるはず。



 と、ざっくりと昨年までのトレンドを見つつ、久しぶりのリアル開催でそれらに触れるから楽しみだねー、的な話をしてみた。



 今年、CP+に向けた新製品が発表されるか、久しぶりのリアル開催がどんな雰囲気になるのかはまだわからないけど、盛況であることを期待しております。


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