クレイトン・カーショーは「サッカーのワールドカップを見て、代表のユニホームを着ることは特別だと感じた」とチームのニュースサイトで語った(写真:UPI/アフロ) 野球のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)が1カ月後に迫ってきた。今回は日本も米国も大リーグの一流選手をそろえる。AERA 2023年2月6日号の記事を紹介する。
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第5回WBCは3月8日に台湾で開幕し、決勝は米国で同21日にある。20チームが参加。1次リーグは4組に分かれ、上位2チームが準々決勝に進む。1次リーグB組で中国、韓国、チェコ、オーストラリアと対戦する侍ジャパンのメンバー30人の全容は1月26日に明らかにされ、「過去最強」の呼び声が高い。
その理由は大リーグ選手の大量参戦だ。ダルビッシュ有(パドレス、36)、大谷翔平(エンゼルス、28)、鈴木誠也(カブス、28)、吉田正尚(レッドソックス、29)、日系人のラーズ・ヌートバー(カージナルス、25)の5選手の出場が決まった。
侍ジャパンを取材するスポーツ紙記者は、こう語る。
「彼らは他国・地域の大リーグ選手と対戦しているので特徴を把握している。実際に対戦した感覚というのは重要です。侍ジャパンは2013年の第3回大会で大リーグ選手6人が出場を辞退。日本野球機構(NPB)所属の選手だけで臨み、準決勝でプエルトリコに敗れました。17年の第4回大会も大リーグからの参加は青木宣親(あおき・のりちか 当時アストロズ、現ヤクルト、41)のみ。NPBの選手の力が劣るわけではなく、大リーグの選手が加わることで情報戦でも大きなプラスアルファが生まれます。また、大谷は投打の二刀流で世界のトップであることを証明している。一緒にプレーする選手のモチベーションも高くなるでしょう」
NPBからも大リーグ選手に見劣りしないメンバーが集結した。日本選手過去最多の56本塁打を放ち、史上最年少の三冠王に輝いた村上宗隆(ヤクルト、22)、史上初の2年連続「投手5冠」を獲得した山本由伸(オリックス、24)、史上最年少の20歳5カ月で完全試合を達成した佐々木朗希(ロッテ、21)らだ。日米通算190勝の田中将大(楽天、34)が落選したことからも、特に投手陣がハイレベルなことがわかる。
■準決勝で米国と激突か
他の強豪チームも大リーグの一流選手をそろえた。第3回大会の優勝国・ドミニカ共和国やプエルトリコ、ベネズエラが優勝候補に挙げられるが、侍ジャパンの前に立ちはだかる一番の難敵は米国だろう。順調に勝ち進めば準決勝で激突する。
その顔触れはまさにドリームチームだ。野手陣を見ると、大谷とチームメートで米国代表の主将を務めるマイク・トラウト(エンゼルス、31)は「大リーグ最強の打者」の呼び声が高い。18年にレッドソックスでア・リーグ最優秀選手(MVP)に輝いたムーキー・ベッツ(ドジャース、30)、昨季ナ・リーグMVPのポール・ゴールドシュミット(カージナルス、35)、昨季打点王のピート・アロンソ(メッツ、28)もいる。
投手陣も、通算195勝右腕のアダム・ウェインライト(カージナルス、41)、抜群の安定感を誇るリリーバーのデビン・ウィリアムス(ブルワーズ、28)らが名を連ねる。さらに通算197勝左腕のクレイトン・カーショー(ドジャース、34)も参戦の意向を表明した。
■大会連覇へ士気は高い
米国に駐在する通信員が、米国が最強チームを結成した背景を明かす。
「トラウトが大会の1カ月半以上前に参戦の意思を示したのが大きかったです。他のスター選手たちも『WBCに出たい』と名乗りを上げた。米国は当初、WBCに冷ややかだった。第1回大会から大リーグ選手は出場していましたが、シーズン前の調整という雰囲気で緊張感がなかった。大リーグが世界一というプライドもあったと思います」
「もともと米国民の関心度も低かった。潮目が変わったのが、初めて頂点に立った17年の大会でした。『4度目の正直』で結果を出し、注目度が高まった。米国代表に入るのがステータスになり、スター選手たちが本気で臨んでいる。大会連覇に向けてチームの士気は高いです」
(ライター・今川秀悟)
※AERA 2023年2月6日号より抜粋
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