Cygamesが運営する漫画アプリ「サイコミ」のWebブラウザ版が、1月30日に大幅リニューアル。これによってWebブラウザからでも、アプリと変わらず無料話から最新話まで、サイコミの連載漫画すべてが読めるようになりました。
今までのWeb版は無料公開話のみ閲覧が可能など、アプリとは異なる仕様でしたが、リニューアルによってアプリと同等の機能を持つようになります。そこで今回は、この大胆なリニューアルを機に、気になる使い勝手や、サイコミのこれまでとこれからについて、編集長の葛西歩さんにお話を聞きました。
●「サイコミ」葛西歩編集長 インタビュー
――まずはサイコミ創刊のきっかけと、成長の歴史を教えてください。
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サイコミ編集長・葛西歩さん(以下・葛西) Cygamesの主たる事業が「ゲーム」なのですが、“「ゲーム」以外でも10年後、20年後のCygamesを支える新たなIPコンテンツが必要”“横の広がりも狙いやすいIPは漫画だ”、という会社の意向のもと、サイコミは2016年5月に創刊しました。
創刊後しばらくは、Cygamesのコンテンツのコミカライズとオリジナル漫画で運営していたのですが、徐々に人員や体制も整い、本格的に「オリジナル漫画でヒット作を生み出せる」土壌ができました。そこで2018年11月にサイコミの「再創刊」を機に、オリジナル漫画の新連載を一気に多数開始して、ラインアップを拡充。さらにほぼ全ての作品を週刊連載にしました。
その後も掲載漫画のヒットやアニメ化・ドラマ化などのメディアミックス、システムの充実、UIの変更などを重ねまして、ありがたいことに現在進行形で右肩上がりの成長が続いています。
●Web版リニューアルで、アプリ版と同等の体験に
――今のタイミングでWeb版をリニューアルするのはなぜでしょうか。
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葛西 Web版のリニューアルはずっとしたいと思っていました。当初はリソースをアプリに集中させていた事情もあり、サイコミが大きく成長した今だからこそ実現できた、満を持してのアップデートといえます。
――Web版とアプリ版の違いや、Web版のみの新機能などがあれば教えてください。
葛西 むしろ、機能に差はなくなりました。今後はブラウザでもアプリでも同じよう「サイコミ」を楽しめます。Webとアプリのアカウントをリンクさせる機能もあります。選択肢を提示するというのがリニューアルの一番の理由で、ライフスタイルに合わせて好きな方で漫画をお楽しみいただければと。
――Web版とアプリ版で読者層に違いは?
葛西 アプリ版は漫画愛好家やサイコミの漫画が好きなヘビーユーザーの方向け、Web版は検索してやってきたユーザーさんや新しい漫画を手軽に楽しみたい方向け、という想定はあります。それに合わせてインタフェースを作り分けていますし、それぞれの想定ユーザーに適したコンテンツの表示を行っています。
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漫画アプリの話に限らないのですが、容量の問題などで「スマホに新しいアプリは入れたくない」と考える方もいらっしゃるので、Web版のリニューアルはそのような要望をかなえると同時に、サイコミのコンテンツに触れていただくにあたって、そのハードルを限りなく低くしたい、という狙いもあります。
――ほかの漫画アプリやサイトと比較して、サイコミが力を入れている点を教えてください。
葛西 漫画作品1つ1つのクオリティーの高さと、連載作品を週刊連載にしていることです。
サイコミはほかの漫画アプリに比べて連載の数を絞っています。これは「クオリティーにこだわったオリジナル漫画を、週刊連載で提供しよう」という思想からです。
リソースを集中させて、クオリティーの高い漫画を作り続ける。そして、連載を週刊にして、常に毎週、新しい漫画を提供し続けることで「ユーザーさんがアプリを開けば、いつでも新しい漫画が楽しめる」状態が続くようにしています。
●まず「少年漫画」をしっかり作る
――サイコミを開いたら「まずはこれを読んでほしい」という、おすすめの作品があれば教えてください。
葛西 ……全部ですね(笑)。作家さんと編集部で力を合わせて、全ての漫画を最高に面白い作品に仕上げていますので。
とはいえ、全ての漫画を読むのは時間的にも難しいでしょうし、人によって好みのジャンルや好きな絵柄などあるかと思います。まずは新連載や作品一覧を見ていただいて、ピンと来たものを読んでみていただければと思っています。
――サイコミのヒット作としては、バトルものの『TSUYOSHI 誰も勝てない、アイツには』や、特に女性読者からの支持も厚い『明日、私は誰かのカノジョ』など、作風が幅広いイメージがあります。特に力を入れているジャンルはありますか。
葛西 どんなジャンルでも面白い漫画なら載せたいと思っています。それが前提とはなりますが、まず「少年漫画」をしっかり作る、という方針はあります。今後もバトルやスポーツなど、少年漫画作品は育てていきたいと思っています。とはいえ先ほども申し上げました通り、特定ジャンルに「だけ」力を入れたいとは思っていないので、最重要課題である「大ヒットIPを生み出す」ために、最終的にはどんなジャンルでも大ヒットを送り出していきたいです。
●サイコミ編集部について
――新たな才能の発掘はどのように行っているのでしょうか。
葛西 作品を投稿していただく「サイコミ漫画賞」を開催しています。寄せられる作品は非常にレベルが高く、魅力的なものが多いので、審査の際には編集部一同で頭を悩ませつつ、うれしい悲鳴を上げています。
――SNSなどもチェックされていますか。
葛西 もちろん、SNSやWebもチェックしていますし、そこからお声がけもさせていただいています。そこは他の媒体さんとあまり大差はないのかな、と思います。
――サイコミでの連載を狙っている人へのアドバイスなどがあればお願いします。
葛西 特に伝えたいのは、サイコミは最初から連載を狙っていけるという点でしょうか。例えば賞を取って担当がついたら、「まずは読み切りを描きましょうか」ではなく、面白そうで売れそうな作品ができれば、すぐに連載開始となります。連載枠が空くまでの順番待ちもありません。
また、それまで連載経験のない作家さんの連載が非常に多いです。これは特筆すべきことだと感じていますし、「サイコミ」ならではだと思いますね。デビューでいきなり週刊連載、ということで尻込みされてしまう作家さんもいるとは思いますし、実際週刊連載は非常に大変なのですが、編集部一同で親身にサポートいたしますし、われわれの持つノウハウやテクニックをしっかりとお伝えします。安心してサイコミの門をたたいていただければと思います。
――原稿料などに関する取り組みについてはいかがでしょうか。
葛西 「週刊連載という大きな負担に見合う原稿料」となっております。またアプリ内課金や書籍などの印税をお支払いしています。
十分な報酬、万全のサポート体制、打ち合わせの濃密さなど、さまざまなアプローチで、作家さんにとってよい環境を整えています。
――編集部の雰囲気についても聞かせてください
葛西 編集部に来ていただくと分かるんですが、打ち合わせが活発です。打ち合わせブースも編集部の隣に机がドンと置いてあって、風通しがとても良いですね。最初はオープンな場で発言するのは緊張するんですけど、結局、最後は編集部みんなで見る作品ですし、そこは気にせず作っていこうと。
――最後に、あらためてサイコミが目指すかたちを教えてください。
葛西 先ほどもまずは「少年漫画」をしっかり作る、と申し上げましたが、目標は20〜30年前の“週刊少年漫画”です。『ドラゴンボール』は今でも新作映画やゲームがたくさん出ていて、どれもヒットしていますよね。まさにサイコミが目標とする「10年後、20年後にも残って読まれ続けている、大きなオリジナルIPコンテンツ」です。
われわれは常に、最高に面白い作品を作り出していこう、と考えています。そんな熱量のある作品をアプリやWebで体現していきたいと思っていますので、今後ともサイコミをよろしくお願いいたします。
(記事・取材:たけしな竜美)
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